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震災の凍空 豚汁の香り

「この木はまるで僕のようだ。」

 季節はずれの役立たずイチョウ。ボランティアをしたくても何の準備もない。晴れた空に冬の日差しがまぶしかった。


 どこからか、いいにおいがしてくる。

「どこかで炊き出しをしているんだ。」

 僕は空腹にしみるその香りのほうに進んだ。町内会の人たちが毎年夏祭りを行なう公園に集まっていた。

「大変だったでしょ。おにぎりと豚汁あるから持ってって。」

 声をかけてくれたのは大家さんだ。自分のほうが、いくつもの借家が流されて大変だろうに。

「家は保険に入ってるから大丈夫だよ。でも、家財は保障外だからごめんね。」

「僕のところは幸い水に浸かっただけですから。しばらくは第三中学に避難します。」

 僕はラップにくるまれたおにぎり一つとカップに入った豚汁を持ってベンチに腰掛けた。


 昔から炊き出しは大抵おにぎりと豚汁と相場が決まっている。豚汁は豚の油が浮いて冷めにくい。おにぎりは器がいらないし、冷めても食える。少々硬くなっても、豚汁に入れればやわらかくなる。実に理にかなっている。最近カレーの炊き出し多いが、辛いのは汗が出るので個人的には控えたい。


 満腹とはいかないが、空腹は抑えられた。両親は海無し県にいるから津波の心配はないはずだが、電話がまったくつながらない。きっとこっちの基地局の問題なんだろう。自衛隊が来るま三日ほどとかいっていたな。これはかなり広範囲に道路も寸断されていると考えたほうがいいかもしれない。

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