第九話「竹俣兼光」
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この作品はフィクションです。実在する個人名、団体名、企業名、商品名、刀剣とは関わりございません。
また、都市伝説界隈で聞く秘密結社とも関わりのない事、刀剣擬人化のコンテンツとも関わりない事をご理解の上お楽しみください。
前回の八話のラストで凶弾に倒れた藤四郎。不穏な吉行。どこか置いてけぼりの北谷。果たしてどうなるのでしょうか・・・。
―—— 一ヶ月前 ―——
そこにはその日の任務対象とその護衛をこの世から消し去り、その事後処理として護衛達の遺体を死体袋に仕舞い、対象者のその死因を事故に見せかけようと現場に偽装工作を行う北谷の姿があった。
「・・・誰だ。」
北谷のその声に、応えるように物陰から一人の男が姿を現す。
「噂に名高い北谷菜切、見事な腕前です。その腕を買って個人的に依頼をしたいのですが宜しいでしょうか。」
「だから、お前は何者なんだよ。俺を任務中から監視しておいて、仕事が終わり次第気配を現しやがって。」
「これは失礼しました。私は八咫烏の陸奥守吉行と申す者です。」
そう言うと吉行は面を外し、腰の陸奥守吉行を少し鞘から出してその刃文を見せる。
「最年少幹部の有名人じゃねえか。そんなあんたが俺に何の用なんだよ。」
「場所を変えて話しましょう。・・・と、その前にここを片付けてからですね。」
と言うと吉行は北谷の現場偽装を手伝い始める。
「何をしている。」
吉行は任務対象だった男の遺体を動かすと、アルコール度の高い洋酒の瓶を床に叩きつける。
「見事ですね。後ろから心臓を一突きですか。この様子だと肋骨にも傷一つないでしょう。それならいっそ燃やした方が証拠は完全になくなります。この方は心臓病もお持ちのようでしたので、先ほど書斎の薬入れには今日飲まれた分を継ぎ足しておきました。これで、この方は薬の飲み忘れによる発作で倒れ、その時に酒瓶とルームライトを倒し、心臓発作と火災で亡くなったという事になります。」
自分が任務を遂行している間に秘密裏に現場偽装の質を上げていることには感心するが、北谷も裏社会の人間。この外にはこの護衛の遺体を処理させるためにも数人の見張り兼事後処理班を置いている。それらの目を盗んでそれらを行い、ここに今立っていることに薄ら寒いものを感じる。
「そこまでしなくても、うちの事務方が幾らでも情報操作はしてくれんだろ。なんで、ここまでするんだよ。」
「それは、私の痕跡も消すためですよ。」
吉行はそう言うと北谷に笑って見せる。
「さあ、行きましょう。」
そう言ってルームライトを倒すと、吉行はその場を去る。
床にはアルコール度数の高い洋酒を吸い込んだ絨毯が青い炎を上げながら、その範囲を広げつつある。北谷は最後の仕上げとして、その部屋を出ると鍵をかけ密室にする。
死体袋を外にいる事後処理班に預けると、この後バックドラフト現象が起こるから素早くここから離れる旨の忠告と丙子椒林剣への任務完了の報告の代理を頼む。
彼らが現場を去るのを見送ると、北谷は吉行の僅かな気配を追う。
丘の下の林の中、お城のような大きな別荘の一室が大きな爆発音を上げると、忽ち屋敷を大きな炎が包む。
それを見下ろす吉行。
「待たせたな。」
「流石ですね。他の者では私の気配は追えないでしょう。」
「いちいち鼻に付くんだよ。その如何にも自分は優等生ですって態度と行動がよ!」
常に一歩先を行く吉行に北谷は苛立ちを隠せない。
「私達は似た者同士のようですし、同族嫌悪でしょうかね。」
吉行は淋しそうな笑顔を北谷に向ける。
「・・・で、何の用なんだよ。」
「ある方を八咫烏から抜けさせるのが依頼です。私には出来ないことですから・・・。」
「・・・チッ。そう言うところだよ。先に断る理由を潰して来んなって。」
「引き受けてくれると言う事で宜しいでしょうか。」
