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予想外の来客



「シズ、今日って確か道草さんが来るんだっけ?」

「ああ。そろそろ来る頃かな」



ユズキの言う通り、今日は道草さんがGardenに来ることになっていた。

色々とリヴィエラについて話しながらのんびりお茶会する予定なのだ。

マザーにも予定を伝えてあるので、リビングで道草さんを待っている。


ついでに、



「ほぅほぅ、これがシズ氏が今回仲間にしたスライムでござるか」

「っていうかさ、種族ウィンディーネのスライムって何?」



カンパネルラとシハンはスライムをじろじろと観察しており、



「ひんやりー」



センはすぃのスライムチェアーの虜になっていた。



「しかし、今日の来客は道草さんでござるか」

「うん、そうだよ。カンパネルラは道草さんと付き合いあるの?」

「そうでござるな。かなりお世話になりました。道草さんの情報はリヴィエラ攻略に欠かせませんでしたからな」

「へぇ、そうなんだ。ひょっとして初期のころからの付き合い?」

「そうでござるな。シハンとセンを含めてお世話になりましたなぁ」



遠い目をしながら語るカンパネルラ。

相変わらずふざけた顔をしているが、遠くを見るその目はとても優しく、大切な思い出であることが伝わってくる。



「以前はセンとシハンと一緒にとあるギルドに所属しておりましてな。攻略組としてリヴィエラを渡り歩いていたのでごぜるよ。時にはダンジョン攻略、時にはギルド同士の抗争、時にはレイドボス攻略と退屈しませんでしたな」

「へぇ、そうなのか」

「うん、そうだよ。私とセンは前衛でバッタバッタと敵を倒していって、カンパネルラが後ろからジワジワと攻撃してたよ」

「随分と攻撃的だな」



俺やユズキとはまた違った攻撃的な編成だ。

そして何となく気になる事が2つ。



「3人とも二つ名持ち」

「二つ名?」

「ちょっと、セン!それは言わなくていいから!」



慌ててセンを止めようとするシハン。

カンパネルラはそれをみて苦笑している。



「私が『舞風』、姉さんが『戦姫』、カンパネルラが『無音』」

「ーっ!ーっ!!」



声にならない叫びをあげているシハン。

ユズキもカンパネルラと苦笑している。

最初は二つ名と聞いてもピンとこなかったが、何となく理解できた。


「因みに、元々は『戦鬼』だった。それを『戦姫』にさせた」

「もういいからっ!!」

「・・・・・・カンパネルラとセンはまだいいとして、何したんだシハン」

「・・・・・・えっと、その、何といいますか」

「自業自得。面白半分にモンスターやらPKやらを狩るからそうなる」

「うう」

「あれは相手方も悪かったですからなぁ」

「で、でしょ!別に私は挑まれた喧嘩をかっただけで」

「ま、そこでやり過ぎなければ『戦鬼』なんて二つ名も付けられはしなかったと思いますが」

「やり過ぎ」

「し、仕方ないでしょ!いきなりモンスターやらプレイヤーやらが襲って来たから、イベントかなって思ってワクワクしただけじゃん!まぁ、結局MPKの類だったけど」

「なるほど。黒歴史が二つ名になったってことか」

「ハッキリ言わないでよ!シズにぃ!」



要はやらかした過去って事だろう。

自分から二つ名をつけることは余程中二病でない限りないのだから、周囲からの評価って訳だ。

シハンの恥ずかしがる気持ちも分からなくはない。


そして恐らくシハンとセンのジョブは以前のものではないのだろう。

シハンが騎士でセンが魔術師だ。

一人で戦い抜くのには向かないジョブだ。

初期から始めてたのにレベルが30程度だと聞いてもしかしたらとは思っていたのだが。


そしてもう一つ。

それぞれの話方が過去のものだということだ。

そのギルドを抜けたのか、もしくはギルドが解散になったのか。

あまり突っ込んで聞くのも悪い気がして、そのことについて聞こうとはしなかった。



「さて、道草さんが来るのも、そろそろだな。しかしあと二人連れてくるって言ってたけど一体だれなのかねぇ」



道草さんとはフレンド登録してるのでメッセージを送り合うことが出来る。

今日ログインすると一通のメッセージが来ていて、道草さんからだった。


『今日のお茶会ですが、私の他にあと2人参加してもよろしいでしょうか』


と来ていたので、『構いませんよ』と返しておいたのだが。

結局誰が来るかまでは聞いていないのだ。



ピロンッ!



「お、来た来た。えっと、『着きました』か。んじゃ、出迎えてくる」

「はいはーい」



ユズキ達に伝えると、Gardenの玄関に向かう。

実はこのGarden、基本的にマザーの許可なく入ることが出来ない。

周囲が塀で囲まれており、入り口から中に入ることが出来ないようになっていた。


ただ例外として、俺がフレンドに登録した者達は入ってこれるようになっている。

一応道草さんはフレンド登録しているのだが、連れがいるようだし、俺が出てくるのを待っているのだろう。



(お、いたいた。えっと、確か後二人いるんだったよな———)



そこで止まった。


確かに二人いる。

一人は見覚えがある。

俺に盾を売ってくれた人、クウネルさんだ。

そっちは別に問題ないのだ。


問題なのはもう一人。

忘れもしない。

俺以外が一瞬でPKされて、俺も命からがら逃げ伸びたあの時のトラベラーだ。

相変わらず赤い般若の仮面を付けて道草さんと一緒にこちらを見ている。



(いや、止まってちゃ失礼だ。折角道草さんが連れて来たんだし、こちらが意識しても気まずくするだけだ。今日はお茶会なのだから相手もそのつもりで来てるはず。なら別に警戒する必要もないだろう)



