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春の水面に あの津波の影無く
冬の間は、あまり近づきたくなかった場所だが、春になり海面が穏やかになったからなのか、始めに非難した丘の上の公園から海を眺める日が増えた。
あの時のことを忘れないためなのか、それともあの時あった人たちと今一度話がしたいからなのか。この場所も水を被ったということで取り壊されるそうだ。あの時はこの公園があったから、皆で助け合えた。もし、より高いところまで一気に逃げなければならないとなったら途中で力尽きる人たちも出てくるかもしれない。
「お上はそんなことまでは考えてないか。」
そんなことは想定外。これで済んでしまうんだからいい気なもんだ。首相もあの時一度きただけでもう来ることもない。天皇陛下が被災地を訪問されるという噂だ。果たしてこんな田舎町までくるかは疑問だが、「あんな連中」よりはいい。
僕みたいな末端の何も失ってない住民には給料がでなくなっても、義捐金は回ってこない。せいぜい仮設住宅を用意してくれたくらいだ。あとは会社で考えてもらえということらしい。
ただ、その仮設住宅でも、ちょっとした問題が起こっていた。




