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リベンジ

「さてと、始めようか」

「うん!」


再びユグドラ前の平原に立って周囲を見る。

発見できたモンスターはゴブリンが2体とファニーラビットが3体。プレイヤーの姿は見えない。


(ユズキのトラブルメーカー次第では増える可能性はある。今回はモンスターが一箇所に固まってないから各個撃破が狙えるな)


「召喚、バルムンク!」


バルムンクにはGardenを出る際に、戻ってもらっていた。街中でバルムンクを連れて歩いていたら、どんな噂をされるか分かったものではないからだ。

ようやく町の人もこちらの姿に慣れてきてくれているのだ。無用な刺激を与えるのはよろしくない。


「打ち合わせ通り、各個撃破を狙っていこう」

「分かったわ」

「————」


2人とも頷いてくれる。ユズキには申し訳ないが、この平原でトラブルメーカー使ったら際限なくモンスターを呼び寄せる可能性がある。トラブルメーカーの効果時間は2分。その間大量のモンスターと戦い続けるような戦力が今のところない。シハンたちが加われば話は別だが、各個撃破が狙えるのであれば、わざわざモンスターを呼び寄せる必要はない。


「狙うのはバルムンクがゴブリン、ユズキがファニーラビットだな。気づかれないように近づいて一気にやってくれ。俺は周囲警戒してるから、遠慮なくやって来てくれていいぞ」

「うんっ!」

「————」


ユズキもバルムンクもそれぞれのモンスターに向かっていく。

バルムンクは隠密系のスキルを使っているのだろうか。ゴブリンの背後に立っているのに全く気付かれていない。剣を抜くと流石にゴブリンも気づいたようだが、反応する間もなく切り捨てられていた。


(どこの通り魔だよ。怖すぎるだろ、おまえ!)


一部始終見ていた俺としては、こちらの言う事を聞いてくれていることに安心しつつも、相変わらずの強さにため息しか出なかった。あの強さで気配を消せ、背後からばっさりなのだから、敵としては恐怖でしかないだろう。


(バルムンクは問題ないとして、ユズキの方はどうだ?)


ユズキの方を見ると、二体目ファニーラビットに接近していた。気づかれてはいない様だ。どのように戦うんだろうと思っていたが、一気に近づいて背後から切り付けると、一撃でファニーラビットが倒れてしまった。事前に捨て身を使っていたんだろう。流石の攻撃力だ。次のファニーラビットも容易く倒すことが出来た。


(ま、各個撃破の場合は、先に攻撃を当てることが出来れば、この平原のモンスタはーは一撃だからな)


周囲を確認するとモンスターもプレイヤーも見えなかった。


『周囲にモンスターはいないようだ。戻ってきていいぞ』

『了解ー』

『————』


俺はスキル『交信』を使って離れた二人に呼びかけた。二人はそれに従って戻ってきている。

先程の戦闘で俺のレベルが3に、ユズキのレベルが4になっていた。それぞれスキルポイントが増えていたので何かしらスキルを取ることになった。俺が取ったのはこの『交信』と『バインド』の2つだ。


『バインド』は捕縛するスキルだ。消費魔力10でリキャストタイムも10秒だ。俺は戦闘能力が他と比べてないので基本補助系のスキルを覚えていくことにしている。近くに味方が誰もいない時は護身用として使えるし、味方が近くにいるときは、敵の動きを止めることで無力化でき、ユズキとバルムンクの火力で消し去ることが出来る。捕縛の成功率と拘束時間はこちらの知力と対象の精神によって変動してくるようだ。


『交信』は効果時間、対象に自分の思いを伝える事ができるスキルだ。消費MPは20、効果時間は1分だ。ユズキだと会話ができ、バルムンクだと感情が伝わってきた。有り難いのがパーティ全体に効果がある事と、バルムンクの感情が分かる事だろう。今まではバルムンクとは身振り手振りで意思疎通をしていたが、顔がないので感情までは分からなかった。だが、このスキルのおかげで分かるようになった。


(今回バルムンクが抱いているのは期待か。後は何に期待しているのかが分かればいいんだが、そこまでは分からないからな)


バルムンクからは感情しか伝わってこない。会話ができると嬉しいのだが、そんなに都合よくはないだろう。

考え込んでいると二人とも帰ってくる。


「お疲れ様、二人とも。流石だな」

「えへへー、うまくいってよかったよ」

「————」


ユズキは顔がにやけている。今回の成功が嬉しいのだろう。

バルムンクは伝わってくる感情が期待から喜びに変わった。


(褒めてもらいたかったのか?)


