紅茶と汗 垂れる隅の 二人席
「娘さんとは別に、保護者のかたは別室でお待ち願います。」
オープンキャンパスというのは文化祭とは違うものらしい。教室で講義を受ける授業体験だった。
「じゃあ、お父さんとお母さんは、学内の喫茶店で待っててよ。」
夏美のやつ、明らかに僕らをからかっている。ここで否定してもややこしくなるだけなので、僕たちはそのまま校舎を出て、庭にあるカフェで待つことにした。本当に夫婦に見えるのだろうか。もっとも親意外の同伴なんていないか。
「すいません、あいつが失礼なことを言って。」
僕は彼女に謝った。
「いえ、ややこしくなるから夏美ちゃんなりの方便だったんじゃないですか。」
「僕なんて、恐れ多いです。」
「そんなことないですよ。彼に似ているから自信を持ってください。写真みます?」
「いえ結構。」
僕は正直ほっとした。
恥ずかしいので店の奥の目立たない隅に腰掛けた。ウミは紅茶を、僕はホットコーヒーを頼む。向かい合って座ると、どこを見ていいのかわからなくなる。だいたい、僕は女性と話すが苦手だ。しかも、相手がいわゆる女性らしい体型だと、目線に困る。そのため、思考がさらに混乱してしまう。幸い、彼女に恋人がいるというので少しは気が楽になった。
「さきほどからキョロキョロしてますけど、落ち着きませんか?」
「いや、そうゆうわけでは。女性を前にするとどこを見ていいかわからなくて。」
「普通に顔じゃいけません?」
彼女は運ばれてきたティーポットで優雅に紅茶を淹れる。ポットの口から琥珀色の液体が白いカップに垂れる。
「体型が自分と違いすぎて、別の生き物を見ているようで。パンダはかわいいけど、話し相手にはなりませんよね。鼻がいいのか、化粧の臭いも苦手なんです。」
この際、嫌われてもいいや。一方、僕は緊張で額から垂れる汗を手で拭った。
「ちょっと、お化粧直してきますね。」
そういって、彼女は紙袋を持って店の奥へ消えた。




