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ゴールデンウィーク前日2

長らくお待たせしました。

作者の都合により投稿が長らく遅れてしまい申し訳ありませんでした。

GW中は一応書き留めておいたもの更新していく予定です。



「よし、参加っと」


携帯を操作しながら明日からのゴールデンウィークを考える。

紫月から、この前に話題になったお泊り会の誘いが来たのだ。

参加者はおそらく紫月と薫、柚さんと恵さん、そんで坂巻姉妹だろう。

こんな面白そうなイベント、参加しないわけがない。


「むー、葵ちゃん携帯ばっかりー」

「葵ちゃー、あそぼあそぼー」


携帯から顔を外し足元を見ると、足にしがみ付いている二人の女の子が。

一人は小学3年生の桂木真奈ちゃん、二人目は小学1年生の桂木杏里ちゃんだ。

二人ともこの公園の近くに家があり、同じく家が近い俺が面倒見ることが多い。

今日も公園でのんびりしてるところを二人に見つかったのだ。

それから遊んでいたのだが、メールの着信音がなったので確認しているところだった。


「おっと、これは失礼。次は何しますかな?」

「んっとねー、次はかくれんぼ!」

「ぼー」

「かくれんぼでござるな。それでは自分が鬼をしますから、隠れてきていいですぞ」

「うん、わかった!」

「たー」


タッタッタと走って隠れに行く二人を見送る。

相変わらず元気いっぱいだ。

結構なことである。

そうしていると公園の入り口からこちらへ走ってくる人影が。


「ハァ、ハァ、ごめんね、葵君。二人の面倒見てもらって」

「お、亮先輩。家事は終わったんですかな」

「ッ、ハァ、うん、葵君が二人と遊んでてくれたからね。ハァ、ハァ、全部終わらせられたよ」

「それは何より。今かくれんぼしてますけど参加しますかな?」

「あはは、今は疲れてるから後で参加しようかな」

「……」


そう言ってタオルで顔を拭いている亮先輩。

家事を急いで済ませて、走ってきたのだろう。

話してる最中も息を切らせて汗だらけだ。

うん、それは別にいいんだが……


(相変わらずな色気でござるな)


桂木亮先輩は二人の兄なのだが、男らしさとは無縁の華奢な体躯で、触れたら折れてしまいそうですらある。

顔も童顔で声も中性的なので、女性に間違えられたのも一度や二度ではない。

趣味は裁縫で料理も得意なこの先輩は、下手な女子よりも女子らしい。


「そういえば葵君はゴールデンウィークの予定ってもう立ててる?」

「自分は今さっき紫月氏からお泊り会のお誘いがありましたので、参加する旨を伝えましたが」

「あ、そうなんだ。いつも妹と遊んでもらってるし何かお礼しようと思ってたんだけど」

「む、それはありがたいのでござるが、あまり気を使わなくてもいいですぞ」

「あはは、僕がお礼したいんだよ」

「そうですか。でしたらお言葉に甘えるとしますぞ」

「うん。暇な時にでも連絡してね」

「分かりました。ハハハ、今年のゴールデンウィークは楽しくなりそうですな」

『もーいーよー』

「おっと、お呼びがかかりましたな。では行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」


亮先輩に見送られながら二人を探しに行く。

走りながら。


ズダダダダダダ……


「オラオラオラァ、どこだどこだどこだぁ!」


走りながら周囲を見回すと木の陰に二人の影があるのを見つける。

影が震えているように見えるが、決して怖がっているわけではない。

こうやって隠れている場所の近くを走り回られる緊張感が楽しいようだ。

こちらも見つけてすぐに捕まえるようなことはしない。


「ここかぁ」

『……』

「ここでもねぇなぁ」

『……』


因みにこんなしゃべり方なのは二人の要望だ。

その方が緊張感が増して楽しいらしい。


「そこかぁ!」

『キャー!』


焦らすだけ焦らして、見つけると逃げていく二人。

この二人を捕まえるまでが一連の流れだ。


ちなみに、これら一連の流れはこの村の住民は殆ど知っている。

いつも遊んでいるのを皆見ているが故に慣れたものだ。


だから油断していた。



「へっへっへ、捕まえたぞぉ。どぉれ、身ぐるみをはいで……」

「……」


まさか休みの最中に、最近引っ越してきた人物がこの公園に来るなんて思いもしなかった。


「……」

「え、恵梨香氏。あの、これはただの遊びでして」


最初目を大きく見開いて、それからみるみるうちにゴミを見る目に変わっていく。


(うん、間違いなく誤解されてるね!)


