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第一回お茶会inGarden

「それじゃあ、第一回お茶会 in Gaeden、開催でござるよ!」

『おぉー!』



カンパネルラの宣言で始まったお茶会。

机の上にはマザーが作ってくれたお茶菓子と紅茶が。

そして机を囲んでソファーに座りながらそれぞれ世間話をしている。

席順は俺、ユズキ、シハン、セン、カンパネルラ、クウネルさん、赤夜叉、道草さんの順で座っている。

残念ながらイインチョーは予定が合わず、今回は不参加だ。



「そう言えばシズさんとユズキさんはこの前八咫と会ったんですよね」

「ええ、ルミナリア樹海で会いました」

「八咫本人が私に情報を買いに来ましてね。久しぶりにレイドボス攻略するって張り切ってましたよ」

「へぇ、それは楽しみだ」



早速八咫の方も動き出しているようだ。

以前会った時にした勝負の約束。

『どちらがよりリヴィエラを楽しむか』

動き出したということはギルドの方も上手くいったのだろう。



「道草さんは八咫と交流あるんですか?」

「ええ、店の常連でしたよ。ただ町で迷惑行為をするようになってからめっきり来なくなりましたが。最近はまた良く来られて情報を買っていきますね」

「へぇ、そうなんですか」

「そうそう、八咫はあなた達の情報も買っていかれましたよ」

「え、俺たちの情報?」

「ええ。あなた達のジョブであったり拠点だったり、所属ギルドであったり。『あいつら、結局話してくれなかった』って愚痴ってましたけど何かあったんですか?」

「・・・・・・」



そういえば結局話してなかったな。

別に話さないつもりはなかったし、釣り勝負の結果がどうあっても最終的には話すつもりでいたんだが。

その後のすぃの登場やら勝負の約束やらで有耶無耶になってしまった。



「それから私も彼から情報を買ったんですが、あなた達あのミノタウロスの亜種を倒したらしいですね」

「ええ、ルミナリア樹海で遭遇してしまいまして。・・・・・・ん、亜種ですか?」

「武器を持っていないミノタウロスの事です」

「あぁ、そいつです。亜種だったんですか」

「ええ、他のミノタウロスと違って動き早いし隙もないしで厄介なモンスターです。基本的にディノス坑道にいるモンスターのハズなんですが」

「でも俺ら会いましたよ?」

「ふむ、何かイベントの告知は出ました?」



イベントの告知は恐らくマザーが俺に対してジョブのクエストを提示してきたやつの事だろう。

結局ミノタウロスの時は何もそういった告知はなかったんだよな。



「いえ、イベントの告知のようなものは何もなかったですよ」

「そうですか。実はここ最近、他の場所でも同じ現象が起きているらしくて」

「そうなんですか?」

「ええ、他のプレイヤーも被害が出ているそうです」

「へぇ、他の場所でもですか」

「私も情報を集めていますが、まだ原因は特定できていないんですよね」



道草さんもまだ原因を特定できてないのか。

原因も不明で、現象が起きている地域も広いとあってはなかなか難しいのだろう。



「ま、何か分かりましたら連絡しますよ。そんな事よりも、ミノタウロスの亜種ですよ。お二人では明らかにLVが足りていないと思ったんですけど、どうやって倒したんです?」

