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夏風邪に 氷嚢越しの 主夫姿

 旅行を終えた僕らは、それからは互いに忙しくなり、直接会うことはしばらく無かった。ただ、船便と漂流瓶の他愛の無いLINEだけは続いていた。

「風邪ひいたみたい。仕事休んでます。」

 夏のある日、メッセージが入った。職場は女性スタッフだけだったが、力仕事がなくなり、困ることはないようだ。僕もようやく地方の出張地獄から解放されて、横浜に戻っていた。

「手伝いが必要なら行きますよ。」

「風邪薬が切れたので、買ってきてもらえると助かります。」

 彼女の自宅は、前回の旅行の帰りに送ったので知っている。


「熱は?」

 僕は指定された薬をドラッグストアで買っきた。

「少し。」

 部屋は暖かいのだが、彼女の体は震えている。顔も赤いし汗もかなりかいている。

「いつもは弟に頼むんですが、あいにく修理の依頼で出かけてしまって。」

 時計屋というのは、自分で修理できないものは、専門技術のあるところに届けて依頼するそうだ。


 39度。インフルエンザかもしれない。

「医者は。」

「日曜なので、明日まで待って行こうかと。」

 地域の夜間診療もあるが、男性不信の彼女は女医のかかりつけ医があるようで行きたくないらしい。

「横になってください。お粥つくりますね。」

 ベッドに横になる彼女の頭の横側を氷嚢で冷やす。額は傷があるので避けたいたらしい。僕は仮設暮らしのお陰で、簡単な料理ならできるようになっていた。人間なにが幸いするかわからない。


 シンクが濡れている。僕が来るので急いで片付けたのだろうか。

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