GW1日目 2
「あ、茜さんから聞いたんだ」
「ああ、どんなイベントなんだ?」
あれからバイトも終わり、帰って柚と勉強会を始めた。
ゴールデンウィーク期間の宿題で、各教科2、3枚のプリントだ。
ある程度区切りがついた所で休憩となり、今日あった事をそれぞれの報告しあった。
それで、昼に茜さんから聞いたゴールデンウィークのイベントについて柚に聞いてみた。
「えーとね、モンスター討伐のイベントだね。はいこれスクショ」
見せられたのは何の変哲もない森の写真で、ここが今回のイベントのフィールドとなるようだ。
「へぇ、森のフィールドね。嫌な予感しかしない。ルミナリア樹海じゃないんだろ」
前回はミノタウロスに追い掛け回されて散々だった。
今回もとんでもない化け物が出てくるんだろうか。
「うん。ルミナリア樹海じゃなさそうだね。後、そんなに警戒しなくても、今回はレベルが明らかに離れたモンスターは出てこないと思うよ」
「茜さんの話だと初心者用のイベントなんだっけか?」
「そだね。出てくるモンスターは基本的に攻略推奨レベルが1から30までしか出ないみたい。パーティー組むと、もっと楽になりそうだね」
それなら安心なのか?
確かに、ミノタウロス戦も他に戦うメンバーがいれば楽だっただろう。
もっと余裕を持って戦えたはずだ。
まぁ、そもそもサモナーとして役に立ってる気が全くしないんだが。
「パーティーなぁ。せっかくだから皆と参加出来ればと思ったんだが、出来そうか?」
「うん、参加制限とかは特にないよ」
「俺達や委員長は丁度いいイベントかもしれないが、葵達は物足りないんじゃないか?」
「んー、どうなんだろ。レベル30越えてるプレイヤーはレベル制限がかかるみたい。ステータスも大幅ダウンするのかぁ。あ、でもスキルレベルはそのままだし、装備のステータスもそのままみたいだよ」
「うーん、初心者PKが目的ならともかくなぁ。イベントは基本的にモンスター討伐で、それ以外のやりこみ要素は特になし?」
「ううん、結構盛りだくさんだよ。モンスター倒したらポイント貰えるみたいで、それ使って色々買えるみたい。序盤はポイント集めてベースキャンプを買うみたいだよ。上位のプレイヤーはベースキャンプに色々施設作ったり改築が出来て、初心者はポイント使ってアイテムや装備を整えるみたい」
なるほど、モンスター討伐してポイント集めてると自然とレベル上がるし、装備整えたらイベント後も楽になる。初心者にとってはありがたいイベントだ。
上位プレイヤーはレベルは下がっても、装備は変わらない訳だからモンスター討伐のポイントも集めやすく、ベースキャンプ改築等のやり込み要素もある。
ルーキーもベテランも楽しめるいいイベントになっている。
「んじゃまあ、誘っても問題ないかな」
「そだね。とりあえず私達はレベル30目指して頑張ろ」
「ん、何でレベル30?」
「次の町に行くのに、道中のモンスターも考慮するとそれぐらいほしいかなって」
「なる」
「まぁ、別に低くてもいいんだけどさ。レベル上げてスキルポイント集めて色々使ってみたいんだよね」
確かに、その気持ちは分からなくもない。
俺のサマナーも、柚の冒険者も、ジョブの中では珍しい部類だろう。
今後どんなスキルが取れるのかは明らかにされてない以上自分で探すしかない。
スキルのレベルを上げることもでき、選択肢がとにかく多いのだ。
それによっても戦い方が変わってくるだろう。
柚は、とにかく楽しみで仕方ないといった様子だ。
「分かった。とりあえず目標はレベル30な。俺は二次ジョブ取ってるから柚よりは上げにくいが、イベントでモンスター倒してたらそれなりに上がるだろ」
「そだね。ま、初のイベントだし、楽しもうよ」
「そうだな」
何はともあれ全ては明日だ。
明日はバイトは休みになっており、一日たっぷりと時間がある。
目の前の宿題が終わればだが。
「はい、じゃあ休憩終わり!次は歴史にしよっか」
「うぃー」
***
「そっちはどうだい?」
「上々だ」
「まぁ、そうですよねぇ」
深き森の奥。
『イノヴァの森』の最奥にその三人はいた。
一人は青いバーテンダー服を着た体格のいい男。
一人は黒いドレスに身を包んだ女。
一人はサングラスにスキンヘッドのおじさん。
「さて、取り合えずベースキャンプ設置しようか」
「ああ、そうだな」
「お願いしますね」
バーテンダー服の男はイベントのメニューを開くと、ベースキャンプの項目をタッチする。
すると、赤い水晶が目の前に現れる。
「よいしょっと」
その水晶を手に取るとそのまま地面に置く。
するとその水晶から赤い光が飛び出し、紋様を描く。
「ふぅ、何度見ても凄いもんだね」
「まぁな。とてもゲームとは思えない」
「ふふ、最初見たとき物凄く興奮してましたよね」
「はは、まぁね。それで、僕は何を作ればいいんだい?」
「ああ、作ってほしいのは町だ」
『・・・・・・』
唐突な難題。
「ああ、また始まった」とでもいうような眼をする男とおじさん。
「この前はペンションだったっけ」
「そういえばそうでしたね。あれも良かったですよねぇ」
「そうだったな。ただ今回は町を作ってもらいたい」
無茶ぶりを要求されている男の願いはただ一つ。
出来ることならこの無茶ぶりを回避したい。
「いや、まぁ「町を作れと言ってるんだが」――っぐぅ」
どうやら回避は無理のようだ。
これ以上生傷が増えるのは勘弁とばかりに頭を振ると、ベースキャンプに向かって歩いていく。
「やれやれ、取り合えず中に入ろうか」
「ああ」
「はは、そうですね」
そして躊躇いもなく紋様の上に立つと光に包まれて三人ともその場から消えたのだった。




