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春過ぎて 医者の見立ては ボッチーナ

 翌日は、幸い代休で休みだ。一旦家に帰った僕は、一人で病院に行かせるのも心配なので、翌朝、一緒について行く。だが、待合室にいても気が気じゃない。診察が終わるのを待つ間、立ったり座ったり、部屋をうろうろしていた。


「今日は、弟さんじゃないのね。同僚って感じでもないし。」

「えーと、お兄。あ、兄みたいなものです。」

「へえ、お兄さんねえ。それなら話しといたほうがいいか。」


 僕は、ウミさんと入れ替わるように診察室に入った。背の高い白衣の女性がいすに座っている。

「これから話すことは本人には内緒にしてください。彼女、見た目は風邪なんですが、実は大変な病にかかってます。」

「え!」

 僕は、思わず声を上げてしまった。この流れは、普通なら癌だ。

「どこが悪いんですか?」

 恐る恐る尋ねた。

「ここです。」

 女医は僕の心臓の上を指で突いた。

「心臓?治るんですか?」

 医者は深く腰をかけた。


「これは厄介な伝染病でね。今のところ治療薬もない。さらに本人はまったく気づかないうちに進行するのが恐ろしいところです。」

 きっと大変な病気なんだ。

「隔離ですか?」

「まあ、特定の人にしか感染しないので、その必要はないでしょう。すでに、あなたもかかっているようですし。同じ感染者同士、治すには、あなたの協力が必要だ。最近、彼女と細めに連絡をとってますか?」

「いえ、二人とも忙しくて。たまにLINEぐらい。」

「いけませんね。少なくとも週一とか様子を見に行ってください。いつ急変するかわからない。」

 僕は急に聞くのが怖くなったが、震える声で質問した。

「そんなに悪いんですか?」

「重症です。手遅れですね。症状は胸が苦しくなったり、動悸が激しくなるなどさまざまですが、最悪死ぬ場合こともあります。」

 やっぱり。まさか余命1年とか言われるんじゃないだろうな。

「あと、どのくらい生きられんですか。本当に治療はできないんですか。」

「ちゃんと様子を見ていれば問題ないです。」

「なんていう病気ですか?」

「んー、ボッチーナ症候群。」


 こっそりネットで調べたが、出てこない。珍しい病気なのだろうか。


「先生、またいい加減なことを。」

 僕たちがいなくなった病院で医者と看護士が話している。

「まあ、名前は適当だけどね。一般的に言うと恋の病かな。」

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