「・・・先ずは、詳しく聞かせろよ。」
北谷は渋々と言った様子で依頼内容を聞いてみることにする。
吉行も北谷の様子を見て引き受けてくれると察すると、『コホン』と一つ咳払いをして話を続ける。
「標的は私の義妹でもある薬研藤四郎です。」
「おいおい!薬研と言えば、代々七星剣を護る守り刀だろ。そんな奴を組織から連れ出すなんて無茶過ぎんだろ。」
とんでもない依頼に思わず北谷は口を挟んだ。
吉行はそれに表情を暗くする。
「ええ、その通りです。」
「それは、話し合いとかで何とかならねえのかよ。」
北谷は気まずそうに問いかける。
「・・・本人は一族の血と仕事に誇りを持っています。最年少で組織に入り、メキメキと力を上げています。このまま行けば全ての最年少記録を塗り替えるでしょう。・・・だから、二本差しになる前にどうにかしたいのです。」
返答に渋る北谷。
「・・・つまり、本人も抜ける気は全くないって事か。・・・で、どうすんだよ。それじゃあ、例え抜け出させるのに成功してもすぐに本人の意思で組織に戻るだろ。」
黙り込む吉行に北谷は続ける。
「それに俺たち二人が関わってるとバレたら、両方の組織で問題になる。何が目的だ!それを教えろっ!」
「・・・少々長くなりますよ。」
観念した面持ちで吉行は語り始める。
「私の両親も八咫烏の一員でした。しかし、十一年前の八咫烏と因幡白兎の抗争に巻き込まれ、両親共々亡くなりました。その後、私を引き取ってくれたのが先代の薬研藤四郎様です。薬研様は弟子として厳しく接することもありますが、内弟子のような身の回りの世話などは拒み、私を我が子のように愛してくれていました。私も先代の薬研様と義妹の現薬研藤四郎を本当の家族のように愛していました。・・・その先代の薬研様の生前の意思が『現薬研藤四郎を普通の女の子として過ごさせてあげたい』と言うものでした。・・・私も同じ思いなのです。これで分かって頂けましたでしょうか?」
北谷は場都合が悪そうに頭を掻く。
「・・・分かったけどよ、本人にその気がなきゃ難しいのは変わんねえだろ。」
体のいい断る理由を付けたつもりだった。しかし、吉行は、
「それなら考えがあります。」
とにこやかに微笑むと、北谷にその作戦を告げる。
その作戦は北谷を驚愕させた。
まずは、吉行からは薬研藤四郎の情報を名前以外与えられない。それは、例え吉行でも組織内の人間の個人情報は簡単には持ち出せないからだ。結果、北谷が自力で探すことになる。
薬研藤四郎を見つけられるまでの間に北谷と対峙した八咫烏の短刀達が被害に合う中で、吉行が『理由は分からないが、短刀が狙われているのかも』と推測を組織内に情報として流す。
薬研藤四郎に当たった時は、吉行が戦闘の邪魔をするので、一旦北谷には引いてもらう。その後、北谷が普段から面をしていないこと。顔を見た者は必ず始末されることをそれとなく話し、日常生活でも北谷に狙われる可能性を示唆する。
日常生活、学校など多くの人、大切な友人を巻き込むことへの恐怖をしっかりと味わわせることで裏社会で生きる事の恐ろしさを知ってもらう。それにより、第一段階として血筋と裏稼業の仕事への誇りを揺らがせる。
最後には北谷と戦ってもらう事にはなると思うが、そこは北谷に勝利してもらって、負ける事、死ぬことへの恐怖を知ってもらう。これを第二段階として、普通に生きる事への憧れを強くさせる。
戦いの場所も指定し、そこは二人が去った後に火をつける。建物は遺体が見つからないほどに崩壊させ、二人を行方不明のまま死亡扱いにする。
藤四郎と北谷の二人には指定する隠れ里のような静かな場所で新しい人生を歩んでもらう。最終段階として、これが先代薬研藤四郎の願いであることを告げ、この世界に戻って来ないようにする。
こんな算段だった。聞いているうちに沸々と湧き上がる感情が声となって溢れる。