恵梨香は知らなかったのだ。

葵は面倒見がよく、近所の子供たちから懐かれていることを。

この一連が、ただの遊びだということを。


「……っ!」


我に返ってからの動きが速かった。

すぐにタブレットを出し茜と千鶴にメッセージを送る。


『今、葵先輩が女子児童を気持ち悪い顔で追いかけている』


この時恵梨香は大変動揺していた。

冷静に考えれば、こんな公園で大声をあげて女子児童を追いかけているバカがいるわけがない。

しかし、初めて喫茶店で会ったときのテンションの高いイメージと、坂巻姉妹からの散々な評価が恵梨香の中にはあり、もしかしたらと思ったのだ。

通報すべきなのか迷っていたが、葵にとって幸いなことに通報されず、事情を知っているであろう茜と千鶴に判断を仰いだ。

仰いだのだが……


『大丈夫、いつものことだから』

「!!?」


二人からの無慈悲なメッセージが。

茜も千鶴も勿論、葵が子供たちと遊んであげているであろうことは分かっていた。

だから大して深い意味もなくこのメッセージを送ったわけだ。

だが、恵梨香は事情が違った。

何も知らない者がこのメッセージを見れば常習犯と勘違いしてしまう決定打になってしまう。


「……っ!」


恵梨香は交番まで爆走。


「え、ちょ、早っ!え、恵梨香氏!誤解でござるよ!本当に子どもたちと遊んでいただけですってば」


事情を理解してもらうまで、葵は走り続けることになってしまった。



***



「……」

「ん、どうしたの」

「恵梨香は葵にぃのことってあまり知らない」

「そりゃまあ、引っ越してきたばかりだし、学年も違うし、普段話す機会もないだろうからね」

「私たちが送ったメール、勘違いしないかな」

「勘違い?」

「私たちは葵にぃを知ってるから、いつものことだと分かる」

「うんうん」

「恵梨香が知ってるのは、喫茶店で会ったテンションの高い葵にぃ」

「まぁ、テンションが低い時の方が珍しいけどね」

「その状態であのメールを見たら」

「見たら?」

「幼女趣味、もしくはストーカーの常習犯」

「……」

「勘違いの可能性大」

「……一応フォローのメール送っとこうか」

「ん」


その後の二人のメールがさらに恵梨香の混乱を加速させていく。


『村の皆も知ってるから心配しないでいいよ』

『大丈夫、ただの遊び』


「っ!!!」


後に葵はメールを見せてもらい、


「もっと色々言い方があっただろうがー‼」


素に戻ることになった。




***


「ふう、こんなもんか?」

「そうね。今日はこの辺にしておきましょうか」


そう言って机のプリントを閉じる恵。

今日は学校が終わった後、薫の家で勉強会をしていた。


「ちょっと待ってな。お茶入れてくる」

「ありがとう」


体を伸ばしながら台所に向かう。


「ふぅ、明日からゴールデンウィークか……」


頭にあるのは明日からのゴールデンウィークについてだった。

中学の時は恵に勉強を教えてもらい、それ以外はリヴィエラをやっていた。

たまに畑の仕事の手伝いが入ってた時は参加していたが、それ以外は殆ど外に出ることがなかった。


「ま、楽しかったからいいんだが」


それほどまでにリヴィエラに熱中していた

中学生活の殆どを費やしたと言ってもいいほどに。

中一から葵達と始めたリヴィエラは実に楽しかった。

何より時間をかければかけるほど、成果が実感できる事が良かった。

何をやっても中途半端だった自分が、唯一輝ける瞬間でもあった。


「さてっと、麦茶でいいよな」


冷蔵庫を開けて麦茶を取り出し二つのコップに注いでいく。

ふんわりと香る麦茶の匂いは勉強でオーバーヒートしていた頭を冷やしてくれる。


「今年は、流石に今まで通りってわけにはいかないか」


