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初デート 待ち受け子猫 恋敵

「子猫?」

 一匹の灰色の子猫が両手を上げて鳴いている姿だった。


「人間の男より、ずっと可愛いでしょ。」

 はあ、そういうことだったのね。ぼくはホッとした。

「わかりやすい方ですね。先ほどの失望とちがって、猫と解って安心したって顔でしたよ。」

「いや、そんな・・・。はい、図星です。」

 今更、ごまかしてもしかたない。


「正直な方なんですね。では、私も正直にいわなければ不公平ですわね。友達のお姉さんというのは嘘。夏美ちゃんとあなたのご両親に頼まれて来たんです。お見合いですかね。」

「仮説暮らしだし、病休中だし、やめたほうがいいです。」

 僕は慌てた。どう対応したらいいかわからない。

「知っています。私の母が、結婚相手を決める時は相手が困っている時を見なさいと申しておりました。羽振りのいい時には見栄を張って本性を隠し、窮地に陥ると嘘をついてごまかそうとする。そんな時に自身を正しく見つめられる人は信じられる。鎌倉は母の生まれ故郷です。ですから、あなたがガイドブック程度の知識だというのもわかります。」

 これは、やられた。


「お見合いするつもりは無いんですが、ひとことお礼を言わなければと思い参りました。」

 はて、こんな素敵な女性の知り合いがいたかな?

「先日の花まつりでは弟が挨拶させていただきましたが、私は行けなかったのですっかりお礼が遅くなりました。」

 はい?弟?て、もしかして、あの老人の孫ってこと。

「新盆のご案内をかねて、連絡先として承っておりましたご実家に挨拶に行ったこところで、夏美ちゃんに会って、なんだかこんな流れになってしまいました。」

 いや、唐突すぎるだろ。夏美のやつ何を勝手に頼んでるんだ。

「気にしないでください。それとこいつの戯言に付き合う必要はありませんから。夏美も見ず知らずの人に変なこと頼むんじゃない。」

「それが、どうやらそうでもないようなんです。弟の名刺見ました?」

 僕は急いで財布につっこんだ名刺を取り出した。


 岡崎時計店、横浜市中区伊勢佐木町。


 あれ、この店覚えがあるぞ。



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