新たな出会い
「はぁ、お前たちはいつも賑やかだな」
「ふふ、元気でいいじゃないですか、佳奈美さん」
「————」
ワッフル談義も一段落して、黒蜜バターワッフルと生姜湯を楽しんでいると、佳奈美さんが知り合いを連れて来店して来た。
一人はピシッとしたスーツ姿で、ザ・キャリアウーマンって印象の眼鏡の似合う女性だ。
もう一人は学校の制服を着ている、手にタブレットを持った女の子だ。
見たことのない制服なので近くの学校ではないのだろう。
「一応紹介しておくか。こいつは浦原恵真、私の学生の頃の友人だ」
「どうも、よろしくお願いしますね」
そう言って紹介されたのはスーツの女性だ。
見た目は硬そうな性格の人ではあるのだが、そんなこともなく物腰の柔らかい人のようだ。
「......友達いたんですなぁ」
「葵ィ!」
「あだだだだ!」
本当に地雷を踏み抜くやつだな。
佳奈美さん相手に年齢と友人と学生時代の話はNGだろうに。
「紫月ィ、何か失礼なことを考えてないか?」
「......はは、まさか」
何でこうも女性というものは勘がさえわたっているのだろうか。
さ、余計なことを考えないで皿洗おう。
「ハァ。んで、このちっこいのは赤根恵梨香だ」
ペコッ
次に紹介されたのは背の低い女の子だ。
俺達の中で1番背の低い千鶴と同じぐらいだろうか。
スッ
目の前に出されるタブレットには「よろしくお願いします」と書かれている。
恥ずかしがりやなのか、それとも話せないのか。
どちらかは分からないが、それを今聞く必要はないだろう。
「俺は浅間紫月だ。よろしく」
「私は秋津原柚。よろしくね」
「私は坂巻茜だよ」
「坂巻千鶴です」
「俺は松咲薫だ。よろしくな」
「私は椎名恵です。よろしくお願いしますね」
「自分は新島葵でごさるよ」
それぞれに自己紹介をしていく。
「恵真が今年から引っ越して来ててな。恵梨香は来週から一緒に学ぶことになる。学年は坂巻姉妹と一緒だな。ま、仲良くしてやってくれ」
「へぇ、私達と同じなんだ。よろしくね」
「よろしく」
ペコッ
若干千鶴が人見知りを発動しているが、まぁその内慣れるだろ。
問題は、
「転校生キタコレー!」
「お、新しい後輩か。仲良くしようぜ」
男性陣か。
まぁ、二人ともふざけることはあっても、相手が本当に嫌がることはしないから心配してはいないが。
「お、来たね。奥に座りなよ」
玄さんが台所から出てきて浦原さんと赤根さんを席に案内する。
佳奈美さんはついて行かずに残っているけど、何か用だろうか。
「さて、少しお前たちに頼みたいことがある」
二人が奥の席に着いたのを確認した後で俺たちに話しかけてくる。
「恵梨香の事についてだ。彼女は話すことが出来ずにああやってタブレットを使って意思疎通をしている。学校で何かとトラブルがあるかもしれん。出来る限りでいいから面倒見てやってほしい」
実に簡潔に要点だけを伝えてくる。
要は転校生の面倒を見ればいいのだろう。
「お任せくだせぇ、彼女は拙者が責任もって腐女子に、アダダダダ!」
「お・ま・えは余計なことをするなよぉ!」
「分かってます、分かってますとも、アダダ、普通に接するだけに、アダダダ、とどめますからぁ!」
ま、あれで面倒見はいいやつだから心配はないだろう。・・・・・・多分。
「ま、実際付き合いが多くなるのは茜と千鶴だろぅ。そんな心配することもねぇんじゃねえの」
「そうですね。この二人ならそんなに心配ありませんね」
「任せといてよ!伊達に子供の面倒を見てないよ」
「頑張る」
「千鶴、そんなに緊張しなくていいんだよ。いつも通りでいいんだから」
若干硬い千鶴に柚はフォローしている。
確かに今後赤根さんと付き合いが増えるのは坂巻姉妹だろう。
俺たちは学年が違うから面倒見るにしても限界があるからな。
まあ、こうやって喫茶店に来るぐらいだったら俺も気を配るぐらいの事は出来る。
もし来ることがあればワッフルでもサービスしてやるか。
***
「いい子たちですね」
「だろ。自慢の生徒だ」
「ふふ、佳奈美さんが「何も心配はいらない」と言っていた意味が分かりましたよ」
「あの子たちは佳奈美がしっかりと教育してるからね」
「ふん。お前ら二人が町から出て行ったから、面倒見る奴が私しかいなかったんだから」
「悪いと思っていますよ。ま、これで何も心配はありませんね」
「私もちゃんと面倒見るんだ。心配するな」
「はい、お願いしますね。ほら、恵梨香も」
ペコッ
「ま、最初は緊張するだろうが、心配する必要はない。あいつらも頼りになる先輩だし、話せないことを気にするような連中でもない。何か困ったことがあったら相談するといい。もちろん私も出来る限り協力させてもらおう」
————よろしくお願いします。
「ああ、よろしく頼む」
「はぁ、全く。頼りにはなるんだけどもう少し女性らしい喋り方を————」
「うるさいな。オンオフしっかりしてるんだしいいだろうが。だいたい————」
「はは、佳奈美さんのオンオフは詐欺レベルで変わりますからね。私も————」
赤根恵梨香は、3人の話を聞きながら、楽しそうに笑って騒いでいるカウンター側の席を眺めていた。




