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第十五話 一触即発

城門の前に、冥鉄蹄騎士団が現れた時。

アルディアの全騎士団は、すでに城壁の上と城門前に展開していた。


斥候からの報告は前日に届いていた。

「魔王軍使節団、総勢五百以上。さらに後方に十万。冥鉄蹄騎士団を主力とし、南街道を北上中」


アリアは報告を聞いた瞬間、地図を叩きつけそうになったのを堪えた。


「……普通は和平交渉にその数で来ないな」


「普通じゃないから魔王軍なんだろう」


俺がそう言うと、アリアは深く息を吐いた。


「当然こちらも各都市に駐留している全騎士団に招集をかけてある。近衛騎士団も含めて全員だ」


「殿下は?」


「……城内で待機していただく。それだけは絶対に譲れない」


———


朝靄の中、冥鉄蹄騎士団が街道を埋め尽くした。

黒い甲冑に身を包んだ騎馬の列が、地平線まで続いているように見えた。

蹄の音が大地を揺らし、その音が城壁まで伝わってくる。


対するアルディア側。

城壁の上に弓兵隊。そして古竜。

アルディア皇国周辺および城門前に玄鉄盾騎士団を中心とした全騎士団、三万。

その最前列に、アリアが立っていた。


そして城門の前に、俺が一人。


冥鉄蹄騎士団の先頭が止まった。


距離にして、百メートルほど。


先頭から、二人が馬を進めてきた。


一人は金の刺繍が入った白いローブに身を包んだ穏やかそうな老人。

馬上でも背筋が伸び、両手を胸の前で組んでいる。笑顔だった。


もう一人は、黒い全身鎧に身を包み、身の丈を超える斧槍と異形の盾を持った騎士。馬の上でも大きく見える巨躯。

兜の奥の鋭い眼が、まっすぐにこちらを見ていた。


二人が馬を止めた。

俺との距離、十メートル。


白い老人が口を開いた。

「これはこれは。守護者殿、お初にお目にかかります。私は教皇ベネディクトゥス、魔王様の使節として参りました。本日は争いのためではございません。双方にとって実りある話し合いの場を設けたく」


穏やかな声だった。

だが目は笑っていない。


「……玄鉄盾騎士団長アリア・ヴォルテールに繋ぐ」


俺はそれだけ言った。


その間、俺の視線は黒騎士に向いていた。

巨躯の黒騎士も、じっと俺を見ていた。


黒騎士は鋭い眼光を一度も逸らさない。

俺も負けじと睨み返し続ける。

身長186センチの俺を頭二つ以上超える巨躯。

その両手にはさらに奴の身長を超える斧槍と、どう使うのか太い杭のついた異形の盾。


黒騎士が口を開いた。


「屍霊騎士団長、死天使アズリエルは何処か」


「奴なら牢獄にいる」


「慈悲深いことだな、守護者。我は冥鉄蹄騎士団長、不落の盾ゼルドリヒ」


「俺は桐島蓮。ご存知の通りアルディア皇国の守護者だ、穏やかに和平交渉済ませて帰っちゃくれねえのか」


「それは魔王様の御心のみぞ知る」


ベネディクトゥスだけが、穏やかに笑い続けていた。

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