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釣り時々煽り

「へへ、どうだルーキー!俺は4匹だぜ!」


「あ、すいません、先輩。俺7匹」


「あ、私6匹」


「......」



えー、只今絶賛釣り真っ最中でございます。

ルミナリア樹海の湖で、3人で釣り上げた数を競って勝負中です。



「あーあ、また負けちゃったよ。何でいっつも釣りで勝てないんだろ」



それはですね、あなたが釣りの最中


『えへへぇ、やっぱり刺身かな。それとも海鮮丼なんてのもいいかも。でも折角だから串焼きで丸ごとってのもいいよね!じゅるり』


欲望丸出しでやってるからだと思いますよ。

そりゃ魚も寄ってこないでしょ。

まぁ、それでも6匹釣り上げてるところは流石というか。



「ちきしょう!また負けただと!何で俺の時は来ないんだよ!スキルでも使ってんのか?」



こちらは負け越してて随分熱くなってる。

イライラししたり貧乏揺すりしながら釣りしてる時点でもう負けてんのよね。


後スキルなんて使ってませんよ。

言いがかりはやめていただきたい。



「ほらほら、先輩!そろそろ実力を見せてくださいよ」


「ぐっ、この!あ、ああ、見てやがれ!次こそは!」


「いやいや、十分釣れたしそろそろ飯にしよう」


「えー、勝ち逃げズルいよ!」


「そうだぜ!もう一回だ。次はお前の場所でやらせてもらうからな」



いや、あんた。

そこはさっきあんたが2匹しか釣れずに場所交代した所ですよ。


あとユズキ、煽るのはほどほどにな。

反応が面白いからついつい煽るのは分かるけど。


釣りを十分に満喫したからそろそろ飯にしてユグドラに戻りたいんだが。

釣道具も返さないといけないしな。



(やれやれ、これはもうしばらく続きそうだな)



全く、一体どうしてこうなったのか――



***



「よぉ、なかなかやるじゃねぇかルーキー」



ミノタウロスを何とか倒し、一息ついてる時だった。

急に木の上から飛び降りて来てこちらに向かって歩み寄ってくる男性トラベラー。


黒髪のオールバックで、顔には紫の刺繍が入っている。

うん、怖い。



『・・・・・・』


「おいおい、だんまりか。まぁ警戒もするか。俺は八咫だ。お前らは」


「シズだ・・・・・・ん、八咫?」


「私はユズキだよ。ほら、シズ。この前噂になった人だよ」


「ん、それって平原でモンスターに殺された迷惑プレイヤーの?」


「そそ、多分それ」


「あのな、お前ら。せめて本人に聞こえないように話してくれねぇかな」


「あ、ああすまん。それで、何かようか?」


「いやいや、面白いもん見せてもらったからな。礼を言いに来たんだよ」


「あぁ、そうなのか。そりゃどうも。ってか見てたんだな」


「ああ、手伝おうとも思ったが、面白い事になってたからな」



面白い事というのはミノタウロス戦の事か?

いや、決して面白くはなかったと思うんだが。



「ねぇ、一つだけ聞いていい?」


「ん、ユズキだったな。なんだ?」


「あのミノタウロスってあなたの仕業かな?」


「いや、違う」



急にユズキがそんな事を聞く事にも驚いたが、八咫がはっきりと否定してくる事にも驚いた。

ユズキが考えている事はMPKの事だろう。

さっきのミノタウロスはイベントにしたって強さが桁外れだった。


とてもこの樹海に本来生息しているモンスターとは思えなかった。

まだ他の地域から連れてこられた方が納得がいくか。



「ありゃディノス坑道で出てくるミノタウロスの亜種だ」


「亜種?」


「ああ、武器持ってなかっただろ。稀にいるんだよ。他の武器持ちより動きは速いし隙は無い。出会った当初は苦労したぜぇ」


「なんでそんなのが樹海に?」


「知るか。イベントでも聞いたことがねぇ」



ふむ、イベントではないのか。

いや、他の人が知らないだけで、イベントである可能性もあるのか。

この目の前の男の話を信じるのならだが。



「俺からもいいか?」


「なんだ?」


「お前らのジョブは何だ?」


「ジョブ?俺は——」


「ちょっと、シズ」


「ん?」



急に引っ張られる。

何だろう、何かマズかっただろうか。



「あのね、一応ジョブやスキルとかの情報は対人戦の時に重要な武器だからさ。ある程度は隠しておいたほうがいいよ」


「そんなもんか。別に俺は良いんだが」



対人戦なんかする予定ないし。

喧嘩売られたら逃げるし。

そもそもサモナーなのにサモナーの戦い中々できないし。



「ま、それが普通だわな。とはいえあのミノタウロスの討伐推奨レベルは30だ。いくらルミナリア樹海でレベル上げようが、普通はダメージを与えられねぇもんなんだよ。だから何のジョブか気になったんだが。ま、言いたくなけりゃいいわ」


