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相部屋二人 寒き夜の 布団巻き
「もう遅いから、泊まっていってもらいなさい。」
母は強引に彼女を引き止めた。いざ寝ようとすると、
「あんたの部屋は物でいっぱいだから、客間で寝なさい。」
客間に行くと、二組の布団が並べて敷かれている。
「なにこれ。」
母に向かって怒鳴ると、
「彼女さんを一人で寝させるわけにいかんでしょ。猪でも出てきたらどうすんのよ。」
今は真冬。猪は冬眠してるって。
「私たちは二階で朝まで降りてこないから。」
意味深な言葉を残して両親は二階の寝室に去ってしまった。
「どうしましょうか。」
「どうしましょ。」
まだ、つきあってもいない。とりあえず、布団をそれぞれ部屋の反対の端へと移動した。
「寒くありませんか。」
僕は彼女に尋ねた。
「大丈夫。」
いつの間にか暖房が切れている。灯油切れだ。布団も少々薄手の気がする。もしや、寒ければきっとくっついて寝るだろうという、母の策略では。僕は毛布を下に敷き掛け布団を裏返しにして広げると、その上に横になり、ぐるっと布団を体に巻きつけた。寝返りがうてないのが欠点だが、寒い仮設で身に付けた技だ。
「あら、面白そう。」
彼女も真似をする。
「暖かいですね。」
二人はそのまま先を競うようにすぐに寝てしまった。