「お前・・・、それが愛する人にすることかよ。愛した人へ報いる方法かよ!よくもそんな酷い方法をそこまで緻密に考えられんなっ!」
怒りを露わにする北谷に対して、吉行は冷静に答える。
「では、私がこの国の全てを敵にまわしてでも戦い続け、あの子を自由にさせます。それを手伝うか、ここで私を止めるかしますか?」
(多分、陸奥守吉行は俺と同じで知略で戦うタイプだ。しかし、俺以上に頭が回る。先手も幾つも打ってから勝負を仕掛けているだろうから、勝負を仕掛けても今の時点で俺の負けが確定している。)
「チッ、相変わらず先に逃げ道を塞いでやがる。・・・で、もし失敗した時はどうする。あんたと俺の首で済めばいいが、情報が中途半端に漏れた場合、八咫烏と因幡白兎の全面戦争にもなりかねねーぞ。」
吉行は、何かしら藤四郎の面白エピソードの一つや二つ思い出したのであろう『ふふっ』と笑うと、
「確かにあの子は私が想像しないような事を偶にしますが、大凡、作戦通り行きますよ。」
と言うと一つの巻物を北谷に渡す。
北谷がそれに目を通すと、大凡の重要人物が取りそうな行動がまとめてあった。イレギュラー発生時の対応も細かく書いてある。
「その奇々怪々な義妹様のイレギュラー対応は書いてねえのかよ。」
とここぞとばかりに吉行に反撃の一言を食らわす。
「あの子のことを書いていたら、あと三巻は必要ですね。」
と言って吉行は笑って見せる。
「じゃあ、どうするんだ。」
と北谷。
「無視して進めて下さい。あの子の奇行は誤差の範囲内です。」
何故か少し楽しそうに話す吉行に北谷は、
(本当に育ての親も義妹さんも愛しているんだな。二人の話をする時だけ表情がほんの少し優しくなる。笑う時はほんの少し感情が乗ってる。)
と思った。
「んで、報酬は?」
「お好きな額をどうぞ。」
「じゃあ、二億。」
「ははっ。それだけの大金を綺麗にした後、足跡を付けずに貴方に渡すのがどれほどの手間か。まあ、出来ない金額ではないのでいいでしょう。」
「なっ!?」
冗談で言ったつもりが、あっさりと了承されて驚く北谷。
「それともう一つ、報酬があります。」
「なんだよ。」
北谷はぶっきらぼうに答える。
「貴方を普通の包丁にして差しあげられることです。」
「!?!?」
北谷は言葉に出来なかった。
(なんで、それを?誰にも話したことなかったのに・・・。)
と吉行の底の無さに恐怖した。
「何故って顔をしていますね。攘夷戦争の時でしたら刀や銃がそのまま武器でしたが、今の時代は情報が武器です。海援隊の坂本龍馬の愛刀、陸奥守吉行の名の下に情報と言う商材は貴方の思いが及ばぬほどに持ち合わせていますよ。」
そう言って、吉行は最後に北谷を揶揄うように笑って見せるのであった。
―—― 廃工場 ―—―
「お兄様・・・、なぜ・・・。」
そう言い残し、床に沈んでいく藤四郎を見ている事しか出来なかった北谷。足が言う事を聞かず、思いだけが藤四郎に駆け寄ろうとし、前方に倒れこむようにして床に手を付く。
「吉行!何故だ!!!薬研を助けたかったんじゃないのか!?僕をただの包丁にしてくれるんじゃなかったのか!?」
余りの感情の混乱から、北谷は気が付いたら涙を流していた。
「落ち着いて下さい。薬研は大丈夫です。急所は外していますし、貫通しているはずですから適切に処理をすれば命に別状はありません。」
そこまで聞くと、自分と吉行との繋がりが薄緑とへし切に見られたと思い、慌ててそちらの方を向く。
「そちらも大丈夫です。先に眠っておいてもらいました。」
吉行はそう言うと、北谷に麻酔の入った吹き矢を投げて寄越した。
「それより、問題は北谷。貴方です。七星剣様の作戦までは想定内でした。確かに、その後のイレギュラーが余りにも多すぎたのは事実です。この子が七星剣様の作戦を覆したのも、それによってこの子に組織内の視線が集中したのも、貴方の急な接触も、治金丸や薄緑殿、へし切殿の横槍。しかし、何よりの誤算はここでの連戦です。焦る気持ちも理解はできますが、時を見計らってチャンスを物に出来れば、私の指定した場所で二人だけで戦うことが出来たはずです。そうすれば、持久力の差で貴方が勝っていたはずなのです。」
