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名も無き猫のごと 寒月に 怯ゆ
夜も明けぬうちに僕は出かける用意をした。硬い乾パンにも飽きた。幸いコンビニでもらったパンがまだ残っている。避難所の子供たちに見つかるとバツが悪いので、外で食べることにした。
家に戻るには駅を過ぎ、余震の続く中、海岸のほうへ行かねばならない。慎重にあたりを見回しながら歩き出す。風は冷たい。外は、まだ薄暗く、やや欠けているが大きな月が冷たい光を放っている。
「おや偉いねえ。」
ボランティアと間違えたのだろうか。それでも褒められるのはうれしい。寒月が地上に近づいてくるにつれ冷え込みが強くなる。体はポカポカしてきたが頭が痛い。
途中でペットボトルに入れた水を飲みながら、菓子パンを食べる。メロンパンだ。最近流行っているらしいが、大人になってからは食べなくなった。取り残された飼い猫だろうか。こぼれたパンくずを咥えて走り去る。
甘くなった口を水を飲んで洗い流した。




