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寒苦行 求むる答え 己が内

「さて、何か得るところはありましたかな。」

 住職が尋ねるが、何かが変わったとも思えない。

「恥ずかしながら、何も思いつきません。」

 と、正直に答えた。


「では、二種類の汁を飲み比べて違いがわかりましたか。」

「最初のはとても暖かくて救われた気分になりましたが、正直味は覚えていません。先程のは、少々ぬるくて物足りませんでしたが、味は良かったです。」

「どちらが好みでしたかな。」

「断然前です。」

「それが、あなたの本当の答えです。」


「禅問答は頓知ではない。特に正解というものもありません。いかに物事を深く考え、どれほど己の内なる声を汲み上げることができるか。そのために、何度も師弟で押し問答を繰り返します。弟子は悩みに悩んで答えをだします。それが、彼の悟りとなります。あの汁はどちらもまったく同じものです。冷えた体には暖かく、温まった体にはぬるい。汁は本来ぬるいくらいが本当の味がわかります。あなたは、味では満足できなかった。お連れにお困りごとを求められるがままに助けたとしましょう。当然、感謝されます。ですが、次の壁に当たった時、あなたは同じように助けられるでしょうか。あなたは同じつもりでも相手はきっと満足なさらないでしょう。一時の救いでは何も得られないのです。迷いがあると言うことは、正しい道ではないと感じている証拠。問題の本質を知ることで、自分の人生すべてを活用できる自分だけの解決方法を見つけなさい。くれぐれも安易に他人にもできる解決法に飛びつかないことです。」


 僕だけの、僕だけができる解決法。なんとなくトンネルの出口の光がチラッと見えた気がした。


 最後に住職はこう付け加えた。

「ちなみに、あの味噌汁はお連れが作られたもの。もし、口に合わなければ互いの相性が悪いと申し上げるところでした。味覚の不一致ほど不幸なことはありませんからな。」


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