「ああ、それは——」



その後ミノタウロスの亜種と戦った時の事を説明した。

道草さんは最初バルムンクを疑っていたらしいのだが、単純にユズキの火力によるものだと分かると呆れるようにため息を吐いた。



「何といいますか、お二人は凄まじいですね」

「え、俺もですか?」

「そうですよ。何自分は関係ないような顔をしているんです。」

「いや、俺は補助しかしていないけど」

「シズさんのジョブはサモナーでしょ?なのに召喚を一切使わず、力を十分に発揮できないのに勝利しているんですから、十分に凄い事ですよ」

「そうなんですかね。殆ど妨害系のスキルを撃ってたようなものですけど」

「それを含めて凄い事です。後、何よりも異常なのは防御力でしょうか」

「え、防御力ですか?一応クウネルさんの盾は使ってましたけど、一撃でHPを殆どもっていかれてましたよ」

「はい、だから凄いんです」

「?」



いまいちよく分からない。

俺自身の防御力なんてたかが知れているのだ。

クウネルさんの盾が優れているのであって、俺の防御力が優れている訳ではないと思うんだが。



「いいですか、シズさん。クウネルさんの盾は確かに素晴らしい性能です。でも、盾は持ってるだけで防御力が増えるわけではないんです」

「はぁ」

「盾は相手の攻撃を受けないと効果が発揮しません。つまり、相手の攻撃に合わせてこちらも盾で防がないといけない」

「それはまぁ、そうでしょうね」

「まだ分かりませんか?」

「何がです?」



うーん、言っている事は当たり前のことだ。

正直盾を持っているだけでステータスが上がるわけではない事は初耳だったので、有り難い情報なのだが。

道草さんが問題にするような事が他にあるのだろうか。


こちらがピンと来ていないのが分かったのだろう。

またもため息を吐く道草さん。



「あのですねぇ、シズさん。あなたミノタウロスの直撃を受けたでしょう」

「あ」



ようやく道草さんの言いたいことを理解する。

確かに俺はミノタウロス亜種の攻撃を何度か受けていた。

今までの話を踏まえて考えると確かに異常だ。


「いくらクウネルさんの盾がすごくても、直撃をくらってしまったら意味がありません。本来であれば一撃で死んでいるはずなんですよ」

「・・・・・・」

「八咫も最初はチートを疑ってたみたいですよ。実際私も聞いた時はチートを疑いました」

「・・・・・・」

「八咫はユズキさんに聞いてみたみたいですが、ユズキさんがチートを否定するものだからジョブやらスキルやらを聞きたがったのですよ」



そういえば釣りの最中にユズキと話してたな。

なるほど、チートを使っていると思われていたのか。

だからあんなにスキルやらジョブやらを聞いてきたのか。



「ただ、私はどちらかというとチート行為よりも、チート級のスキルを手に入れているのではと思っているのですが」

「チート級のスキルですか」

「はい。始めたばかりのシズさんは知らないかもしれませんが、このリヴィエラでチート行為を行っているプレイヤーは一人もいないんです」

「そうなんですか?」

「ええ。何人ものハッカーが挑戦したみたいですが無理だったようです」

「へぇ、だからスキルですか」

「ええ。後衛職のシズさんがレベル差が極端にあるミノタウロスの直撃を受けて耐えれるとなると、相当効果の高いレアスキルです。何か思い当たるようなスキルはありませんか?」



ふーむ、レアスキルねぇ。

正直全然心辺りがない。

俺があの時取ったスキルは全部妨害系のスキルだ。

防御力が上がるスキルなんて一つも使っていない。

レアスキルと言われても、全く心当たりがないのだ。



「申し訳ないんですけど、あの時は特に防御力が上がるスキルは使ってないですね」

「ふむ、そうですか。アクティブ系のスキルではないのでしたらパッシブ系のスキルかもしれませんね」

「パッシブ・・・・・・」

「後は2次職のスキルの可能性もありますね」

「・・・・・・」

「そっちはどうでしょう。心当たりあります?」


(ありますあります、めっちゃありますよ!)



何で忘れていたんだろう。

俺の耐久が上がってる理由なんて一つしかないじゃないか。


『ボコられた者』


無意識に記憶から消していた黒歴史だが、確かに取得していた。

何しろ効果が『ダメージカット+』なのだ。

これで痛い目にあわずにすむと思って取ったスキルだった。

しっかり働いてくれていたのだ。

アクティブスキルでもないので、全く気付いていなかったが。



「どうです、シズさん。何かそれっぽいスキルはありましたか?」

「・・・・・・」

「何か心当たりがありましたら是非教えて欲しいのですが」

「・・・・・・」

「あ、無理にとは言いませんよ。取得条件だったりヒントでも良いですので。攻略に役立つスキルですし需要があるんですよ」

「・・・・・・」

「シズさん?」



取得条件だと?

言えるわけがないだろう!

『女子風呂覗いて吹っ飛ばされたら手に入りました』

なーんてこの場で言おうものなら、それはもう冷たい目で見られることだろう。

カンパネルラ辺りは『次は拙者も一緒に』とか言いそうだが。


しかし確かにこのまま言わないでおくのも、チートを疑われている現状好ましくはない。

一番いいのは、スキルによるものをだと伝えてそのままで済む事なのだが、道草さんは当然聞いてくるだろうしな。


今なら俺もこのスキルが性能おかしい事は分かる。

そして攻略組としては喉から手が出るほどのスキルであることも。

しかしどう答えたらいいものか。


(いや、難しく考えすぎるな。要はマズイ情報を省いて伝えればいいだけだ。このスキルは風呂に入ったら手に入った。女風呂であった事も、バルムンクとマザーと会ったことも、マザーに吹っ飛ばされたことも言わなければいい。道草さんもヒントだけでいいと言っていたし)



「えっとですね。一応それらしいスキルはあるんですが」

「おお、それは代理人のスキルですか!」

「はい。えっと、ヒントだけでいいですかね」

「大丈夫ですよ。こちらはお願いしている立場ですからね。まぁ代理人にしか取得できない可能性もあるわけですが、仮に他のジョブでも取得可能だとすれば、2次職が今後重要視される可能性もあるわけですし」

「・・・・・・」



なんて胃が痛いんだろう。

新たな可能性の開拓という素晴らしい機会に、くだらない事で得たスキルを紹介しなくてはいけないなんて。

道草さんが真剣なだけに、どうしても罪悪感を抱いてしまう。


(ええい、言ってしまえ!)



「えーと、俺はこのスキルを風呂で手に入れました」

「・・・・・・ほぅ」



実に気まずい間だ。

ぼかして言っているとはいえ、殆ど真実なのだ。

これ以上言いようがない。


だがここで予想外の事が起こる。

道草さんが立ち上がったのだ。


(ふざけた内容で怒らせてしまったか?)



「えっと、道草さん?」

「情報提供ありがとうございます、シズさん」

「はい?ええと、どうも」

「それでは私は今から確かめに行ってきます!」



シズは知るはずもなかったのだ。



「えっと、どちらに?」

「女風呂ですが?」



道草の中身が女であることなど。



「ぶっ、ちょっ、待て待て待て待てぇ!女風呂って何で知って・・・・・・じゃない、何女風呂に行こうとしてるんですか!」

「え、今から確かめようと思っていたんですが駄目なんですか?」

「ダメに決まってるだろぉ!」



そして道草も忘れていたのだ。



「大丈夫ですよ、すぐ戻ってきますから」

「そういう問題じゃない!ちょっ、力つよっ!カンパネルラ、呑気に話してないで手伝ってくれぇ!」



自分の見た目がサングラスをかけたスキンヘッドのハードボイルドなおっさんであることを。

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