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波凍る 津波の記憶 指震え

 今は、仕事に復帰直後で残業もしていない。おかげで何とか通勤できているが、そろそろ本気で引越しを考えなければならない。あれ以来、彼女からのメッセージは来ない。恋人でもないのに、こちらから声をかけるのもストーカみたいで申し訳ない。


 季節は駆け足で冬になった。建設会社からの指示で納品した現場をチェックするための出張も増えた。現場へは会社の車で移動するが、未だに海沿いの道路は緊張する。白波が打ち寄せるたびに、当時のことが思い起こされる。

 そして、その度に、ここでの勤務は限界だと心の悪魔が囁く。生まれは海無し県の山育ちだ。海への憧れでこの地に来たが、強い恐れが時折襲う。

「海は恐れる者に命を与え、侮る者の命を奪う。」

 土地の猟師から聞いた言葉だ。


「歳老いたら、山へ戻ろうかな。」

 丘の上には新築の家が並ぶ。僕は次の仮暮らし先を探し続けた。



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