麦茶を持って部屋に戻ると、恵はクッションに座って携帯をいじっていた。


「ほら、麦茶」

「あぁ、ありがとう」

「随分夢中になってるな。何かゲーム?」

「いえ、メールです。柚さんから」

「ああ、それでか。最近随分と仲良くなったな。遊び誘われたか?」

「ええ。お泊り会のお誘いが」

「お、よかったじゃねえか」


薫は、恵がゴールデンウィークに遊びに誘われたことが嬉しかった。

クラスで委員長をやっている恵は、クラスメイトから頼られることは多くても、遊びに誘われることは殆どなかった。

クラスメイト曰く、お堅いイメージがあり、休みは勉強していると思われてるらしく、誘いずらいらしい。

また、薫とよく一緒にいることから、変に気を使われていたことも原因の一つだったらしく、申し訳ない気持ちで一杯だった。


「ま、楽しんで来ればいいさ」

「ええ、楽しみです」


心底楽しそうにしている姿を、普段から誰にでも見せていれば、少しはイメージも変わりそうなものだが、学校では委員長として気が張ってるのか表情も硬い。

おまけに人に頼るのが下手で、いつも自分で抱え込んでしまう。

優秀で、ある程度自分で解決できてしまうために、薫が気を利かせて手伝わないとパンクしてしまう。


「おっ」


薫も自分の携帯を見ると着信が来ていた。

紫月からのお泊り会のお誘いだった。


(おそらく、葵にも誘いがいってるはず。葵も参加するだろうしな。ま、このタイミングだし、恵のお泊り会と会場は一緒だな)


恵には柚からメールが来ていたのだ。

それもお泊り会のお誘いが。

考えるまでもなく、紫月と柚が一緒になって企画している。


(ま、中学はリヴィエラばっかりだったし、これを機に青春すっかね)


きっと楽しいだろう。

仲のいい友人と机を囲み、料理を食べながら駄弁り、テレビを見たりゲームしたり、そんな楽しい時間を心行くまで満喫するのだ。


「薫、今年はゴールデンウィークを楽しみますよ!」

「ああ、そうだな!」


きっと楽しいに決まっている。



***


「あ“-、終わっだー」

「ちょっと先輩!なんて声出してるんですか」

「別にいいだろー、明日からゴールデンウィークなんだからさー。学校休み!目一杯ゴロゴロするぞー!」

「はぁ、まったくもう!こんな姿生徒に見られたらドン引きですよ、きっと!」

「あー大丈夫、紫月やらにはとっくの昔にバレてるから」

「全然大丈夫じゃないでしょうよ!」

「まぁ、あいつらはガキの頃からの付き合いだからなー。気にしなくてもいいさ」

「はぁ、まったくもう」


今回は佳奈美先輩の家で飲み会だ。


「で、家で目一杯ゴロゴロする予定の先輩が珍しく誘ってきて、何か用ですか?」

「んー」


横になっていた佳奈美が体を起こす。


「調べものは順調か?」

「……」


静かにこちらを見つめてくる。

先程の気だるさを微塵も感じさせない変わりように、一瞬反応出来なくなる。


「調べてるんだろ、紫月の事」

「それは……」

「田舎の情報網を舐めすぎだ」


確かに私の調べ物の中には彼も含まれている。

とはいえ、彼について聞き込みをしたのは今日が初めてなのだが。


「はぁ、相変わらず情報が早いですね」

「そりゃ紫月絡みだからな」

「ふふ、愛されてますね」

「ああ、皆からな」


彼について聞き込みをしたのは今日だ。

他の話題での聞き込みは以前からしていた。

彼の話題をだした途端の情報伝達だ。


「ふう、これは警戒されましたかね」

「ま、一応顔馴染みなんだし、フォローもしてたんで大丈夫だろ」

「それは、ありがとうございました」

「おう、感謝してくれー」


缶ビールの蓋を開けながらの返事。

先輩は何とも思ってなさそうだが、こちらとしては感謝しかない。

ここでの調べ物が出来なくなる危険性もあったのだ。


(変わりませんね)


