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時越え告げる なつかしの 鳩時計
学生の時に、手巻きの鳩時計を買った店だ。今は動かしてないが実家の壁に掛かっている。
「今は、弟が継いでますが、昔、祖父から時計を買っているはずなんです。」
あいにく店主の顔は覚えていない。
「これも亡き祖父とのご縁と思います。」
「でしょでしょ。で、どうなのよ。」
もしかして、夏美のやつ、僕の好みを知ってるんじゃないだろうな。
「お兄の好みってキャンディーズのミキちゃんだもんね。」
あ、やっぱり。こいつ知っててわざとあんな正反対な格好させてたのか。
「病休中なんだぞ。いつクビになるかわかんないんだぞ。」
僕はあきらめていた。今の僕が結婚や彼女なんて考えていいわけがない。
「私も、彼がいるから。祖父が飼ってたんだけど、たまたま病院にいたんで命拾いしたのよ。でも余命数ヶ月なの。だからせめて生きてる間はこの子に付き添って、祖父の元に送ってあげたいの。だから、お付き合いなんて考えられないの。」
早い話が僕は子猫にも負けるってことなんだ。
「でも、勘違いしないで。パンダはかわいいけど、付き合いたいとは思わないから。」
とりあえず、親族ではないので新盆には行かないと答えた。ただ、その後、お線香を上げに伺うということで納得してもらった。仏壇は自宅ではなく長年の職場であった時計店のほうにおく予定だそうだ。




