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空っぽ

アノス道具店を後にして、それぞれの買い物も済んで、Gardenに戻ってきた。戻ってきたのだが……


「むぅ、少しぐらいいいではないか!」

「ダメです!これは私の役割です!」

「そなたばかりずるいではないか!!」

「だったらあなたもすればいいでしょう!!」

「ええい、頑固者めぇ!!!」

「あなたこそ我儘です!!!」

「私だって少しくらいしたいのだ!!!!」

「十分やっているでしょう!!!!」



『……』


うん、どうやら取り込み中のようだ。

珍しい事だがマザーとバルムンクが言い争いをしているらしい。

入り口で、まだ入っても居ないのに声がとんでくるのだから。


「よし、後にするか……」

「そうだね……」

「賛成……」


とりあえず町の噴水広場にまで戻ってきた。

話題になるのは先程の喧嘩だ。


「でもさぁ、随分大声で喧嘩してたよね」

「そうだな。珍しい事もあるもんだ」

「そうだよね、マザーさんの他に人がいるなんてさ」


ん?


「そうですね。マザーさんと私たちしかいないと思っていました」

「……少なくとも後二人、女性がいるっぽい」

「そうだね。まあほとぼりが冷めたころに戻ればいいかもね」

「そうするしかないかぁ、でもかなり言い合ってたからなぁ。険悪なムードじゃないといいなぁ」


ああ、そうか。ここにきてようやく分かった。このメンバーはまだマザーとバルムンクの正体を知らないのだ。だから先程の声がマザーとバルムンクのものだとは分からなかったのか。

確かに正体を知らなかったら今の声が二人のものだとは気づかないわなぁ。ましてや片方は首のないデュラハンだと思われているんだ。声なんて出るわけがない。


どうするか。二人の事を話しても別に問題ないかもしれない。別に内緒にしておいてくれとも言われていないし。俺にバレてからは特に隠そうともしなくなったようだし。

とはいえ、ここで話してしまったら何で隠していた二人の秘密を知りえたかを話さないといけない訳で。そんな事を話そうものなら、その場で何と言われることか。


風呂の事を話さず、偶然見てしまったことにすれば何も問題ない事に気づいたのは、それからしばらくたった頃だった。



***



そうしてGardenに帰らず、次に訪れた場所は以前ユズキとゴブリン狩りをした平原だった。

何とこの平原、カルミナ平原と呼ばれているのだが、以前話題になった『八咫烏』が謎のモンスターに襲われた場所なんだそうだ。凄い偶然だ。とはいえ、あれ以降謎のモンスターが現れたという報告はないらしく、出会う心配はないようだ。


「じゃあ、シズにぃ、ユズキねぇ、イインチョー、準備はいい?」

「ああ、いいぞ」

「うん、私も大丈夫だよ」

「私は少し自信ないのですが」

「この5人での戦闘は初。上手くいかなくて当たり前。前の時とあまり変わらないから、気負わなくていい」


5人のパーティーで戦ってみようという話になったので、カルミナ平原にやってきたのだが、どうやらイインチョーは緊張しているようだ。それをセンが気にしないようにとフォローしている。引っ込み思案だったセンも今では大分前にでて話すようになってきた。いい傾向だと思う。


因みに、ユズキ達4人は以前、パーティーを組んで戦ったことがあるのだそうだ。資金調達と戦いに慣れることが目的だったらしいが、ユズキはともかくイインチョーはあまり上手くいかなかったらしい。前衛で戦うユズキとシハンを回復させる役割であるイインチョーがテンパってしまって回復が遅れたこともあったみたいだ。


ゲームなんだからそこまで気にする必要はないと思うんだが、イインチョーは真面目だからなぁ。向き不向きもあるんだし、そんなに無理しなくても別にいいとは思うのだが、本人は以前と同じ失敗をしないようにと、緊張しっぱなしだ。

まあ、今回は俺も後衛にいるんだし、サポートに回ってイインチョーに負担にならないように立ち回ることにするか。


「お、いたいた。ゴブリン3体とファニーラビット2体か。私が敵を引き付けるから、シズにぃが召喚したバルムンクが後衛をブロックして、引き付けられたモンスターをユズキねぇが殲滅して。イインチョーとシズにぃはフォローよろしく。後はセン、任せたよ」

「ん」


センが頷くのをみてシハンはゴブリンに向かっていく。


「さて、俺もバルムンクを召喚するか」

「ん、準備する」


センと頷き合い、そのままバルムンクを召喚する。


『召喚!バルムンク!』



***




「ええい、そなたも話の分からぬ奴だな。少しくらい私が暴れてもいいではないか!!」

「ダメです!そもそも契約したのは私なんですよ!!」

「1回くらい、私がバルムンクを着ても良いではないか!!!!」

「いいわけないでしょう!!サイズも違いますし、そもそもあなた手加減なんて出来ないではないですか!!!!」

「何を言うか!!以前の『八咫烏』の時もしっかり手加減していただろう!!!!」

「熟練のトラベラー相手を軽々と吹き飛ばしておきながら何を言っているんですか!!!!」

「いいじゃないか、たまには外に出て思いっきり体を動かしたいのだ!!!!!」

「だから、あなたが体を思いっきり動かしたらシャレにならないのだと言っているでしょう!!!!!」

「むぐぐぐぐぐ!!!!!!」

「むぎぎぎぎぎ!!!!!!」


ヒュィィィィィン


「む、何の音だ?」

「はい?そんなの召喚術を使われた際の音に決まって…」


バシュゥゥゥン!!



『あ……』



***



「……あるぇ?」


目の前で起きた事が理解できず、つい気の抜けた声が出てしまう。

確かに俺は『召喚』のスキルを使ってバルムンクを呼び出そうとした。

スキルもちゃんと発動して、召喚の魔法陣も地面に描かれたのだ。

だから後はバルムンクが出てくるのを待っていたのだが。


なんで脱ぎ散らかされたバルムンクの鎧が転がっているのでしょうか?


「中身はどうしたぁぁぁぁぁ!!!!!」

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