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一人急く 見えぬ物音 夏夜道

「最近、誰かに後をつけられているようで怖い。」

 ウミさんからの連絡だ。僕としても心配だが、いつも送り迎えをするわけにもいかない。


「家に着きました。早く来て。」

 僕は急いで彼女の部屋に向かう。

「ドアを開ける時は用心して。」

 辺りをうかがいながらすばやく部屋に入る。こんな時、ドラマではドアを開けた瞬間、物陰から襲われる。

「大丈夫ですか?」

「ええ。最近毎日、帰りに後ろから足音が聞こえるんです。これってストーカーかしら。」

「そうかも。」

 普通はストーカー対策で男物の下着を干すのがいいというが、下手をすると逆上して危険だ。結婚指輪で偽装する手もあるが、葬儀会社では指輪は禁止だった。不幸に立ち会うので、幸せそうに見えてはダメというのである。

「部屋に押し入られないか心配。合鍵を持っていて。万一の場合は、ためらわずに入ってきて。」


 一緒にいたいけど、変な噂が立つと彼女の仕事に影響がでるかもしれない。でも、ボッチーナ症候群の彼女は、心臓が悪いんだ。襲われたショックで死んでしまうかもしれない。

 ああ、こういうときに限って頭がフリーズしてる。焦るほど、心臓がドキドキして、汗が出てきた。僕もボッチーナ症候群に感染しったてことなのか。


 うかつだった。僕以外に彼女の魅力を理解する男がいるなんて想像にもしていなかった。

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