すぃ
「ふぅ、結構食べたな」
「うん、もういいかな」
「あー、食った食った」
樹海の湖を眺めながら食べるのも乙なものだ。
串に刺した焼き魚を食べながら時間が過ぎるのを忘れボーっと湖を見ている。
頭を空っぽにできるこの時間が何とも言えない贅沢な気分にさせてくれる。
ユズキは色々と聞きたいことがあるのか八咫と話をしている。
八咫も見た目に反して面倒見はいいらしく、こちらの質問には文句を言いながらもしっかり答えてくれる。
「ん?」
自分の後ろからガサゴソと音がしたので振り返ると草むらが不自然に揺れている。
(モンスターか?)
串を地面に置き、杖を手にする。
バサッ
勢いよく飛び出してきたのは黒い狼だっだ。
(来るか!)
そのまま俺に飛びかかってきて——
バシュッ
「・・・・・・は?」
草むらから出てきた水色の狼に喰われた。
いや、よく見るとそれは狼ではなかった。
噛みつく瞬間狼のような口で襲い掛かってたから狼と誤認してしまったが、噛みついた後は球体に変わり、そのまま狼を体の中に取り込んでいく。
それはゲーム序盤によく見る、所謂スライムだった。
***
「いや、こんなバカでかいスライムいないから」
何事かと集まってきたユズキと八咫。
スライムに助けられた事を話すと、八咫がこれはスライムではないと言ってきた。
とはいえこれがスライムでないのなら一体何なのか。
因みに今スライムは俺が放り投げた魚をバクンと食べてます。
初めは食べるたびに体が口に変わるのを驚いていたが、今はもう慣れたものだ。
「でも、スライムでなければ何なんだ?」
「さぁな。本来スライムってのはもっと小さいし、動きもおせぇ。狼を捕食するスライムなんざ聞いたこともねぇ」
「へぇ、そうなんだ。因みにスライムの亜種って可能性は?」
「あり得ねぇな。種類によっては大きいスライムもいるにはいるが、こんな綺麗な水色じゃねぇ。基本水色のスライムは小さかったはずだぜ」
「ふぅん、じゃあ何なんだろうね、この子」
へぇ、珍しいスライムなんだな、こいつ。
あ、スライムかどうかすら分からないのか。
まぁどっからどう見てもスライムなんだが。
とはいえ、大きさは確かに大きい。
狼に襲い掛かってた時はまだ小さかったが、狼を取り込んでから俺の膝までの大きさに、魚を食べてから腰までの大きさになっている。
「ん?こいつって契約出来るのか?」
「え、契約?出来るんじゃない?なんか懐いてるし」
違うぞ、こいつは懐いている訳ではないぞ。
水色の触手が手に絡みついているがこれは懐いているからではない。
エサの催促だ。
ハイハイ、しっかり食べて大きくなるんだよー。
「いや、ペットじゃねえんだからよ。ってかお前、『契約』ってことはジョブは『調教師』か?」
「うん、そうだよー」
「・・・・・・」
ユズキが何か言いたそうな目でこちらを見ているが気にしない。
ま、似たようなものだろうし、ジョブの情報は切り札にもなるらしいからな。
「いや、あのよ。流石に今までの付き合いでお前が嘘ついてるかぐらいは分かるぞ」
「何!」
「何心底驚いてんだよ!、どんだけ馬鹿にしてんだ!」
「悪い悪い、ジョークジョーク」
「てめぇ真顔だからジョークか真剣か分かりずれぇんだよ!」
いやぁ、返しが面白いからついついからかってしまうな。
さて、それよりもこのスライムだ。
「契約」
スキルを使用すると、スライムの情報と契約するかどうかの選択肢が表示される。
『はい』を選択すると表示が消えるのだが、スライムと契約したという表示が出てこない。
多分バルムンクの時と同じで、相手の了承を得ないといけないのだろう。
つまり交渉しないといけない訳だ。
「えーと、『すぃ』が名前であっているか?」
こくっ
おお、魚を口に入れながら頷いたぞ。
取りあえずこちらの言葉は理解してくれてるようだ。
「今から契約したいんだが、俺としてくれるか?」
・・・・・・
おや、反応がない。
いや、違う。残りの魚に釘付けだ。
「あー、残りの魚なら食べていいぞ」
『すぃと契約しました』
・・・・・・はたしてこれでいいのだろうか。
というかこれは契約というよりも餌付けというんじゃ。
「ぶ、はははは!なんだそりゃ!餌付けじゃねぇか!」
「・・・・・・」
あれ、ユズキからは反応が・・・・・・肩を震わせてる。
「で、そいつの種族は結局何なんだよ」
「えーと、ちょっと待って」
ステータスウィンドウを表示して契約対象欄を見ていく。
しっかりと『すぃ』という名が表示されてたのでそれをタッチすると——
「・・・・・・」
「おい、どうした?」
「八咫、お前の言う通り、スライムではなかったよ」
「お、そうなのかよ。で、結局何なんだ」
「ウィンディーネだそうだ」
『・・・・・・』
それまで笑っていた二人とも唖然としてすぃを見ている。
ただ俺はそんな事を気にする余裕すらなかった。
二人には見えてなかったが、俺のウィンドウにはハッキリと表示されていたからだ。
『すぃ LV70 種族 ウィンディーネ ディノス坑道レイドボス』
お前もか・・・・・・




