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灰の街に 満開の花咲爺
写真を撮り始めて、僕はしだいに遠出をするようになった。
水害を免れた地域でも、規模こそ小さいが、火災で焼け野原のなったところもある。ガスや油などに漏電で引火したのだろうか。普通なら小火程度で済むものでも、消防車がこれなければ延焼が収まらない。昔あった防火用水は消火栓にすっかり置き換わってしまった。が、桶と違って、一般人が消火栓を開けられるわけも無い。
緊急時には誰でもが直感的に使える物のほうが便利だったりする。
そんな、灰になってしまった街でも、春になれば桜が満開になる。建物が無くなり、遠くの桜までもが鮮やかに見える。あの街に降った灰は、花咲爺さんのもだったのだろうか、それとも意地悪爺さんのものだったのだろうか。
そんなことを考えていると、些細なことで一喜一憂している人間がいかに小さい存在かを実感する。帰る途中、僕は久々に水道山に登った。今では、中学生が以前と変わらずに授業を行なっていた。まだ避難先から帰れないのか、それとも遠くへ移ってしまったのか、子供たちは見るからに少なかった。




