手をとりて 滑るリンクに 足とられ
2月15日。僕らは秋田へ向かって横浜を朝ゆっくりと出た。平日だが、日帰りは強行過ぎる。僕は仕事を休み、1泊して夜のかまくらを堪能することにした。当然ながら部屋は別だ。二人とも一人でホテルに泊まるのは仕事で何度も経験している。なので何も意識することはなかった。荷物をホテルに置いて外へ出る。祭りは始まっているが、まだ日が高い。
「だったら、スケートがしたい。」
ウミさんはスキーはしたことがあるが、リンク内は人が密集しているので、スケートは滑ったことがないそうだ。僕も数回で、教えられるほどうまくはない。道具をレンタルして、少し靴に慣れた後リンクへ出た。
「絶対、手を離さないでくださいね。」
こういう女性を世間ではあざといというのだろうか。まあ、それでも許せる。最初は立つ練習だ。壁につかまったまま動かない彼女はまるで子鹿だ。彼女の左手を引いて少し横へ移動させようとするが、左右の足が互いに反対側へ離れていきしりもちをついた。それでも、大人だ。徐々に移動できるようになった。
「じゃあ、ここまで来て。」
他のスケータの邪魔にならないように、壁から少し離れた位置に立つ。
「手を離さないでって言ったのに。」
彼女は慌てている。それでも、果敢に挑戦してくる。
きっと、変わろうとしているんだ。
僕の一瞬の集中の切れ間をつくように彼女が突っ込んできた。僕らは重なるように転倒した。回りの目が痛い。




