30/97
舎利殿の 十三仏は 春大河
山の上から見える暴れ川もすっかり穏やかな流れになっている。決壊した土手も修復され、人々が戻ってきていた。
僕は、あの夜に命からがら皆で逃げ込んだ寺に寄った。当時は気付かなかったが、立派な舎利殿があり、仏様の世界を描いた曼荼羅が飾られているのが見えた。
「あの曼荼羅には、死者が捌きを受ける十三仏が描かれております。」
住職が出迎えてくれた。
「此度の震災でなくなられた方が無事あの世へいけるようにと供養のために掛けております。」
神聖な場所なので中には入れないが、ここちよい春の風にあおられ十三体の仏様を眺めていると、ざらついていた心がさっき見た大きな川の流れのように静まっていくのを感じた。
「僕はどこにいるべきなのでしょうか。」
思わず住職に尋ねた。
「どこにいてもいいのです。しいて申せば、自分の心が落ち着ける場所。やる気の出る場所。そんな場所を見つけたら迷わず飛び込んでごらんなさい。」




