隣のラジオ 耳当て越しの速報
ようやく、小高い山の上にある第三中学校に着いた。靴は乾いたが、まわりに付いた泥でやたら重い。ここにも、入所手続きの列が出来ていた。
「・・・地方、三県は津波の影響で交通網が遮断されています。」
列の前からアナウンサーの声が聞こえる。老人がラジオを聴いている。普段から携帯の動画しかみないので、ラジオなど持っていない。携帯は復旧したところもあるが、混雑しているためか、メールしか使えない。
実家は固定電話しかないので、連絡がとれない。誰かいるかわからないが、とりあえず会社に一報だけは入れた。
こんな事態になるなんて、昨夜までは思いもよらなかった。じっと順番を待っているだけだと、寒さと空腹で時折意識が飛びそうになる。そのためか単にいらついてなのか、たまに大声を出している人もいる。
名前と住所の確認が済むと、水の入った袋を一つもらった。
「非常食は夕方に配給します。」
係員が部屋へと誘導する。まわりの人と間隔をとりながら指定された位置に荷物を置く。
「貴重品は必ず持って移動してください。」
彼等も被災者かもしれないのに、ご苦労なことだ。
「メール一つで休めるサラリーマンはやっぱり気楽だな。」
僕は持って来た毛布を下に敷くと、その上に腰を降ろした。疲れているが、不安と緊張のためか寝られない。初めのうちは子供たちのはしゃぎ声も心地いいが、しだいに感に触るようになる。ないよりはましと、耳当をして過ごす。