そう考えるとこのバルムンクが可愛らしく思えてくるから不思議だ。まぁ中身の性別が分からないから、男相手に可愛いと思っている可能性もあるんだが、どちらでも良いことだ。バルムンクが褒められたいと思い、褒められると嬉しいと感じていることが、今は重要なのだ。


「まあ、今回は奇襲できた上に集団戦じゃなかったからね。トラブルメーカー使ってたらまた違うんだろうね」

「それはそうだろうけどな。ま、成功したんだからいいじゃないか」

「そうだね。それで、シズは何か気づいたことある?」

「そうだな。戦いに関しては特に何もないよ。倒されるリスクもなく、安全に倒せているんだから。ただ、」

「ただ?」

「俺たちのしている事ってただの通り魔殺人だなと思った」

「あー」


そう、これは戦闘ではなく暗殺と呼べるのではないだろうか。確かに個別に戦う際に隙を狙って一気に近づき仕留めるというのは理にかなっている戦い方だと思う。特にユズキは防御が低いのだ。この戦い方の方がリスクがないのだが、俺の思っていたゲームでの戦闘ではなかったので、こんな感想を抱いてしまった。

ユズキも微妙な顔して考えているが、俺と同じことを思ったのだろう。

バルムンクは不思議に思っているようだ。まあ俺たちの感覚だからな。バルムンクにしてみれば、ちゃんと成果が出ていれば問題ないのだろう。


「しかし、この交信は便利だな」

「そうね、敵に聞かれる心配することなく連絡しあえるから助かるわね」

「本来はモンスターとのコミュニケーションの際に使うスキルらしいんだがな」

「便利なスキルなんだからどんどん使っていこう」

「そうだな。ユズキの方はスキル取っていないのか?」

「そうね、取りあえず今あるスキルで戦えているから、きつくなってきてから考えることにしようと思ってる」


確かにその方が無難だろうな。ユズキの場合一撃で倒せているから特に問題はないだろう。


「分かった。さて、どうする?一回だけトラブルメーカー使うか?」

「いいの?」

「いや、流石にあっけないだろうと思ってな。一応リベンジなわけだし、トラブルメーカー用の作戦も考えてあるんだからいいだろう。俺のMPも自然回復で全快しているからサポート可能だ。2分耐え抜けばリベンジ成功だ」

「うん、分かった」


そう言うとユズキは俺から離れていく。俺とバルムンクは一緒に待機している。


「それじゃあいくよ。トラブルメーカー!」


スキルが発動される。どこから現れたのか、ゴブリンがユヅキに向かっていく。モンスターが1体であれば問題ない。


「交信」


俺は後方から援助ができるように『交信』をつかう。俺のMPはレベルが3になったことによって160まで上がっている。


(今回の交信で残りは140。さらに後1回使う事を考えると120か。自然回復は10秒ごとに5づつ回復。今回は2分だから60回復だな。バインドの事を考えると、出来る事なら譲渡は使いたくないが)


考えているとユズキの前に3体のファニーラビットが。


『バルムンク!』

「————!」


バルムンクが敵2体に『死の恐怖』を使う。


「ハァッ!」


一体はユズキが仕留められるから、攻撃を食らわないように他2体を引き付ける。


「————」


3体引き付けても良かったんだが、バルムンクのMPも無限ではないから温存させておく必要がある。ただ、バルムンクであればそんなにダメージを受けずに、1体ずつ確実に仕留められるし、ユズキの余裕も出てくる。


『この、また!シズ、ゴブリン3体!』


出てくるのは3体のゴブリン。


「バインド!」

『ありがと、シズ!』


俺がバインドで縛っている間に他の2体を切る付ける。1体から攻撃を受けたようだが、まだ許容範囲内だ。


「————」


バルムンクもファニーラビットを始末し終えたようだ。

次に出てきたのはゴブリン2体、ファニーラビット3体。



「バルムンク、ファニーラビット3体だ!バインド!」

「————!」


基本的に俺たちの戦いはユズキにダメージが入らないように工夫する必要がある。ユズキは1体だけならゴブリンとファニーラビット相手に無傷で対処できる。問題は複数で当たった時だ。出来るだけ1対1の状況をつくる必要がある。