北谷は申し訳なさそうに項垂れる。
(確かにそうだ。慌てなければ、またいつかチャンスは巡ってきていたはずだ。俺は何を焦っていたんだ?いや、違う。焦っていたんじゃない。憧れたんだ。希望を抱いてしまったんだ。薄緑の正体を知ってしまった事で、帝の力があればこんな血生臭い方法を取らなくとも、俺と薬研を普通の人間として生きていける方法を諭してくれるかもしれないって。)
「なあ、吉行。一つ聞いてもいいか。」
「何でしょうか。」
「もし、蜘蛛切さんと話し合えて力を貸してもらえてたら、こんな事しなくても良かったと思わないか。」
情けなくも弱弱しくしか聞くことが出来ない北谷に、吉行は憐れむように答える。
「・・・可能性はあるかも知れません。しかし、例え帝の恩赦が降りてお二人が組織から抜けられたとしても、両組織からの監視の目が無くなることはありません。今の七星剣様も丙子椒林剣様もそのような方では御座いませんが、もし代替わりをされて、次のお方がそこに払うコストを無駄と感じて、お二人の抹殺を目論むとも限りません。自由を与えられることと、自由を得ることは違う次元の話なのですよ。」
吉行は自分で言いながら自分の言葉に落胆する。
「クソだな・・・。」
「ええ、そうですよ。腐りきったこの世界で汚れ仕事を人知れずこなす私達に、国家予算や政治家の使途不明金の一部が使われていると知ったら国民はどう思うでしょうね。即座に解体を求める声が上がるでしょう。それ程に私達は理不尽で、無秩序で、非生産的で、軽蔑されるべき世界で生かされているのです。」
「・・・。」
黙り込む北谷に吉行は続ける。
「なんなら、今からでも遅くはありません。貴方と私で第二案、この世界へ反逆の狼煙を上げましょうか?」
吉行の目には薄っすらと涙が浮かんでいる。
「・・・俺たちがこの作戦を始めた日から、すでにこの世に対しての反撃の狼煙は上げたようなもんだろ。」
「・・・それもそうですね。」
そう言うと二人は乾いた笑いをあげる。
「さて、作戦はまだ続いていますよ。」
「そうだな。」
吉行の行動再開の言葉に北谷は答え、立ち上がる。
「ああ、報酬の件ですが、今後はこのようにお会いできることもないでしょうから、少し早いですが貴方の車のトランクに入れておきました。」
「なんで、俺の車まで知ってんだよ。しかも、どうやってトランク開けたんだよ。全く恐ろしいやつだよ。お前は。」
然も当たり前のように語る吉行に、北谷は呆れたように答える。
(―—― ―—― ―—― ?)
(わたし、生きてる?)
気が付いた藤四郎は、念のため死んだふりを続けながら、五感だけで周りの様子を伺う。
(・・・誰かの声がする。吉行様と北谷?やはり、吉行様が『鳥飼来国次』だったの?なら、気が付いたことを悟られないようにしなきゃ・・・。)
声の主を確かめるとその会話に集中しながら、自身の安否を確かめる。
(確か、吉行様に銃で撃たれて・・・。)
藤四郎は気配を悟られないように、そっと吉行に撃たれた場所を触る。
(あ、薬研藤四郎。これが弾丸から守ってくれたのか。主人を護る守り刀って言われる理由がよく分かる。)
ジャンパースカートの下、スクールシャツの上に帯で懐刀のようにして隠していた薬研藤四郎の鎺の辺りの鞘に銃弾が食い込んでいた。それを確認すると銃弾が鞘から剥がれ落ちそうになる。床に落としてこちらに気付かれては大変と慌ててそれを抑える。
(お母様、ありがとう・・・。)
零れそうになる涙をぐっと堪えると気になる言葉が耳に入ってくる。
「お二人の抹殺を目論むとも限りません。自由を与えられることと、自由を得ることは違う次元の話なのですよ。」
(抹殺を目論む?自由を得る?不穏な会話だなぁ。二人は何を企んでいるの?)