止まったのは一瞬。

直ぐに切り替え入り口に迎えに行く。



「こんにちは、シズさん。今日はお誘いいただきありがとうございます」

「こんにちは、道草さん。今日はマザーが料理を振る舞ってくれるので楽しんでいってください」

「ああ、彼女がですか。それは楽しみですね」



よし、取りあえず道草さんとは和やかに挨拶が出来たな。

強面な見た目からは想像できないほど接し方が柔らかいので安心できる。


さて、次だ。



「お久しぶりです、クウネルさん。この前は盾をありがとうございました」

「いえいえ、構いませんよ。どうぞ、またご利用ください」

「はは、分かりました。その時は是非。それから、すみませんがGardenに入るためには俺とフレンド登録してもらわないといけないので、今申請しますね」

「ええ、分かりました」



うん、クウネルさんも相変わらずの商人プレイだ。

まぁ、ここまでは全然問題なく進めることが出来るのだ。

問題は、



「・・・・・・」



この御仁である。

彼なのか彼女なのかも分からないが、全く喋らないのだ。

おまけに仮面を付けてるので全く感情が読めない。

戦ってた時は気づかなかったが、この中では一番小さいようだ。

恐らくセンといい勝負だろう。



「えーと、どうも。・・・・・・久しぶり」


コクン


頷いて返してくれるから一応こちらの言葉は伝わっているのか。

まぁ当たり前と言えば当たり前なんだが。



「あー、とりあえず入るためには俺とフレンド登録してもらわないといけないんだが、構わないか」


コクン


「そ、そうか。じゃあ今申請送るな」



フレンド登録の仕方は簡単で、ステータスを開きフレンド登録の欄を出した状態で対象を確認する。

すると俺の目の前にいる人物の名前が出てくるので、それをタッチして申請すればいい。

目の前に表示された『赤夜叉』の欄をタッチし、申請を送る。

直ぐに『申請が受理されました』という項目が出たので、一応これでフレンドということになる。



「さて、じゃあとりあえず入るか」

「いえ、待ってください」



Gardenのペンションに案内しようとすると道草さんから待ったがかかった。



「どうしました?」

「ほら、赤夜叉。先にしないといけないことがあるでしょう」

「・・・・・・」



そして俺の前に赤夜叉を押してくる。

赤夜叉に対しては良い印象を持っていないどころか、苦手意識がある。

PKされかけた事もそうだが、仮面のせいで何を考えているのか全く分からない。

こちらに敵意を持っているのか、そうでないのかすら分からないのだ。

おまけに全く喋らないのだ。

そんな相手に親しみを抱く事は到底不可能だった。


正直な話、フレンド登録したくないとすら思っていた。

何しろ俺とフレンド登録してしまえばGardenに入れてしまうのだ。

仮にGardenで暴れだすような事があればフレンド登録を解除することも考えていた。


だから、俺の前に立たれると凄く困るわけで。


ピロンッ!


全く喋らないからどうしたものかと考えていると、メッセージの着信音が。

赤夜叉からのメッセージで、簡潔に



『この前はごめんなさいm(__)m』



と書かれていた。

この前というのは恐らくPKの事だろう。



(ってか目の前にいるんだから喋ればいいだろう!滅茶苦茶ビックリしたぞ!)



赤夜叉を目の前にして緊張してる状態からのあの着信音は心臓に悪い。

すると急に赤夜叉が手を前に出して、そこから一つの盾が出てくる。



「それは・・・・・・」



クウネルさんから貰ったタワーシールド。

いつの間にか無くなっていたので恐らくPKされかけた時に回収し忘れてたのだろうと思っていたのだが。


ピロンッ!


赤夜叉の急な行動に驚いていると、またもメッセージが。



『これ、お詫びですm(__)m』



俺は別にPK自体を否定はしていないので、別にPKされかけた事に対して怒ってはいない。

ただ、PKしてきた相手を自分の大切な場所に招くかどうかは別問題なわけで。

赤夜叉もそれを承知しているからこその、お詫びなのだろう。

お茶会に参加する上で、自分が相手にしたことに対する清算と誠意。


そして俺にこのお茶会に参加してもいいのか聞いてもいるのだろう。

恐らく盾を受け取れば可、盾を受け取らなければ不可。


道草さんとクウネルさんは特に何も言わず、ただ成り行きを見守っている。

道草さんが連れて来たのだから俺らと赤夜叉との関係は知っているはずだ。

関係がなかったとしても、道草さんは情報屋なのだからある程度知っていておかしくはない。


一緒に来たクウネルさんも恐らく知っているのだろう。

盾をよく見ると以前攻撃された時に出来てた損傷が無くなっている。

恐らくクウネルさんの所に修理しに行っているはずだ。

そして何があったのか気づいたはずだ。


その二人が何も言わずに見守っているってことは、全てをこちらに一任されているのだ。

俺が盾を受け取ろうが受け取るまいが、お茶会が中止になろうが、それを受け入れるのだろう。



(だったら俺のするべきことは一つだな)



俺が危惧していたのはGardenで暴れないか、マザーたちに迷惑をかけないかという一点につきる。

その心配も恐らく大丈夫だろう。

この誠意はこちらに迷惑をかけた詫びと、お茶会で迷惑をかけないことがハッキリと伝わってくるから。

ならもういいじゃないか。


赤夜叉から盾を受け取る。



「いらっしゃい、赤夜叉。心ゆくまでお茶会を楽しんでいってくれ」


コクッ



結局のところ、俺としては今日のお茶会が楽しければそれでいいのだ。

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