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gw2日目 6

お待たせしました。楽しんで行ってください。


***


ギルド『牙』のアットホーム。その中にある鍛冶専用のルームを出てリビングに向かう。

今日はカンパネルラが来ることになっていた。

ただ、武器づくりに夢中になり時間を忘れていたため、約束の時間を過ぎてしまっていた。

リビングに入るとソファーに座ってくつろいでいるカンパネルラを見つける。


「待たせたか?」

「大丈夫ですぞ」

「悪い、武器作ってると時間を忘れるんだよな」

「相変わらずですなぁ」

「ほら、この前の侍の女いただろ。一緒にレイドした」

「彼女のですか。ってことは、今回は刀を?」

「ああ、スキル吟味とか度外視で渾身の一品を作ってたら時間忘れてたわ」

「構いませんよ。あ、インフェルノス。紅茶をもう一杯頂けますかな。クウネル氏はどうします?」

「俺も同じので頼む」


ゆったりとした動きで近づいてきたメイド姿の炎。

インフェルノスに紅茶を頼むと、リビングにあるギルドの倉庫を操作しリクライニングチェアを取り出しカンパネルラの近くに設置する。


「喜んでもらえるといいですな」

「そうだな。性能、スキル共に中々のものが出来上がったからな。多分文句ないはずだ」


こればかりは実際に使ってもらわないと分からない。

折角丹精込めて作ったのだから真っ先に見てもらいたいし、出来れば喜んでもらいたい。

カンパネルラもそれを理解してくれているから、いちいち詮索してくることもない。


「んで、何なんだよ。話って?」

「ああ、それなんですがな、クウネル氏は今回のイベントの掲示板は見てますかな?」

「イベントって今回のGWイベントか?見てねぇな、興味なかったし」

「でしょうね」

「あれって初心者用のイベントだろ。シズ達は参加するかもしれねぇけどな」


今回のイベントは元々初心者用のイベントだった。

イベントに参加することでモンスターとの戦い方や他プレイヤーとの連携の仕方を学んでいくのだ。

ポイントと交換して冒険に役立つ必須アイテムも揃えていく。


「参加するメリットがねぇな」


出てくるモンスターも大していい素材は落とさなかったはずだ。

おまけにレベルとステータスも下げられてしまう。

装備は持っていけるとはいえ、あまりメリットが見つからない。


「そう言うと思いましたよ。ほい、これ」

「何だよ」


送られてくるのは1枚のスクリーンショット。

恐らく掲示板に貼られていたものだろう。


「へぇ、これはまた」

「ま、相変わらずですわな」

「しっかし、二人とも戻ってきたんだな。まだ当分は復帰しないと思ってた」


本人は写っていないが、見ただけでわかる。

写真一面に写っているはずの森が焼け野原に変わっていたら、流石に。


「インフェルノスは参加したのか」


炎のメイドは首を横に振っている。

恐らく誘われなかったことが不満なのだろう。

首を振るたびに赤い火の粉が舞っている。


「しっかし初心者用のイベントで随分やらかしてるなぁ」

「PKのデメリットは特にないですからな。まぁリハビリ感覚なのでしょう」


リハビリ感覚で森焼き尽くされたら、イベント参加者はたまったものではないだろうな。

しかもこの惨状が、たった一人によるものだというのだから。


「リハビリする必要ないだろ、これ」

「まぁ、フィールドで暴れるのは今回きりのつもりらしいので、他のプレイヤーは助かるんじゃないですかね」

「フィールドで暴れるのは?」

「ほら、ベースキャンプでは暴れ放題なので」

「あー」


最初からそうすればいいような気もするが。

ま、何かしら理由があったのかもしれないし、余計なことは言わないほうがいいよな。


「つっても、俺たちは参加する必要なくないか?」

「はいこれ」


こちらの質問に、もう一枚スクリーンショットを送ってくる。

そこ写っているのは一つのアーケードだ。

どことなく見覚えがある。


「霧谷村の商店街だよな、これ」

「ええ、とても似てますね」

「……は?」


似てるって……。

え、作ったの、これ。

あ、いや、恐らく作らされたが正しいのだろうけど。


「ま、とりあえず招集だそうですよ」

「今からか?」

「いや、明日ですな」

「全員参加か?」

「でしょうな」

「それもそうか」


そりゃ全員参加するだろうな、こんな面白そうなイベント。


「分かった。それなら俺も、今からエントリーだけ済ませてくるわ。一緒に行くか」

「いえいえ。自分はエントリーは済ませてありますので」

「そっか。んじゃ、エントリー終わったら狩り行くか?」

「いえ、今回は予定がありますので遠慮しておきますよ」

「予定?」

「んー、ちょっとデートに」

「ああ、じゃあ仕方ねぇな」


***


「ぐっ」


ブレる視界で奴を捉えながら、後頭部を蹴られたのだと実感する。

別に痛みがあるわけではない。

問題なのは衝撃だ。

いくら痛みがないとはいえ、視界がブレるとカウンターどころではない。


(フェイント、か)


