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雨宿り 借りしパジャマの 君の香よ
「これでアイコですね。」
平然と笑う彼女に以外性を見た。
「男性の裸なら何度も見ています。ご遺体ですけど。」
元々、遺体に接することで、男性恐怖症を克服できるかと思って葬儀会社に入ったらしい。
「怒らないんですか?」
「驚いただけです。心配で飛び込んできたんでしょ。約束したでしょ。万一の場合、ためらわずに入ってきてくださいって。」
僕の場合は女性の体が苦手なんだが、彼女の男性恐怖症というのは男性の体が怖いわけではなく、乱暴をされるかもしれないという心の恐怖らしい。
そう言われると少々癪だ。
「僕だって男ですよ。」
「あなたちっとも襲ってこないじゃない。」
「今夜はわかりませんよ。」
「どうぞ。」
彼女の予想外の答えに、
「止めときます。」
と、あえなく撃沈した。
今までは一緒にいると冴えまくっていた僕の脳は、まったく働かなくなっていた。彼女に借りたパジャマの香りが僕の頭をフリーズさせている。東北に戻りたくない。それには、転職することになる。僕の苦悩はまだ当分続きそうだ。




