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家の前 夏のパンイチ 咎められ
「保護者代わりなんだから髪もカットしてスーツぐらい着てよね。」
あいつは受験先のオープンキャンパスというのに行きたいらしい。こんな時期に学園祭でもやっているのだろうか。それなら、うまいものが食えるかもしれない。
あいつが「おにい」と呼ぶようになったのは、毎年、節分の時、僕が鬼の面をかぶって母子家庭だったあいつの家に行っていたからだ。鬼がいつしかお兄になっていた。あいつは今も同じワンフロアの狭い団地に住んでいる。玄関に入るなり、
「何?このしわしわのスーツ。アイロンかけるからすぐ脱いで。」
と、いとこが眉をしかめながら、僕の上着とズボンとワイシャツを奪う。
「私も着替えるから、外にいて。」
素肌にワイシャツを着る僕は、パンツ一丁で団地のドアの前に立たされた。
お兄は外、服は家って、節分じゃないんだぞ。これは何かの罰ゲームか。母子家庭なので男物の服なんてない。団地の玄関の前でズボンを脱いだ男がいるんだ。そりゃ管理人が飛んできた。何とか事情は解ってもらえたが、これからどんな噂が飛び交うか想像しただけで恐ろしくなる。




