gw2日目 3
「ァァァァァアアア、あだっ!?」
予想だにしていなかった落下から辿り着いた先は、青々と生い茂る草むらで、着地すらできずに尻からダイブした。
「よっ」
「おっとと」
さっきまでニヤニヤとこちらを見ていたこの二人は華麗に着地を決めている。
まぁ、この二人が落下の事をしっていたのはまず間違いないだろう。
いつか覚えてろよ。
「いやぁ、驚いたな、シズ。大丈夫か」
「いつか覚えてろよ」
「んー、ナイスな悲鳴でしたヨ」
「いつか覚えてろよ」
「悪かったって。俺も一番最初は驚いたからさ。通過儀礼みたいなもんだ」
そりゃ皆驚くに決まっている。
定番は魔法を使っての転移とかだろう。
もしくは目的地まで自分で行くか。
目的地に落とされるとか予想出来るか。
「さて、と。とりあえずはベースキャンプから作るか」
「そうですネ。ひとまずマップをっと」
「ベースキャンプってどうやって使うんだ?」
「あ、そっか。お前説明受けてねぇのか。ヴィーさんに説明してもらえばよかったな。じゃあ、俺が教えるからワンダーは適当に頼む」
「どうします?新しく作りますカ?それとも今まで使ってたやつにしますカ?」
「あー、今までのは破棄していいわ。新しいの頼む」
「場所は赤にしますか?」
「馬鹿言え。シズが無理だろ」
「んー、じゃあ、黒?」
「なおのこと無理だろうよ」
「むぅ、注文が多いですネ」
「お前が無茶ばっか言うからだろ!もういいから、ここから少し距離のある場所に頼む」
「ハイハイ。んじゃちょっと待ってくださいヨ」
そう言ってマップとにらめっこしだしたワンダー。
その間に八咫から今回のイベントの説明を受ける。
「モンスターを狩って、ポイント集めて、好きなアイテムと交換、ってのがこのイベントの基本的な流れだ」
「ふむふむ」
「ポイントはモンスターの強さによって変わってくる。中にはレイド級の化け物もいるぞ」
「へぇ」
「んで、結構重要なのがベースキャンプだ。基本的にベースキャンプを建てると、そこが出発点になる。例えばモンスターにやられた場合はベースキャンプに戻される」
「さっき言ってた赤とかは?」
「あぁ、ちょっとマップ開いてみ」
言われるままにマップを開くと、そこには赤い点がいくつか表示されており、一部の範囲が黒くなっていた。
「赤い点が表示されてるだろ。それは開放ベースキャンプだな」
「開放?」
「あぁ、ベースキャンプの設定で開放するかどうか選べるんだよ。基本的にはパーティーしかベースキャンプに入れねぇが、開放されたベースキャンプは誰でも入れる」
「それってメリットあるのか?」
「ベースキャンプ開放してるのは大抵上級者でな。挑戦者を待ってんだよ。ベースキャンプの中なら他のトラベラーに迷惑をかけることなく暴れられるからな」
「あぁ、成る程」
「強いモンスターを倒してポイントを稼ぐ、ポイント使って拠点を増築、んでもって挑戦者を待つ、ってプレイスタルがわりと多いな。つまり、赤いマーカーは拠点の準備が整ったプレイヤーが挑戦者を待ち受けているわけだから危険なんだよ」
「へぇ」
「中には初心者が迷いこんでくるのを狙ってる連中もいるな。ほら、ここから近い場所にも赤い点がついてるだろ」
確かに、ここから少し距離はあるが、赤い点がいくつか表示されている。
「でもまぁ、基本的には初心者の邪魔はしないように意識してんだよ、皆」
「そうなのか?」
「まぁな。新規ユーザーは貴重なんだよ。皆新しいネタに飢えてんだ。だから辞められても困るんだよ」
「ふぅん。ネタねぇ」
「新しいクエストだったりジョブだったり、俺達が見落としちまった情報が入ってくるかも知れねぇじゃねぇか。言ってしまえば可能性だからな。このリヴィエラじゃあ、特にそうだ。セオリーな進め方がねぇんだから。何かおもしれぇ事をしでかしてくれねぇかワクワクしてんのさ」
成る程と思った。
ジョブすら最初からイベントで手に入るレアジョブがあるくらいだ。
アイテムや、スキル、装備までそうだとすると、確かにセオリーな攻略法なんて存在しない。
下手すると、武器やアイテムよりも情報の方が価値が高いのかも知れない。
「まあただな」
不意に、八咫が俺をを庇うように前に立ち
「たまにちょっかいを出す奴もいんだよ、こんな風に!」
そう言って腕を奮う。
ガンッ、という固い音が聞こえ
「アイター!?」
という悲鳴にかき消された。
「チョット!!何ですカ、先輩!」
「投擲スキルだ!さっさと構えろ!ほら、来るぞ!」
「ああ、敵っすカ。じゃあ、お任せしまス」
「馬鹿言ってねぇでさっさと守れ、っオラァ」
ガンッ
「アイター!?」
またも悲鳴があがる。
「チョット!何で私の方向に弾くんですカ!」
「すまん!つい何となく」
「あ、何となくなら仕方ないデスネ」
「だから!さっさと守れっつってるんだよ!」
「でも私、防御スキル取ってませんよ」
「役立たずがぁぁぁ!」
3発目が飛んで来るが、今度は俺ではなくワンダーを狙って放たれたようだ。
それも殴り飛ばす八咫を見ていると、改めて高レベルのプレイヤーなんだなと思う。
何しろ俺には見えていないからだ。
八咫が拳を奮い、何かが弾かれ、ワンダーに向かって弾かれ、
「ぎゃわー!」
悲鳴があがる。
もう慣れてしまった自分が、状況を打破するために今何ができるか、冷静に模索している。
(八咫は投擲スキルって言っていた。ワンダーは防御スキルを使えない。投擲は3発、2発目まで俺を狙っていた。3発目はワンダーを狙ってて、今八咫はそれを弾いた為に俺から離れーー)
「っ」
慌てて八咫の元へ向かう。
その判断が良かったのだろう。
先ほど俺がいた場所に何かが着弾し、煙をあげている。
(あっぶな!)
今ので狙いは俺であることが確定した。
(聞いてた話と違う!)
いきなりのPKとの遭遇に泣けてくる。
初心者の邪魔はしないって話は何処にいった。
「シズ、離れんなよ!ワンダー、まだか?」
「お待たせしましタ!水晶取りましたヨ!」
「んじゃとりあえずここでいい!」
「アイヨー!」
ワンダーは手に持った水晶を地面に叩きつける。
すると、水晶から光があるれて、一気に魔法陣が描かれる。
「よし!んじゃシズ、俺達はベースキャンプに入るぞ!ワンダー、一発かましてやれ!」
「イエッサー!」
そう言って背負っていた槍を持ち投擲の構えをする。
「イッケー!咎喰らう蛇!」
そのまま槍を投げて、真横に曲がって一直線。
その先には当然八咫がいて、
「は?ぎゃああああー!?」
勢い余ってそのまま吹き飛ばして行った。
「あー、失敗失敗。それじゃシズさん、入りますヨ!」
「いいのかあれ!」
「いいのいいの、どうせパーティー同士の攻撃はダメージないんですから!ほら、次が来ない内に行きますヨ!」
「っ、ああもうっ、知らないからな!」
吹き飛ばされた八咫が気にはなったが、こちらも人の心配をしている場合ではない。
今にも次が飛んで来るかも知れないのだ。
ワンダーに手をひかれて、ベースキャンプの水晶から出た魔法陣に入って行った。




