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春パジャマで介抱 なお悪化

 夜帰宅した彼女が、暗い中で無意識にいつもの場所にある下のベッドに入ったのが原因だった。僕は端に寄って寝る癖がある。背中を壁などにくっつけていると安心して眠れる。なので、いたことに気付かなかったようだ。

「ごめんなさい。」

 そういいながら、パジャマのままで、僕の左目を冷やしてくれる。焦っているので、彼女のパジャマの襟の隙間から薄い胸が見えていることに気付いていない。その時、鼻の中を冷たい物が走る。パジャマのズボンに赤い液体が落ちてきた。

「鼻にも当たってたんですね。」

 たぶん違う。でも本当のことは言えない。病院でナースに恋をするという話があるが、この時僕には白衣の天使ならぬ、パジャマの天使が見えていた。


「パジャマ脱いでください。」

 僕としても早く着替えたいのは山々だが、今このパンツを見られたくない。もじもじしていると、

「すぐ洗わないと血が落ちないでしょ。」

 と剥ぎ取られた。死体を扱っているから、着せ替えはお手の物である。

「きゃあ。」

 前が大きく膨れて濡れたパンツを見て彼女が叫んだ。僕は慌てて隠したが遅かった。終わった。


「これ何です?やっぱり病気なんですか?」

「いえ、大丈夫です。」

 そう言ったが、納得しない。

「今日は、会社を休んで病院に行きましょ。私も午前中休みますから。」

 目のこともあるし、半ば強引に例の女医のところに連れて行かされた。診察室に入ると、すぐさま左目のアザのことが話題になる。

「彼女に殴られた?」

 そうだが、たぶん意味が違う。

「眼球に傷はなさそうだし、大丈夫でしょう。」

 そして、当然朝のパンツの話題になる。


「男の人って、精子が溜まりすぎると寝てる時に勝手に出てくることがあるのよ。特に春はね。病気じゃないけど、我慢していると本当に病気になっちゃうから。月経みたいなものね。」

「先生のとこもよくありますか?」

「うちは夫婦だから旦那が我慢できなくなると手伝ってあげるわ。」

「手伝ったほうがいいんですか?」

 それまでうつむいて黙っていた僕は、

「手伝わなくていいです。」

 と、会話に割り込んだ。

「何言ってんの。一緒に住んでるのに今更?まあいいわ。でも、本当に我慢しちゃだめよ。本当なら誰かに手伝ってもらったほうがいいんだけど。いつまでも一人で処理していると、肝心なときに使い物にならなくなっちゃうわよ。それと、きれいに洗わないとだめよ。」


 とりあえず、彼女は安心したようだ。

「我慢しないでくださいね。わたし、いつでも手伝いますから。」

 そんなことされたら、いままで抑えていた欲望が爆発しかねない。その日の夜から、僕が上で寝ることにした。布団に入ると、下から彼女が小声で言った。

「我慢できなくなったら言ってください。他の人に頼むなんてダメですよ。」

 たぶん、彼女は本気で心配してるんだ。この夜、僕はこの先、彼女とどうするかいよいよ結論を出さなければと考えた。

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