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目一杯楽しむ

「お、来たかい」

「おお、婆さん。こんにち——あぁ、今は夜なのか。こんばんはだな」


久方ぶりのGardenは婆さんが迎えてくれた。

あれからバイトやら勉強やらが忙しく、リヴィエラへのログインは4日ぶりになるのか。


「久しぶりじゃのぉ、元気にしておったえ?」

「あぁ、忙しくてバタバタしてたけど、元気にやってたよ」

「そうかい。それは良かった」

「そう言えば婆さん、前に話した「俺がこの世界で何をしたいのか」、一応考えてきた」

「ああ、あれか。どうも誤解させてしまったようだが、お前さんが自分の好きなようにスキルを取ればいいんじゃないかと、言おうとしたんじゃ。ついつい、余計なことまで話してしまったようだの。すまんかった」


謝ってくる婆さん。正直驚いた。

謝るようなことではなかったし、婆さんの指摘はその通りだと思ってたからだ。


「いや、謝らないでくれ。自分でも気づいていないことに気づけたんだ。感謝しているよ」

「む、そうかの?それならばいいのだが」

「ああ、自分が無意識に考えないようにしていた事やら、将来の事を考えるいい機会だったよ」

「ふむ、まあなんじゃの。お前さんはまだ若いのだ。ゆっくりじっくり考えるといい」

「ああ、そうする」


やっぱりありがたい。

まるで祖母と話しているような安心感がある。

自分の選択が、どのようなものであっとしても、笑顔で見守ってくれてるような、そんな安心感だ。


「前も言ったけど、俺がこのリヴィエラでやりたい事は楽しむことだ」

「ふむ、そう言っていたの」

「ただ、何がやりたいのか、具体的なことは何も浮かばなかった」

「ふむ」


結局、具体的に自分がやりたいことが思い浮かばなかった。

ただ、前に抱いていた焦りは全くない。


「だから俺は知っていこうと思うんだ」

「楽しい事をかえ」

「ああ、この世界にはどんな楽しみがあるのか、他のトラベラーがどんな楽しみを見出しているのか。それを知っていこうと思う」

「ほう」


俺はリヴィエラをゲームとしてとらえていない。一つの世界としてとらえている。

決められたストーリーもなく、住民にも暮らしがある。

そして、この世界には多くの人が暮らしている。

店を経営している人であったり、戦闘に楽しみを見出している人であったり。何かを作っている人だったり。

プレイヤーであれ、住民であれ、それぞれの暮らしがあるのだ。

だから俺は関わっていこうと思う。知っていこうと思う。

子供の頃、俺が柚を理解しようとしていたように。

ユズキやイインチョーだけでなく、他にも多くの人と。


「しかし、この世界には善人だけではない。悪人も当然いる。お前さんが多くの人と関わるのならば、そういった人間とも出会うであろう。その場合はどうするつもりじゃ?」

「まあそういう事もあるだろうけど、俺はあくまで知るだけだよ。自分の楽しみを見つけるためにね」

「中にはトラベラー同士殺し合う者もいる。PKと呼ばれていたな。盗みを働く者だっているのだ。お前さんは、そういった者達と関わっても歪まずにいられるか?」


心配してくれているのだろうか。

正直そこまでは考えていなかった。だが、そういう楽しみ方をしている人はやはりいるのだろう。

以前婆さんが話していた気がする。トラベラーの迷惑行為の話もそうだ。


「そうだな、そういう事に楽しみを見出している人もいるんだろうな」

「そうじゃ。お前さんがそういった者達と関わることで、悪い方に染まることが不安だの」

「心配してくれてありがと。ただ、俺はそういった事に染まることはないよ」

「何故そう言い切れるのだ?」

「だって婆さんも、ユズキ達も嫌がるだろ」

「……」

「婆さんやあいつらが嫌がることはしたくないからな」

「そうかい」


そう、あいつらが嫌がることはしたくない。

俺には心配してくれる婆さんがいるし、相談に乗ってくれる柚がいる。

そんな人たちを裏切ることはしたくない。


「無用な心配だったようだの。お前さんは自分で考えて行動でき、支えてくれる仲間もいるのだの」

「そうだな。それに頼もしいバルムンクもいるし、心配してくれる婆さんもいるんだ。大丈夫だよ」

「そうかい」


安心してくれたようだ。

さて、あともう一つも言っておく必要がある。

これは婆さんにも関わりのあることだからな。


「後は、俺が婆さんから貰った「サモナー」と「代理人」のジョブだな」


折角婆さんと出会ってこの職を得たのだ。極めていくのも一興だ。

代理人に至ってはスキルを一つもとっていない。ないがしろにしてしまっていた。


「俺はこの二つのジョブを極めれるところまで極めてみたいと思う」


婆さんは静かに聞いてくれていた。

やはり安心する。もう忘れてしまったが、親が生きていた頃もこんな感じだったのだろうか。


「ふむ、そうかい。じゃあ私から言える事は一つだけだね」

「?」


何を言われるのかドキドキするが、婆さんの顔を見てその不安が無くなる。

だってすごく優しい笑顔だったから。


「目一杯楽しみなさい」

「ああ」


俺の選択を笑顔で応援してくれる。

その笑顔がとてもありがたかった。


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