亡き人を 偲ぶ旅路の 枯並木
長い階段を上り、いつもの山寺へ向かった。参道にはすっかり葉の落ちた木立が並ぶ。
「ここを一緒に上られたのですね。」
「ええ、でも夢中だったのでよくは覚えてないんです。」
僕はかねてからの疑問を聞いてみることにした。
「どうして、おじい様は僕の事を四つ目って書いたんでしょ。普通、それって眼鏡のことですよね。」
「あの時、自分はつまずきながらも祖父の足元をずっと照らしてくれていたと伺っています。ご自分の足元を照らしてくださいという祖父に、自分は人の倍よく見えます。四つ目ですから。と言って掌を見せたのことです。」
本当にそんな会話をしたのだろうか。でも、自分から言わない限りわからないのももっともだ。
「実は直接会ってご相談したい事があって。できれば、仕事を手伝ってもらえたらと。」
彼女の話では、店長が退職するため女性スタッフだけになってしまう。男性スタッフを募集しても集まらなくて困っているという。
「虫のいい話ですよね。場所も横浜だし、知らない仕事だし。」
僕は返事に困った。土地にも仕事にも特別愛着があるわけじゃない。かといって、ほいほいと付いて行くほど尻軽とも思われたくない。
無言のまま本堂の前までくると、住職が出迎えてくれた。
「岡崎です。ご挨拶が遅くなりました。。祖父が大変お世話になり、ありがとうございました。」
住職はしばらく考えていたが、僕の顔を見て納得したようだった。
「いえ、ここはそのためにあるようなものですから。」
「そうですか、ご冥福をお祈りいたします。」
老人が亡くなったことを伝えられた住職は穏やかな口調で言葉を返した。