本当に、知らない所でいつも支えてくれるひとだ。

目の前で幸せそうにビールを飲んでいるが、今でも頼れる先輩だ。


「それで、これからどうするんだ?」

「とりあえず紫月君は後回しにするしかないですね」

「ふーん、っぷは!」

「もう、聞いてきたのは先輩なんですから、少しは真剣に聞いてくださいよ」

「あー、聞いてる聞いてる」


のんびり二本目の缶を開けようとしているこの人を見ていると、真剣に悩んでいた自分が馬鹿らしく思えてくる。


正直紫月君の件はこれ以上調べようがない。

今回の聞き込みの結果、大した情報は得られなかった。

警戒されたのも痛い。

これからは調べ物も慎重にならざるをえなくなった。


「なぁ」


そんな間の抜けた声で現実に引き返される。

この先輩はいつも唐突で、予想もつかないことを平然と言ってくるのだ。


「紫月のことは本人に聞くのが一番だと思うぞ」

「なっ、出来るわけないでしょう!大体それなら先輩の方が色々詳しいでしょう!教えてくれてもっ」


そこまで言って、これ以上言ってはいけないと思い、口をつぐんだ。

さりげなく手を貸して、支えてくれている先輩のことだ。

私が今何を調べているのか、知っていることだろう。

先輩はきっと何か知っているはずだ。

話せることがあったらとっくに話してくれている。

話さないのには何か理由があるのだろう。


「すみません」


なかなか進展しない調べ物にイライラしていた点は否めない。


「まぁま、落ち着け。いつでもいいから話を聞いてこい。そうすれば気づける事もある」


のんびりと缶ビールを飲みながら、


「そうすればやっと……」


そう小声で言うのだ。


それから気まずい空気の中、目の前のアルコールとつまみを消化していると、


「それはそうとお前ゴールデンウィークどうするんだ?」


ふと思い出したようにそんなことを聞いてきた。

とはいえゴールデンウィークなど調べ物で消えると思っていた。

特に予定も入れていないことを話すと、


「んじゃ、ちっとリヴィエラ散策に付き合え」


と言ってくる。

正直悩んだ。

調べ物は一応仕事だ。

お金をもらってやっているのだ。

それをゲームに費やすなど言語道断だ。

どうするか悩んでいると、


「調べ物、少しは進展するかもしれんぞ」


ニヤニヤしながら言ってくるのだ。


「調べものがですか?」

「ああ、GWのイベントがあったろ。あれに出よう」

「二人でですか?しかもイベントなんて、調べものは関係ないんじゃ」

「まぁま、助っ人の当てならある。それにお前も息抜きは大事だろ。心配しなくても調べ物もはかどるさ」


相も変わらず不敵な笑みを浮かべながら言ってくるものだから、変に納得してしまう。

恐らくこのGWで調べ物が少しは進展するのだろうと。

現段階で何も教えてくれないのは気に入らないが、誘いに乗ることにした。


「んじゃ、参加って事で良いな、『幾万の瞳』さん」


こちらの顔を見て参加する意思を理解したのだろう。

実に楽しそうに、二つ名まで使って確認してくる。

正直二つ名はやめてほしい。

恥ずかしくてムズムズするのだ。

それが分かっていて言ってくるこの先輩は本当にいい性格をしている。


「ええ、いいですよ『赤い悪魔』さん」


だから、こちらもやり返す。

先輩も二つ名には不満を持っていることは知っていた。

見る見るうちに、心底嫌そうな顔になっていく。


「はぁ、そういえばそんなふうに呼ばれていたっけね」

「立派な二つ名じゃないですか」

「全く、『マルチウェポン」だったり、『無音』だったり、『舞姫』なんかで呼ばれてた中、何で私は『赤い悪魔』なんだか。ネーミングセンスわるすぎだろう」

「いえ、先輩の特徴を表したこれ以上ない二つ名ですよ」

「むぅ」


唇を尖らせて不満そうにこちらを見てくる。

でも、正直楽しみでもあるのだ。

引退した先輩の、理不尽なまでに圧倒的だった戦いをまた見られるのかと。


「それで、もう一人の当てってやっぱり?」

「ああ、『違法建築』だよ。ま、あいつも誘えばくるだろ」

「……はは」


乾いた笑い声がでる。

恐らく、リヴィエラのGWイベントは荒れるだろう。

過去『赤い悪魔』と『違法建築』が出てきて、まともにイベントが進んだ事がないのだから。


きっとまたはた迷惑に周囲を巻き込んでいくのだろうなと、苦笑いを浮かべることしか出来なかった。


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