情報屋
あれから皆が戻ってくるまでの間、俺は代理人のスキルについて考えていた。
婆さんの仕事の手伝いをしていこうと考えていた手前、何か使えそうなスキルがないか見ていた。
俺のレベルはサモナーと代理人が5になっている。
サモナーのスキルはある程度候補があるが、今後の敵の傾向に合わせて取っていこうと思う。
問題は代理人だ。
(何も、無い?)
本来取得できるスキルが表示されるはずが、全く表示されない。
スキルポイントは7だ。最初3ポインあって、レベルが上がったことによってポイントも増えたんだろう。ただ、いくらポイントが増えても取得できるスキルが何もないのでは意味がない。
(婆さんに聞いてみるしかないな)
そう思ったところで、連絡が入る。
『シズにぃ、ようやく真相が分かったよ』
「お、良かったじゃないか」
『うん、今から戻って話すつもり。情報屋もお礼を言いたいらしいから一緒に連れて行っていいかな?』
「情報屋も?まあいいと思うぞ」
『分かった。じゃあ今から向かうね』
***
連絡を受けて一時経つと、シハンたちが戻ってくる。
(おい、まさか情報屋ってその人か!?)
シハンたちの後ろにはサングラスにスキンヘッドのおじさんが。
恐らくあの人が情報屋なんだろう。
全員が揃い、改まって自己紹介が行われる。
「どうも、こんばんわ。私は道草と申します。本日はお招き頂き誠にありがとうございます」
「かたいよー、道草さん。真相も解明したんだしさ。今日は無礼講だよ!」
「シハンさん、そうは参りませんよ」
「シズにぃ、この人がさっき話した情報屋の道草さんだよ」
「ああ、どうも。シズです。よろしくお願いします」
「これはどうもご丁寧に。あなたがシズさんですか。シハンさんの話通りですね。この度は貴重な情報を提供していただき誠にありがとうございます」
見た目に反して、物腰のが柔らかく丁寧な人だ。
そしてシハンよ、どんな風に俺を説明をしたんだ?何で顔を背ける?
「感謝されても困りますよ。情報というより、ただの思い付きでしたから」
「いえ、思い付きであったとしても、真相解明の切っ掛けになったのです。ありがとうございました」
「まあ、真相解明の役に立てたのならば幸いです」
「はい、無事今回の騒動の真相を明らかにできました。ではこれから説明させてもらいます」
それから道草さんが簡潔に事の顛末を語ってくれる。
襲われたのは八咫烏のギルドメンバー14名。
襲われる前に、町の道具屋から道具を盗んだらしい。
以前道具屋が店を閉めていた時に、八咫烏のリーダーが難癖をつけ、町の兵士に連行されたらしい。
今回はその復讐のつもりだったようだ。
結局モンスターに襲われ、道具をロストしてしまったようだが。
「皆新手のモンスターに意識を向けてましたからね。八咫烏のメンバーが何かしたのでは、という発想には至っていなかったのですよ。そこにシズさんからの意見をもらい、八咫烏のメンバーに吐かせ、道具屋を調べたというわけです」
最初八咫烏は、自分たちが道具屋から窃盗をしたことを黙っていたようだ。
だから皆新種のモンスターの方に意識を向けてしまったのだろう。
「結局どんなモンスターか分かったんですか?」
「いえ、八咫烏のメンバーもログを調べたようですけど、モンスターの名前が出てこず、ギルドメンバーにキルされた表記だったようです」
本来敵からの攻撃は、ログには『——からの攻撃、——ダメージ』と表記される。
だから普通はモンスターの名前を確認することが出来るのだが、今回はその例から外れるようだ。
因みに、俺やユズキがNPCを疑っていることは話していない。シハンに話したのはあくまで八咫烏が窃盗をしたのではないかという事だけだ。
「そういえば、八咫烏はなんであの平原にいたんです?」
「ああ、何でギルドホールに戻らなかったのか、でしたね。それは入れなかったからです。彼らは道具屋で以前難癖をつけた際に、ペナルティとして一定時間ギルドホームに入れなくなったらしいです」
「じゃあその時も?」
「そうです。彼らはギルドホームに戻れなかった。だから彼らはあの平原にいたんです」
成る程、日ごろの行いのせいでギルドホームが使用できなかったのか。
その腹いせに道具屋で窃盗したという事だ。そして運悪くモンスターに襲われた。
「なんで平原なんでしょうか?町の宿にでも泊まればいいと思うんですけど」
イインチョーの言う通り、普通であれば町の中の方が安全なんだが、今回はそうもいかない。
「町の住民を信用できなかったんじゃないかな。八咫烏も自分たちに向けられる住民の視線には気づくはずだ。町で騒動を起こして日もそんなに経っていない。町で迷惑行為をした連中が夜中に戻ってきたとなっては、怪しまれるに決まっている。自分たちが疑われるであろうことは予想できたんじゃないかな。だから町の住民の目から逃れる必要があったんだと思うよ」
「成る程、だから町の平原ですか」
