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赤十字 枯木並木の 黒提燈
病院からの被災者の遺体引取りが進むにつれ、街には忌中をしらせる黒い提燈が並ぶ。火葬場も毎日のようにフル稼働だ。黒塗りの霊柩車だけでは足りず、棺を軽トラの荷台に乗せ目隠しの幌を被せて帰る家族もいた。
お棺を置いておく家がない被災者も多い。だから、病院から葬儀場へ、そこから火葬場へと直行するしかない遺体も多かった。墓もないし、避難所に骨壷をもっていくわけにもいかない。とりあえずお寺で預かってもらう。例年に比べて樹木そうや散骨も増えた。
田舎の小さな都市だ。本来なら先祖の墓に入ったはずだ。だが家と職を失い、墓じまいして街を去る人も多い。さらに一家で亡くなれば無縁仏になってしまう。
住宅を高台に移し、洪水の激しかった場所を墓地にする計画も始まった。
僕の借家は、移転対象にならなかったが、洪水のあった場所を借りる物好きもいない。大家は更地にして転売することに決めた。僕は急いで仮設住宅に引っ越す準備を始めた。