「ええ、そうですよ。腐りきったこの世界で汚れ仕事を人知れずこなす私達に、国家予算や政治家の使途不明金の一部が使われていると知ったら国民はどう思うでしょうね。即座に解体を求める声が上がるでしょう。それ程に私達は理不尽で、無秩序で、非生産的で、軽蔑されるべき世界で生かされているのです。」
(何の話をしているの?)
「なんなら、今からでも遅くはありません。貴方と私で第二案、この世界へ反逆の狼煙を上げましょうか?」
(えっ!?)
藤四郎の瞳からは自然と涙が溢れてきた。
(二人が世界への反逆を起こす?そうか、北谷がわたしを誘拐して組織同士の対立を謀っても北谷だけが貧乏くじを引きすぎていると思ったけど、二人ともそもそも反逆を企てていたなら納得がいく。でも、北谷が頻りにわたしを保護しようとしたのは何故?わたしも二人の戦力に加えるため?)
「さて、作戦はまだ続いていますよ。」
(作戦が続いている?ダメだ!お兄様を止めなきゃ!!!)
藤四郎は音一つ立てず、まるで幽霊のようにすぅっと立ち上がり、姿勢を低くする。
気配を立てず、殺気も消しているが、その目には悲しみや憂いといった感情は全くない。ただ、獲物を確実に仕留めることだけに集中した暗殺者『八咫烏の目』をしていた。
「なんで、俺の車まで知ってんだよ。しかも、どうやってトランク開けたんだよ。全く恐ろしいやつだよ。お前は。」
然も当たり前のように語る吉行に、北谷は呆れたように答える。
ふと、北谷は吉行の背後の違和感に気付く。藤四郎の姿がない。
「吉行!後ろっ!薬研の姿がない!!!」
北谷の言葉に吉行は振り返る。しかし、それと同時に身を低くし、吉行を盾に北谷の死角に隠れていた藤四郎の逆袈裟切りが吉行を襲う。
吉行の服がじわじわと赤く染まる。急所は外れているが、この出血では命は危ぶまれるだろう。吉行は赤い袈裟を着せられながら静かに膝から崩れ落ちる。
藤四郎自ら斬った相手なのにも関わらず、水心子正秀を放り投げ、吉行に駆け寄り崩れ落ちる体を支える。
「お、お兄様が『鳥飼来国次』だったなんて・・・。」
藤四郎の瞳からは止めどなく涙が溢れる。
「おい、薬研!これは違うんだ!!!」
そう叫ぶ北谷。
「ふふっ。良くできましたね。」
そう藤四郎の腕の中で吉行は言う。
「・・・なんで。」
「私は人狼ゲームは得意と言ったでしょう・・・?」
吉行はそう言うと静かに目を閉じる。藤四郎の腕の中で吉行がずしっと重さを増す。
「なんで。なんで・・・。なんで、お兄様はいっつも大切なことをちゃんと言わないんですかっ!!!」
藤四郎は涙も拭わず、怒りに任せて吉行の胸を何度も何度も叩く。
「お、おい。薬研・・・。」
止めに入ろうとする北谷に、藤四郎は、
「北谷、お願い。わたしを殺して・・・。」
そう言って、涙であふれる顔を北谷に向ける。
「・・・。」
何かを悟り北谷は、無言で一度は納めた鬼切安綱を抜き、上段に構える。
藤四郎は介錯を待つように頭を下げると額を吉行の胸に当てる。
ご覧いただきありがとうございます。
感想やこのキャラが好きなどありましたら教えていただくと、今後の制作の励みにもなりますのでよろしくお願いします。
勝者は敵に塩を送った藤四郎でしたね。そして、どうして吉行は藤四郎を撃ったのか?藤四郎は大丈夫なのか?次回もお楽しみください。
今回のタイトル「竹俣兼光」は別名「鉄砲切り兼光」なので、それをご存じな方であればタイトルバレになっていましたwww