「交信!」


1分経ったので交信の効果が切れる。


『1分切った。このペースならいけるぞ!最後まで油断するなよ!』

『うん!』

『————』


5体のファニーラビットも俺が1体封じ、バルムンクが3体引き付けてユズキが1体を倒した後に、封じてる方も倒す。

次に出てくるのは6体のゴブリン。


(残り20秒、行ける!)


そう確信した時だった。


『————!』


急に感じたバルムンクの焦り。


(しまった!バルムンクのMPがあとわずかだ!)


このままではユズキが6体相手に戦う事になる。流石にユズキだけでは凌げないだろう。


「譲渡!」


俺はまずバルムンクに譲渡を使う。


「————!」


バルムンクはすかさず『死の恐怖』を使ってモンスターを引き付けるのだが。


(モンスター2体分か。どうする。あと一回譲渡するか。それともバインドか。譲渡を使っても死の恐怖を使える分のMPが足りていない。バインドを使っても止めれるのは1対のみ。だったら!)


『ユズキ、バルムンクのMPが切れた!こっちに来い、俺と合流だ!』

『分かった』

『バルムンク、2体頼む』

『————!』


「譲渡!」


俺はユズキに向かいながら譲渡を使う。俺が選択したのはユズキだ。俺のMPは少ないが、HPには余裕があるのだ。


(被弾1発分は稼いだ、後は俺が囮になればその間にユズキが倒せる)


ポーションを飲んでHPを回復させながら、ユズキと合流する。

バルムンクも突っ込むが、2体引き付けただけで、4体はこちらに向かってくる。


「俺が囮になる。防御してるからさっさと倒してくれ」

「わかった」


ゴブリンが来る。都合のいいことに俺の方に2体、ユズキの方にも2体だ。

ゴブリンのこん棒を必死に杖で防ぐ。


「ちぃ、重」


何度も打ち付けられるこん棒を必死に防ぐ。それでも何とか耐えていると


「ごめん、お待たせ!」


そう言ってユズキが戻ってきて1体切り付ける。


(あと1体だ)


油断したせいだろう。ゴブリンのこん棒を受ける時に足の踏ん張りがきかずに飛ばされてしまう。


「っぐ」


尻もちをついてしまう。一気に近づいてくるゴブリン。


「まずっ!」


慌てて起き上がるが、防御が間に合わない。来るであろうこん棒の一撃をただゆっくりと見ていた。

だが、次の瞬間、


ザシュッ!


ゴブリンの腹から剣が突き出す。バルムンクの剣だ。


「————」


いつの間にかゴブリンの後ろに立っているバルムンク。どうやら助かったようだ。

交信の効果が終わる。恐らくトラブルメーカーの効果も終わったのだろう。

モンスターも現れなくなった


「ありがとう、バルムンク。助かったよ」

「————」


交信を使ってないから感情が分からないが、恐らく喜んでいるんだろう。


「ユズキもお疲れ様」

「……」


どうしたんだろう。まだ実感がないのだろうか?

そう思った瞬間。


「やったぁぁぁぁ!」

「うおっ」


急に抱き着いてくるユズキ。


「やったよ、シズ!あたし達勝ったんだよ!」

「そ、そうだな。勝ったな」

「嬉しい!リベンジ成功だよ!」

「あ、ああ。やったな」


急なテンションだったので戸惑ってしまったが、徐々に実感が湧いてくる。


(そうだな。勝ったんだな)


不思議な充足感だった。バイトの時の充足感ともまた違う不思議な感覚。疲れているのに無性に嬉しいのは皆と勝てたからだろうか。装備買って、戦術ねって、声掛けあっって。そんなことを繰り返しながら一つの目標を達成するのは、こんなにも満足できるものだったんだな。


「ユズキ」

「うん?」

「楽しかったな」

「うん!」


序盤のフィールドで、モンスターを倒しただけだ。言ってみればそれだけの事。

ただ、今はそんなことがどうしようもなく嬉しくて楽しかった。


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