油断するつもりはなかった。

それでも、油断させられてしまった。

敏捷増加のみの特攻で、攻撃をくらっても大丈夫であると、目で追えているから対処出来ると。


(全く、人の事言えねぇな)


今の一瞬、八咫の動きを全く追えなかった。

顔面への攻撃に対して、叩きこむつもりだったカウンター。

しかし、顔面への攻撃がフェイントだった。

こちらのカウンターを軽くかわしながら、後ろに回り込んで後頭部を蹴り抜いた。


(それは分かる)


そう、そこまでは。

問題なのは——


「ジャブ」

「ーーふん!」


斧を横薙ぎに振るう。

しかし、追撃入れようと近づいていた八咫はバックステップで距離をとる。

本来であれば決まっていたカウンターは、後退することで簡単に避けられてしまう。


「ジャブ」

「ちぃ」


間髪入れずにジャブを放ってくる。


「ブレイズキック、落葉、ジャブ」

「らぁ‼︎」


炎属性が付与された蹴り上げからのかかと落とし、そしてまたジャブ。

こちらもカウンターを狙って戦斧を振るが、ジャブの途中で回避に転じてくる。


(相変わらず、地味に厄介だな)


八咫が多用するスキルである「ジャブ」は、威力自体は大したことない。

しかし、スキル中に攻撃をキャンセルすることが出来たり、「ジャブ」使用後のスキルの性能を上げる等、追加効果が地味にいやらしいスキルなのだ。

おまけにスキルレベルMaxにより、恐ろしく早く鋭い一撃に化けている。

それがほぼ予備動作なしで繰り出されてくる。


(対処は冷静にだ)


揺れる視界のなか、無理矢理に八咫を攻撃する事も出来なくはない。

だが、熱くなって攻撃しても避けられる。

しかも、八咫はその間に「ジャブ」からの連撃を叩きこんでくる。


「ふぅ」


視界の揺れも収まった。


(そろそろ攻めるか)


ゆっくりと屈み、思いっきり地面を踏み抜き、一気に近づく。

八咫は急接近に目を見開き、しかし対処が遅れることはない。


『アクセルドライブ!』


攻撃速度が上昇する補助スキル。

奇しくも、お互いが選んだスキルは同じだった。

斧の攻撃速度が上がり、容赦なく繰り出される連撃を、速度をさらに上げた拳で冷静に対処している。

振り下ろされる斧には体を反らし、薙ぎ払われる斧には数歩下がることで回避しつつ攻撃を凌ぎ、隙を見つけては『ジャブ』を叩き込んでHPを削ってくる。

本来であれば八咫がこちらの攻撃に対処し続けるのは厳しい。

しかし、八咫は『ラビットフット』『アクセルドライブ』に加えて、スキルレベルをMaxにしている『ジャブ』により、こちらの猛攻の悉くを対処しきっている。


(ああ、そういえば)


そこで自身が感じていた違和感の答えに気づく。

いくら手加減したとはいえ、投げた石をルーキーに避けられるなど有り得ないことだ。

一瞬八咫を見失ったことも、俺の攻撃に対処されていることも、本来であれば有り得ないことだ。

これらの疑問を一気に解決する答え、それがようやく見えてきた。


(このイベントはステータスが下がるんだったな。完全に忘れてた)


何のことはない、単純な話だった。

今回のイベントは初心者用だ。

自身のLV89のステータスはLV30代のステータスにまで下げられているのだ。

そしてそれは八咫も同じだ。

ある程度は差があるとはいえ、大した開きではないのだ。

八咫なら対処できるだろう。


(こいつ、気づいてんのかねぇ)


構えを解かず、じりじりと距離を詰めながら隙を伺っているこいつは、恐らく忘れているはずだ。

そもそも、高レベルプレイヤーにとってはメリットが殆どない。

だから初心者用のイベントにはそもそも参加しない。

だから結構忘れていることの方が多い。


(俺も何度か同じミスしたしな)


レベルを下げられることを忘れて参加して、油断していたところにPKやらレイドボスに痛い一撃をもらってしまう。

今回は気になる事があったから参加しただけで、このイベントが初心者用であることをすっかり忘れてしまっていた。


「はは、こりゃいい!」


武器の性能差を除けば、ほぼ互角の状態なわけだ。


「ジャ——」

「レイジングラッシュ!」

「っ」


速さでは辛うじて負けている。

こちらがどれだけ連撃を繰り出しても、紙一重で躱してくる。


(だからこそ、攻める!)