「あ、だったらさ——」



***



そこから釣りに最適な場所を教えてもらい、釣りをしながら情報を公開した。

ある程度スキルの情報は伏せて話したが、八咫も特に気にしてはいない様だった。

まぁバレたところでそこまで痛手にはならないしな。


そこまでは良かったのだ。そこまでは。

そこから何故か釣り大会が始まり、1位は3位からなんでも聞いてよいというルールの元、4試合行われた。


最初は和やかに進んでいたのだ。

最初俺が優勝して、ユズキが2位、八咫が3位だった。

そして2回戦も同じ結果になったあたりから雲行きが怪しくなり、3回戦も同じ結果になったあたりで八咫がキレた。


まあそれもそうだろう。

1位が3位に質問する内容が


「彼氏はいるんですか」

「町で悪さした時どんな気持ちでしたか」

「いい年して人に迷惑かけて恥ずかしくないんですか」


といったおおよそゲームとは関係ない、めちゃくちゃ煽る内容なんだから。

因みに回答がこれ。


「いるか!つーか彼氏!彼女だろうが!誰がホモだ!」

「ぐっ、何だその質問は!楽しかったともさ。ああ、愉快だったさ。決して恥ずかしくなんかないんだからな!」

「やかましぃ!うるせぇな!いいだろ別に!」


といった感じの今どきのキレる若者感丸出しの回答だった。

まぁ話していく中で八咫の人となりを知ったうえでの絡みだ。

キレてPKしてくるような輩だったら流石にこんな話は出来ない。


「ってか、ゲームの攻略やらスキルの話じゃねぇのかよ」


「いや、聞いてしまったら面白みが減るじゃないか」



それを聞いてしまったらイベントなりスキルなりを知った時の感動が減ってしまう。

だったら笑いがある話がいい。



「んで、次は何を聞くんだ?いい加減何かまともなことを聞いてくれ」



おっと、少しからかい過ぎたようだ。

そうだな、折角だしあれを聞いておくか。



「それじゃあ平原でやられた時の話を教えてくれないか?」


「あ、それは私も聞きたい!」


「ああ、あの話か」



見るからに嫌そうな顔をする。



「つっても噂は流れてるだろ」


「じゃあ、確認していくけど、八咫烏はギルドメンバーと一緒に夜中に平原にいたんだよね」


「ああ」


「正直全滅した時何で全滅したんだろうって思ったんだけど、モンスターに近づかれても気づかなかったの」


「・・・・・・ああ、そうだ。急にメンバーの一人が吹っ飛びHPが0になった。俺たちは急な出来事だったんで反応できなかった。索敵が得意なやつもいたが、そいつのスキルにも引っかからなかったみたいだ」


「へぇ、高レベルプレイヤーの索敵スキルでもか・・・・・・」


「モンスターが変身するって話もあったよな。あれは何なんだ?」


「やられたメンバーの姿になって襲い掛かってきやがったんだよ。HP0になって退場したのに笑顔で襲ってくるんだぜ。何が起こってたのかさっぱり分からなかった」



確かにそれは混乱しても仕方がないだろう。

そもそもその話を聞く限りだとギルドメンバーが怪しくなってくるよな。



「そもそもそれはモンスターだったのか?」


「さぁな。対象者を追跡するスキルを使ったのに全くの無意味だった。おまけに実力も上ときた。正直二度と戦いたくねぇ」



下手したらメンバーとの関係まで悪化する敵なのだ。

おまけに強いときた。

確かに、好んで戦いたいとは思わないな。



「全く、ギルドメンバーもギスギスしてて面倒なんでな。逃げて来た」



疲れたように笑う顔が、妙に印象的だった。

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