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カンパネルラ


カルミナ平原を物凄いスピードで移動している影が2つ。


「いやぁ、クウネル殿とお出かけなんて、久しぶりでござるよ」


一人はホビット族の小さい身なりに長い鼻の男、カンパネルラ。


「全く、久しぶりにログインして来て、連絡よこしたと思ったら急に狩りに行きたいとか言い出して、一体何だってんだ」


もう一人は鍛冶用のエプロンを身に着けた人族の男、クウネル。


「だから言ってるでござろう、狩りでござるよ、狩り」

「経緯を説明しろって言っているんだ!」


遂にカルミナ平原を抜けてルミナリア樹海に差し掛かる。


クウネルは今日、赤夜叉から頼まれていたタワーシールドの補修作業をするつもりだった。

自分の工房で色々と準備をしていたら、急に久しいフレンドからチャットが届いてきたので、何事かと思ったていたら、


『狩りに行くでござるよ!急ぎ、噴水広場までこられたし』


と書かれてあった。


タワーシルドの補修作業は急ぎではなかったので、久しぶりに一緒に狩りに出ようかと噴水広場まで来たら開口一番、


「遅いでござる、時間は待ってはくれないですぞ!」


等と言い出すものだから蹴りを入れてやったら素直に


「ごめんなさい。久しぶりなので狩りに付き合ってもらえませんか?」


と言って来た。やっぱり人間素直が一番だ。

で、狩りに付き合う代わりに、自分も素材収拾に付き合ってもらうことにした。


目的はディノス坑道。

ルミナリア樹海を抜けた先にあるディノスの谷にある坑道。

鉱石が欲しかったので、近場の坑道まで出てきたということだ。


「いやぁ、今日久しぶりに喫茶店に行って、紫月氏と柚氏に会いましてなぁ。一緒にリヴィエラをやることになったのでござるよ。久しぶりだから腕慣らしをしておきたくなりましてなぁ」

「お前の腕なら一人でも大丈夫だろうが」

「一人は寂しいではござらんか。それに、外は何かと危険でござるからなぁ。『マルチウェポン』殿が一緒だと心強いでござるよ」

「PKなんて、それこそ余裕だろうが。『無音』様よぉ」

「いやまぁ、久しぶりなのだし、クウネルとも久しく旅してなかったからなぁ。たまにはいいではござらぬか」


カンパネルラは、ある時期を境にリヴィエラにログインしなくなった。

そして、『牙』が解散したこともリアルで知ったのだ。

クウネルがリヴィエラで一人で活動していた事を知っていたカンパネルラは、久しぶりに狩りに誘ったのだ。



「しかし、いつまでついて来てるつもりでござるかな」


後ろから気配を隠しながら何人かがついて来ていた。


「俺らをPKするつもりなんだろうさ」

「迎撃しますかな?」

「大丈夫なのか?相手も俺たちのスピードに一応ついて来ているからそれなりの実力はあると思うぞ」


いくらブランクがあるとはいっても自分たちは攻略組として最前線で活躍していたのだ。

それなりに高いステータスを有している。それについてこれているということは、相手もそれなりに戦えるということだ。


「それに、お前紫月たちと後で遊ぶんだろ?時間大丈夫なのか?」

「なに、そんなに時間はかからぬでしょうよ。どうせ前衛職しかいないでしょうからそんなに警戒することもないですし、途中からついてくるのに必死になって気配を消すのを忘れてるぐらいですからなぁ」

「そうかい。じゃあ腕が落ちてないかお手並み拝見と行こうかね」

「ムフフ、任せるでござるよ。それじゃあ坑道で始末しますかな」

「あいよっ」


遊びに行くかのような気軽さで坑道まで一気に突っ切っていく。



***



「クッソ、化け物が!」


ロドリーは走りながら毒ずく。目の前を爆走していく2名を見てそんな言葉を吐かずにはいられなかった。

速さを追求した装備品を揃えているのに、ジョブもスキルも揃えているのに——


(何で近づけねんだよぉぉ!)


ギルド『影狼』の中でも上位の速さで、それなりの自信があった。

二軍のリーダになれたのも、この速さによるものが大きかった。

そりゃ上には上がいるし、ギルド内でも自分より強い奴なんてゴロゴロいる。

リーダーと言っても二軍だし、それも寄せ集めのパーティーではあるが。

だが速さだけなら、だれにも負けられないと思っていたのに——


(どうする、手がないわけではない。俺だけでも近づくか?)


「お、奴らディノス坑道に入るようだぜ!袋の鼠だ!」


後ろでパーティのメンバーが意気揚々としているが、何故誘われているという選択肢が出てこないのか。

今俺たちのパーティーは前衛職の連中しかいない。

魔法職の連中はこの速さについてこれなかった。


(分裂させられたか、っち、どうするか。相手は明らかに格上だ。2軍の俺らの強さじゃ到底かなわない)


気配は恐らく気づかれているだろう。

恐らく俺たちを離すこともできるはず。

だというのにつかず離れずの距離を維持しているというのは——


(ったく、だから俺にパーティの指揮なんて無理なんだって言ったんだ)


自分たちの勝ちを疑う事のないパーティーメンバーを見ながら、ため息をつく。



***



「お、来た来た」

「それじゃあ、始めるでござるか。とは言っても拙者は後ろからチマチマ嫌がらせをするだけでござるが」

「ああ、思う存分嫌がらせをしてやってくれ」


カンパネルラは楽器武器『無色のフルート』を取り出す。

カンパネルラの一次ジョブは吟遊詩人。

反対にクウネルは何の装備も出さない。

クウネルの一次ジョブはマルチウェポン。


『牙』の『マルチウェポン』と『無音』の久々の共闘が、今始まる——

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