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どらどら  作者: 山吹 てまり
1章、拾われたどらどら
25/42

25、大地の国へ

 ヒリンさんは、1パーティに1人は欲しい人と思える人だった。

 何といっても知識が深くて、尋ねてみたら大体の事は知っている。そして強い。

 イドラちゃんと魔術談義を繰り広げていたと思ったら、エリアさんと精霊について話し込んでいたり、果てはギャリックさんにお酒の雑学を披露したりして、大層喜ばせていた。

 一行に馴染むのがやたら早くて、フランツェ(植物の国)の場所を教えてもらえるのか試されている事をうっかり忘れてしまいそうだ。


 わたし達は、前と同じようにヴァンの街、ビエントの街と進んで行った。目的地はエーアト・ボーデン(大地の国)を更に抜けた先にある、ヴァッサー女王国(水の国)だ。


「皆さんはヴァッサー女王国(水の国)に行った事はありますか?」


 竜馬に揺られながら、ふとヒリンさんが話を振ってきた。


「あー、まあ」


 いつもなら割ときっぱりものを言うアルフォンスが、もごもごと口籠る。


「アルは水の勇者が苦手なの」

「いや、苦手って訳でもないんだ。ちょっと馬が合わないってだけで」

「そういうのを苦手というのでは……?」


 水の勇者、どんな人なのだろう。髪の色がアルフォンスみたいに派手なのだろうということしか分からないけれど。


「水の勇者には私もお会いした事があります。きりりとした普人族の女性だったと記憶していますが」

「そそ。あたしはあの人そんなに嫌いじゃないけどね」


 そういえば、ヴァッサー女王国(水の国)に勇者がいるのだから、ヴィント獣王国(風の国)にも勇者はいたのかもしれない。

 その場合、一国に2人の勇者がいる事になるけれど……まあ、炎の勇者一行は偶然、迷宮攻略の為にヴィント獣王国(風の国)にいるのであって、別にホームがヴィント獣王国(風の国)である訳ではない。わたしが気にするだけ、余計なお世話というものだろう。

 けれど、わたしは勇者といえばアルフォンスしか知らないので、会ってみたくはあった。好奇心だ。




 ヴァッサー女王国(水の国)に辿り着く為に通過しなくてはいけない、エーアト・ボーデン(大地の国)は、山に囲まれている。つまり、どのルートを選んでも山越えをする必要があるのだ。

 他のルートがどうだか知らないが、私たちが選んだルートは前半森、後半岩山だった。森ということは、森人族のエリアさんの独壇場で、先頭はエリアさんが歩いた。

 不思議な事に、エリアさんが進む先は道が出来ていて、まるで植物の方がよけているようだった。


「その葉は触れるとかぶれるぞ」

「そこ、木の根に躓くなよ」


 と、ガイドもばっちりだ。


「アルフォンス、その木の実は口に入れた瞬間爛れるからお勧めしないが」


 今も、アルフォンスがつやつやと黒っぽい木の実に手を伸ばしていたが、エリアさんの一声で勢い良くひっこめた。


「うおー、危ねえ!」

「……普通、森の中の得体のしれない木の実なぞ食わない。お前は子供か?」

「いや……ほら、エリアが教えてくれるかなって……」

「……次からは教えないでおくとしよう」

「わー!悪かったって!」




 後半の岩山は、ギャリックさんが先頭を務めた。

 遥か下にごうごうと唸る川が見える崖道では、ギャリックさんの、


「そこは踏むと崩れるぞい」


 に、何度みんなの命が救われたか分からない。

 ヒリンさんも、エリアさんやギャリックさんの特技に興味深そうにしていた。


 険しい道のりを何なく踏破するみんなを、定位置になりつつあるイドラちゃんの肩の上から見守って、はや何日。

 いよいよ街が見えてきた時には、感動さえ覚えた。




 エーアト・ボーデン(大地の国)の街並みは、とても雰囲気があった。

 まず、家々は赤茶けた煉瓦造りか、場合によっては巨大な岩山をくりぬいて、住めるようにされたりもしていた。

 きっとそのままだと武骨な雰囲気の街並みになっていただろうけれど、さすがは職人の街。色鮮やかで複雑な模様や、原色の染めが美しい布が、カーテンのように垂らされたり、壁面を覆うように張られたりしてあった。

 広場のような場所には、謎のオブジェが飾られているし、よく見ると街灯すら細かな装飾でセンス良く飾られている。


【わーお、いきなり異国情緒漂ってるなあ】


 ここ最近、うんともすんとも言わなかった頭の中の声が、暢気に歓声を上げた。


「この国は何度来ても、美しいですね。ヴァッサー女王国(水の国)とはまた違った美しさです」

「ほほ。この国を見て美しいと表現するとは、ヒリンさんは良い目をお持ちじゃの」

「美しい……かな?素敵だとは思うけど」


 イドラちゃんと一緒になって、何となく私も首を傾げてみた。


「もー!エステレラってばすぐ可愛い仕草する!うーん、あざとい!」


 頬ずりをしてくるのはいいけれど、冤罪である。わたしはイドラちゃんの真似をしただけだ。


「流石に山越えは疲れるな。飛竜便使えりゃなあ」

「そうね、アイス竜皇国(氷の国)への往復以外にも飛竜便が使えればいいのだけれど」

「竜や竜人族達は閉鎖的ですからね。プライドも高いですし、難しいでしょう」

「だよなー」


 なるほど、何故飛竜便を使わないのか少し不思議だったけれど、ちゃんと理由があったらしい。飛竜便はアイス竜皇国(氷の国)との行き来でのみ使えるという事だろうか?


「使えない飛竜便の話はいいから、宿取ろうよ」


 イドラちゃんに急かされ、わたし達はようやく休める場所に辿り着いたのだった。


 ……え?お前は歩いてないだろって?肩にしがみつくのも中々疲れるんだもーん!


読んでくださりありがとうございます。


森をエリアが歩くと植物がよけているようだとエステレラが言っていますが、実際よけてます。森人族の特性ですね。

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