風寒し 年経る毎に 鬼増える
ウミさんが僕の実家に行きたいというので、ついでに二人で密かに夏美のところに節分にいって、驚かそうということになった。あいつは、親への負担をかけたくないと、地元の国立大学に行っている。今日は週末で学校も休みのはずだ。おばさんから昼は家にいるとこっそり聞き出してある。
「前に、夏美ちゃんと、でメッセージが切れたことがあったよね。」
僕はずっと気になっていたことを聞いた。
「あれね。知りたい?どうしよっかな。」
彼女は時々、僕をからかう。
「あの時は、充電切れで続きが送れなかったんです。夏美ちゃんとご両親によろしくって送るつもりでした。」
彼女は右斜め上に目をやりながら答えた。嘘だ。嘘をつく時の癖だ。でも、しつこく聞くわけにもいかない。いつか本当のことを教えてくれるだろうか。
実家に着くと、早速着替える。僕は赤一色。彼女は青一色。今年は、ダブル鬼で驚かす。いつものように、窓の下に隠れチャイムを鳴らす。
「はい。」
聞いたことの無い低い声がした。夏美のやつ、変声期か?
ガチャ。
玄関のドアがあき、黒い顔が覗いた。黒鬼?
夏美のやつ、アフリカの留学生と仲良くなり、日本の文化を教えていたそうだ。
「ヒイラギ、イワシ、マメ。オモシロイデス。」
「はあ。」
僕たちはどう対応したらいいかわからない。
「鬼も来たことだし、豆まきをしましょう。」
どうやら、おばさんが僕たちが来ることを察して、準備していたようだ。
「オニ・アウト。フク・ハウス。」
なんか違うが、間違いじゃないからいいか。
僕たちは早々に逃げ帰った。
「今時、豆撒きやってるなんて珍しいんでしょうね。」
僕はいつものことなので、普通だと思っていた。
「彼氏ですかね。」
女性の勘は鋭いと言うので、そういうのには疎い僕はウミさんに確認する。
「だといいですけど。」
まだそこまでじゃないのか。
「心配ですか?」
「まあ、妹みたいなものですから。母子家庭なので、いい彼氏ができて楽しい家庭を築いてくれたらと思います。」
「わたしは?」
彼女は僕の顔を覗き込んで尋ねた。僕は視線をそらすように空を見上げた。
「暖かい家庭で安心して暮らしてもらいたいです。」
「そうですか。」
彼女が掴んでいた僕の右腕が少しきつく締め付けられた。




