コブシ飛ぶ 目にも鮮やか 目にもアザ
「寝袋だと暑いでしょ。」
冬には快適だった寝袋は、春になり徐々に暖かくなってくると寝苦しい。そこで二段ベッドを買うことになった。すでに二人の生活空間は混じっている。いまさら左右に分かれて寝ることもない。
二人で家具屋に行く。
「新婚さんですか?今、ダブルがお買い得ですよ。」
店員が声をかけてくる。こういう時の説明が困る。
「いえ、二段ベッドを探しに。」
「お子さんのですか。」
面倒なので、はいと答える。
「ベッドは大きめのほうがいいですよ。子供はすぐ大きくなりますから。」
店員は勝手にしゃべる。僕たちはその都度適当に相槌を打つ。
一人暮らしに戻ることも考えて、上下が分かれるタイプにした。設置が済み、その夜どっちに寝るかで悩んだ。僕はどちらかといえば上のほうが落ち着く。しかし、万一のことを考えると、僕が下のほうがいい。悩んだ末、彼女が下は埃が落ちてきそうということで上にいくことになった。寝具は新しくするのはもったいないので、僕は元の自分の部屋から運んできた。
久々のベッドは気落ちいい。寝返りもできる。背中も痛くない。初日はそのまま何も問題は起こらなかった。翌日は先に家に帰った僕が食事の準備をした。
「今日は、遅いから先に寝て。」
僕は言われた通りに、彼女の夕飯を残して先に布団に入り、いつものようにすぐに寝てしまった。
朝、パンツの中がべたつくので目が覚めた。夢精だ。彼女に知られないようにそっと起きようとしたが、何やら狭い。手を伸ばすと傍らに何やら大きくてやわらかいものがある。
「わっ!」
僕は、驚いて飛び起きた、その拍子に、上のベッドに頭をぶつけた。
「え!」
彼女も目を開ける。
「痴漢!」
彼女が暴れて、僕の左目にきれいに鋭いパンチが入った。