手を休める必要はない。

八咫にとってこちらの一撃が脅威であることは変わりわないのだから。

攻撃し続けることで相手の行動を回避か『ジャブ』に絞り込む。

そのうえで、『ジャブ』を打ち込んできた瞬間を狙う。

面倒なスキルではあるが、驚異ではないのだ。

それに打ち込んでくる瞬間に隙がある。

キャンセルが出来るとはいえ、攻撃から回避へ移行するのに若干のタイムラグがあるようだ。

だったらそこを狙えばいい。


「ジャ——」

「らぁ!」

「っちぃ」


少しづつ追い詰めている。

『ジャブ』の無駄撃ちも増えてきた。

あと一歩で、届く!


「フルスイング!」

「っ『即応反射』‼」


『即応反射』は僅か5秒の間だけ如何なる攻撃も自動で回避できるスキルだ。

体感で相手の攻撃が遅くなって見え、使用者のスピードが跳ね上がって勝手に攻撃を避けてくれる、前衛職の緊急回避スキルだ。

もっとも、効果時間が短いうえに再使用までに時間がかかるという使い勝手の悪いスキルでもあるのだが。


(へぇ、ここでそれを使うか!)


内心八咫の戦闘技術に舌を巻く。

こちらの攻撃を対処し続ける集中力。

スキルの取捨選択、使用に対する躊躇いのなさ。

おまけに、周囲を確認する余裕まである。


(だが、もうそろそろだな)


緊急回避スキルを使うほどまで追いつめている。

スキルも結構使っているのだ。

残りのMPも少ないはずだ。

随分粘られたが、あと少しだ。


***


「っち」


つい舌打ちがでる。

散々スキルを打ち込んでもグラヴァトのライフを半分も減らしていない。


(分かってはいたが、硬すぎる)


ステータス差もあるし、武器や防具の性能差もあるのだろう。

寧ろここまで粘られたのが奇跡なのかもしれない。


(しかも絞られてるな)


相手の連撃に、こちらの打てる手は回避か『ジャブ』の二択。

そうなるように仕掛けられている。


(焦るな)


度重なるスキルの使用でMPの残量も少なく、HPも少しづつではあるが減ってきている。

攻撃速度を上げ、『ジャブ』を打ち込んでも、そこで終わってしまう。

連撃に持ち込めない。

最悪一撃もらえば終わってしまうこの状況、一瞬でも隙が出来れば終わる。

こちらの隙を見逃してくれる相手ではない。


(だったらもういい)


もともと勝てる戦いではない。

ならばわざわざ相手に合わせる必要はない。


「ふぅ」


意識をさらに集中させる。


「ジャブ」


相手の攻撃が来る前に。


「のらっ!」


穿つ!


「ジャブ」

「ふんっ」


一撃が終わっても油断は出来ない。

二本目が襲ってくる。


(冷静に、ただ早く)


予備動作もなく。

スキルキャンセルを使う必要はない。

攻撃が来る前に、攻撃を終わらせていればいい。


「ジャブ」

「くそっ」


次第に相手が苛立ち、さらに攻撃が激しくなるが、関係ない。

近距離を維持し、攻撃が来る前に撃ちこみ、その後回避する。


「ジャブ」


後はMPが切れるのを待つだけだ。

どうせ終わりは近い。


***


「さて、準備はいいですカ?」

「はい」


ワンダーの確認に肯定する。

ベースキャンプの説明も終わり、待っていても八咫が戻ってこないので、準備を整えたうえで打って出ることになった。


「シズさんはサモナーですからね。その二人にも協力してもらいますよ」

「ええ」


自己紹介も済ませており、その際にバルムンクとすぃも召喚している。

バルムンクは最初普段着で来ていたが、状況を説明すると鎧の状態になってくれた。

すぃは何故か人型になっており、普通に会話ができた。

元々はこの状態が普通らしいが、今回は人型よりも寧ろスライム形態の方にお世話になるかもしれない。


「いつでも大丈夫ですよ」

「好きに命令して良いヨー」


二人とも準備万端のようで、大変頼もしい。

あれ、サモナーとして活躍するのって、もしかして初めてなのでは。


「さっきも言いましたけど、このイベントではステータスが下げられてるので攻撃を食らってすぐに死ぬことは恐らく無いでショ」

「はい」

「ただまぁ、先輩も大分苦戦してるようなのデ、強敵でもありますヨ」

「みたいですね」


ステータスのパーティー一覧にある八咫のHPとMPが少しづつ減ってきている。

このまま待っててもいいのだが、折角のイベントだ。

協力プレイを楽しむのも一興だ。


「さて、それじゃぁ行きますヨ!」


勢いよく宣言したワンダーと共に、ベースキャンプを後にした。

次でとりあえず2日目を終わらせて次にいく予定です。

それでわまた。

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