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梅雨の雷 一鳴り毎に 傷もぐる
徐々に晴れる日が多くなった。梅雨雲が消えていくように、僕の心も軽くなっていく。でも、これは良くなっているわけではなく、慣れて鈍感になってきているだけだと知っている。
梅雨は雷がなる毎に明けていく。時が経ち街も人も受けた傷も癒えたかのように見えるが、表に出なくなっただけで、決して消えることはないだろう。
綺麗になっていく街の風景を眺めていると、まったく前に進まない自分だけが、なんだか取り残された感覚になる。
「そろそろ仕事に復帰しないと。」
あせりはよくないと解っていても、落ち着かない。
そんな中、実家から電話があった。
「お兄、あの約束はどうしたのよ。」
電話の向こうで、甲高い女性の声がした。




