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どらどら  作者: 山吹 てまり
1章、拾われたどらどら
22/42

22、鱗の笛、注文

 最早わたし1人では大通りに戻れないような、複雑な道程を辿って、到着した先にあったのはどう見ても民家だった。辛うじてちっちゃく『ガガラスの店』という看板が掲げられているので、間違いでない事は分かるけれど。


「ここ、だよな?」

「ガガラスの店って書いてあるし、そうなんだろうけど……」


 みんなは戸惑いつつも、ひとまず入ってみようという結論に至り、アルフォンスを先頭に『ガガラスの店』に足を踏み入れた。


 入口を通り抜けた瞬間、何か膜のようなものをすり抜けたみたいな違和感を微かに感じた。

 気のせいかと思ったが、イドラちゃんも怪訝な顔をしているので、『何か』を通り抜けた事は確かなようだ。


 店の中は薄暗かったけれど、外から見たよりも広かった。

 等間隔に台が並んでいて、台の上には大切そうに、素敵な細工物が鎮座していた。

 薄暗い店内できらきらと煌めく細工物達は、素敵過ぎて体がうずうずする。


「……客か?」


 とても渋い声が不意にどこからともなく聴こえて、アルフォンスは肩を揺らし、イドラちゃんはちょっと飛び上がった。


「誰だ?」


 警戒したアルフォンスの硬い声。渋い声は呆れたように返事を返してきた。


「普通、この場でお前達以外に声が聴こえたとしたら、ここの店主だろうが」

「あっ……」


 どうやらアルフォンスは、声の主が店主である可能性を本気で失念していたらしい。ちょっと赤くなっていた。


「ごほん。……ええと、あんたがガガラスか?」


 みんなと一緒にイドラちゃんが前に進んだので、わたしの視界にもガガラスさんの姿が入ってきた。

 ガガラスさんは、店の奥に据え付けられたカウンターに座っていた。ギャリックさんと同郷のうえ、偏屈な職人だというから、何となく同じように髭もじゃで気難しそうなおじさんを想像していたけれど、実際は髭を綺麗に剃っている丸眼鏡の、気難しそうなおじさんだった。毛量の多い髪を首の後ろで結っていて、清潔感と神経質さを感じさせる。


「そうだが、俺はお前らには何も造らんぞ」

「……理由を聞いても?」


 いきなりの拒否に、アルフォンスは唖然としたようだったが、気を取り直して尋ねた。


「理由?簡単だ、俺は自分の作品を大切にしてもらいたい。お前らみたいないい装備を持った連中は、いいもんが手に入るとすぐ乗り換えやがるからな」

「あー、それはすまないとしか言いようがないな」

「俺が信頼出来ると思った奴の注文は受けるが……。悪いな」


 ガガラスさんは、話は終わりだと言わんばかりに手元に視線を戻した。


「魔女の手紙もあるんだけど……」


 イドラちゃんがそう言って初めて、アルフォンスは手紙の存在を思い出したようで、ガガラスさんに手紙を渡した。


「魔女?あの婆さん、また何か押し付けようっての……何?古代竜の鱗!?」


 ガガラスさんの気怠げな雰囲気が、一瞬にして霧散した。


「古代竜の鱗の加工だと!?」

「あ、ああ。そうだが……」

「それを早く言え!ああ、一度は加工してみたかった筆頭を手に出来るとは……!」


 夢見る少女みたいになったガガラスさんを、みんなは引き気味に見ている。古代竜の鱗とはそんなに珍しいものなのか。わたしに鱗はないけれど、毛はたっぷりある。これも珍しい素材なのだろうか。


「え、ええっと……。注文を受けてくれるって事でいいのか?」

「勿論だ!これを逃すのは職人じゃねえ!」


 何だろう。こだわりの強い職人っぽい事を言っていたのに、いっそ鮮やかな程の掌返しだ。潔くすらある。

 空色の鱗に狂喜するガガラスさんを何とも言えない表情で眺め、みんなは店を出たのだった。




「何ていうか、その、独特な人だったね」


 言葉を選びまくったイドラちゃんの感想を、ギャリックさんが笑う。


「ほっほ。我の強い職人とは、割と皆あんなもんじゃぞ?」

「でもさ、ジャナさんはそんな事ないよ?」

「ああ、ジャナはのー、特殊じゃからの。あ奴も職人である事は確かじゃが、人懐こいからの。エリアのお眼鏡に叶うんじゃから、推して知るべき、じゃ」


 ジャナさんとはどなたの事だろう。話の流れからして、この一行が懇意にしている職人さんなのだろうけれど。

 わたしの疑問が伝わったのか、イドラちゃんが教えてくれた。日に日にイドラちゃんの察し力が高まっているのを感じる。


「あ、ジャナさんの事が気になる?ジャナさんはね、あたし達の防具を更新したり、作ったりしてくれる職人なんだ」


 なるほど、という意味を込めて、わたしはふむふむと頷いた。エリアさん以外に笑われた。解せぬ。


『わらったなー!』

「ん!?今の、エステレラだよね!?」


 今の?イドラちゃんがまたよく分からない事を言い出した。


「可愛らしい声だったわね」

「舌っ足らずじゃったのう」

「やはり、古代竜にしては阿呆のような話し方をする」


 万里乃さんとギャリックさんは微笑ましそうに、エリアさんは鼻で笑いながらわたしを見ていた。アルフォンスとイドラちゃんも驚きの顔でこちらを見ているし、わたしは何かをしでかしてしまったのだろうか。……考えてもよく分からないので、イドラちゃんの腕の中で眠る事にした。

 わたし、しーらないっと。

読んでくださりありがとうございます。


ちょっと忙しい+暑さにやられて更新が捗らないです……。サボっていたわけでは、はい、決して。笑

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