第3話「季節」
ガラガラガラガラ……
軋むような音とともにプレハブの扉が開き、小柄の女性が現れた。灰色のトレーナーにジーパン、ショートカットのボイッシュな姿で、パックに入ったジュースを飲んでいた。
「うわっ!ビックリした!!」
女性は悠馬と鈴音を見て言った。
「詩織ー!1年生1人連れて来たよ!!筑紫くん。ギター経験があるんだって!」
鈴音は明るい笑顔で言った。
「あ……どうも……筑紫です……」
悠馬は控えめに言った。
「へー!私、笹川詩織です。鈴音と同じ2年生です。よろしくね。」
近くにあった椅子に腰掛けながら言った。
「ところで……今更なんですけど……ここは軽音学部なんですか?」
悠馬はおずおずと聞いた。
「……あそこに大きな校舎があるでしょう?あの横の建物、あそこが軽音楽部の部室。ざっと50人くらいは部員がいるかな。」
詩織は入り口の外を指差して言った。
「うちは裏軽音学部。」
鈴音は笑いながら言った。
「あの写真見て。」
鈴音が見た先には一枚の写真があった。写真には4人の女性が笑顔で写っていた。写真をよく見ると、眼鏡をかけた女性と金髪の女性、鈴音と詩織の姿があった。
「眼鏡のが由紀子先輩。金髪のが櫻田先輩ね。」
鈴音は目を細めて言った。
「2人は4年生だったから、今年の3月に卒業しちゃったの。元々は軽音学部だった櫻田先輩が中でゴタゴタしちゃって、由紀子先輩を誘って独立して作ったのがこの裏軽音学部。私たちも最初は軽音学部だったんだけど、色々あって。櫻田先輩に誘われて、こっちに移ったの。」
鈴音はハキハキと説明した。
「Time of Years」
詩織は飲み終わったジュースのパックをゴミ箱に投げながら言った。
「はい?」
悠馬はよく分からず、聞き返した。
「グループ名ね。私たちの。英語で季節って意味。」
2人はニコッとと笑った。
「たまたま4人の名前に季節のものが入ってたの。ほら、櫻田陽……春、笹川詩織……夏、木崎鈴音……秋、白石由紀子……冬……ってね。それでTime of Years。」
鈴音はプレハブ内のホワイトボードに名前を書きながら話している。
「そして……新メンバーを入れないと……いけないって訳!」
鈴音は「櫻田陽」の横に矢印マークを書き加えた。
「筑紫くん、下の名前は?」
鈴音はキラキラした目で聞いた。
「悠馬です。筑紫悠馬。」
鈴音は矢印の横に「筑紫悠馬」と書き加えた。
「春担当、筑紫悠馬。よろしくね!!」
鈴音は悠馬の両手を握り言った。
詩織も2人を見ながら笑顔で拍手をした。
「ああ……はい……」
悠馬は戸惑いながらも少しずつ気分が高揚していくのを感じた。




