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秋 思い出にと 君撮りし一枚

 長い沈黙の後、

「今まで、自分の事をまったく伝えなくてごめんなさい。きっとタケルさんも離れてしまうんじゃないかと思って。」

 そういって、彼女は両手で自分の前髪を持ち上げた。彼女の額の中央にに横一筋の傷が見えた。

「これは、ほんの一部です。この傷は、母が私を庇ってくれたときのものです。」


「高校生の時、私めがけて車が突っ込んできました。その時、後ろにいた母がわたしを庇ってくれました。私は怪我だけで助かりましたが、母は亡くなりました。その時から父の私を見る目が娘ではなく女を見る目に変わった気がして、祖父の下へ逃げました。やがて父は弟を残してどこかへ出て行ったそうです。弟は祖父の下で後を継ぐことになりました。私は入れ替わるように祖父の元を離れ、就職しました。」

 少女にとってそれは耐え難い重圧だったろう。現代医学なら大抵の傷はせるだろうが、あえて自分への戒めとして数多の傷を体に残しているに違いない。

「額の傷のおかげでそれまでの友達からも三つ目ってよくからかわれました。」

 彼女は目を伏せている。

「それなら僕の勝ちです。僕は四つ目ですから。」

 僕は自分の両方の手のひらを彼女に見せた。両手のマスカケ相の中央が割れてトカゲの目のような模様になっている。

 彼女は、祖父の手帳のページをめくった。そこには「奇特な四つ目の若者」と書かれていた。


 奇特というのは珍しいという意味もある。おじいさんがどちらで使っていたのかはわからない。

「一つお願いがあるんですが、いいですか。」

 僕は意を決して切り出した。

「はい。何でも。」

 彼女はちょっと顔を赤らめたように見えた。やばい、これ以上変なことを言って嫌われたくない。

「写真を一枚いっただけませんか?」

 あの帰りの電車の中での後悔がずっと心にひっかかっていた。

「えーと。それはどんな?」

 正座していた彼女の足が硬くそろえ直された。変な想像でもされてしまったか。

「ウミさんの普通の。」

「あいにく私、自撮りしないので。」

 やはり、容姿のことが気になっているのだろうか。

「この格好でよければ。」

 彼女は快諾してくれた。しかしスーツ姿というのも免許の写真のようだ。

「上着だけ脱いでもらっていいですか。」

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