「町の外の平原ならモンスターも弱いですからね。プレイヤーも初心者ぐらいです。死ぬ危険性はないと判断したんだと思います」
俺の説明を補足してくれる道草さん。
イインチョーも納得してくれたようだ。
「じゃあ八咫烏が何に襲われたのかは、分からずじまいなわけですね」
「そうですね。条件が町での迷惑行為だった場合調べようとする人もいないですからね」
「実際に調べようとする人たちは出てきていないんですか?」
「何人かはいるようですが、そこまでは。八咫烏の評判が悪い事もあって、そこまで信じられていない様です」
「それは良かった。これでプレイヤーの迷惑行為が増えるようだと困りますからね」
「ええ、全くです」
有り難いことにプレイヤーは謎のモンスターに襲われたという話を信じていないようだ。
町での迷惑行為の被害者となるのは住民たちだ。
噂を調べるために町で迷惑行為をするようなプレイヤーが少なくてよかった。0でないことは残念だが。
***
「さて、シズさんとユズキさんには、何かしらお礼を考えているのですが、何がいいですか?」
「え、私も?」
「はい、皆さん協力してくださいましたので。シハンさん達にはすでにお礼を差し上げています。後はお二人だけです」
「へぇ、ちなみにシハンたちは何貰ったの?」
「私は欲しい装備の情報だね」
「……情報料。道具を買うつもり」
「私はプリーストのスキルについて色々教えてもらいました」
「へぇ」
さすが情報屋。扱ってる情報は多岐にわたるようだ。
アイテムであれ、装備であれ、スキルであれ、聞けば情報を貰えるんだろうな。
さて、何にするか。
「シズ、何にする?」
「そうだなぁ。ユズキは決まったのか?」
「うーん、正直悩んでるんだよね。別にほしい装備があるわけではないし、スキルも私自身が開拓していこうと思ってるから。センと同じように情報料を貰ってアイテム買おうかな」
「情報料ねぇ」
それでもいいんだが、それだと面白くない気がする。
「何でもお聞きいただいて結構ですよ」
何でもか。じゃあ思い切って代理人について聞いてみるかな。
「一つお聞きしたいんですけど、道草さんは二次職の代理人って知ってますか」
「代理人ですか?」
「はい、マザーって婆さんの手伝いをしたら手に入ったんですけど、取得できるスキルが全く表示されないんですよね」
「ほう、スキルがですか」
「はい、情報屋である道草さんなら知っていないかと思ったんですけど」
「ふむ、代理人ですか……。すみません、聞いたことがないですね」
「そうですか……」
「それに、取得できるスキルが全くないって話も聞きません。失礼ですが、バグではないのですか?」
「どうなんでしょうね、スキルポイントは表示されているんで、バグではないと思いたいんですが」
やはり聞いたことがないのだろう。
考えてくれてはいるが、そもそも情報屋である道草さんが知らないほどの事だ。
自分で開拓していくしていくしかないのだろう。
「シズにぃ、バグかもしれないんだったら、他のジョブに変えたら?その方がスキルもとれるし得だよ」
「うーん、でもせっかく婆さんに貰ったジョブだからな。出来ればこのまま進めていきたいんだけど」
バグの事を心配してくれているのは分かるんだが、このジョブには思い入れがある。
この世界で初めて手に入れたジョブだ。極めるつもりでもあったのだ。
スキルがない程度で変えたくはない。バグでなければいいのだが。
「ひょっとするとイベントをクリアすることでスキルが手に入るかもしれません」
「イベントですか?」
「ええ、イベントによってスキルが増えたジョブもあるので、悲観するようなことではないと思います」
気をつかってくれたのだろう。会って間もない道草さんだが、当初抱いていた怖いという印象は既に変わっていた。些細な気配りができる優しい人だ。
確かにイベントによって手に入るかもしれない。
スキルポイントが増えているのなら、取得できるスキルもあるのだろう。
イベントであれ、アイテムであれ、何が切っ掛けか分からないのだ。
「そうですね、色々試してみます。ありがとうございます、道草さん」
「いえいえ、私の方でも情報を集めておきましょう。何かわかったら連絡します」
「はい、お願いします」
***
その後フレンド登録をして、マザーの料理を食べた後、道草さんは帰っていった。
ユズキは結局情報料を貰わず、何か調べ物をお願いしていた。
新たにできた知り合い、道草さん。
是非また話したいものだ。情報屋としての生活なども聞いてみたい。
代理人という謎のジョブ。結局情報を得られなかったが、きっとこれから分かっていくだろう。
だってまだ始めたばかりなのだ。他のジョブに変えてしまうのはもったいない。
Gardenの拠点もあるのだ。初心者の俺にはそれだけでも十分だ。
それに婆さんが無意味なものをくれるとも思えない。きっと何か秘密があるのだろう。
何もなかったら、それはそれで一興だ。
まあでも、一番早く分かる方法をまだ試していない。
「とりあえず、婆さんに聞くか」




