晩秋や 忌まれ佇む 送り人
鎌倉でパンダを引き合いに出したことを思い出した。そして警察官じゃなくてよかったと安堵した。警察を隠語でパンダという。ツートンカラーのパトカーに乗っているからそういうらしい。
葬儀会社の従業員の場合は、身内が無くなったショックから、すぐに復帰できない人もいるらしい。不幸が連鎖したということをいわれることもある。そのため、一周忌まで休んだほうがいいと会社からも言われたようだ。
「なかなか選べる仕事じゃありません。頭が下がります。」
僕は素直に返事を返した。彼女のLINEが遅いのは、きっと仕事が不規則だったからだ。現に、今はすぐにメッセージが来る。
「僕に万一のことがあったら、お願いします。」
何も考えずに打ち込んだ。
少し間が空いて、
「いやです。」
と帰ってきた。やっぱり、嫌われているのか。
「死ぬなら私が先です。これ以上、大切な人を見送るのはいやです。」
好きではなく大切な人というのが実に微妙な関係だ。
「ご友人と、気晴らしに出かけてみては?」
「この仕事についてから、誰もプライベートでは連絡をしてこなくなりました。弟とあなた以外。」
確かに、僕も葬儀関連の仕事をしてる人とは関わりたくない。でも、彼女に会って、それがいかに愚かな偏見だったか思い知らされた。
「この仕事をしていると、いつ呼び出されるかわからないので、誰もさそってくれなくなりました。」
なるほど、最初に鎌倉であったときに紙袋に黒スーツを入れていたのも、いつ呼び出されてもいいようにだったのだろう。そして、彼女に女性を感じなかったのも仕事がらだったんだ。死者を送り続けたその眼差しが聖母に重なって見えたのかもしれない。
「きっと、理解してくれる方が現れますよ。」
さすがに、自分だとはおこがましくて書けなかった。
「気休めでも、ありがとう。」
僕はその言葉を見たとき少し悲しくなった。そして、住職の言葉を思い出した。
「きっと、あなたのために何かしてあげたいと思う人が現れますよ。」
「だといいんだけど。」
そこで会話は終わった。
それと同時に、僕の頭の中で妄想が再び暴走し始めた。




