えっ、100万円?
6日目。
明日が、運命の7日目だ。
はたして、採用はしてもらえるのだろうか?
それなりに懐いてくれてる気はするのだが?
「結望ちゃん、仕事は慣れた」
「あ、はい。全然余裕です。そ、そろそろ7日目ですよね?」
「7日目?」
何のこと? という顔をされている。あれぇ?
「あぁ、これの準備に7日くらいかかるって言ってたかしら」
そう言って雇用契約書を差し出した。
え?
採用確定ってこと?
「ホントは1日目から渡さないといけなかったんだけどね。
こういうの初めてだから、詳しい人捕まえて準備してたの。
時間がかかってごめんね。」
まぁ、ふつうの人がいきなり雇用主になったんだもんな。
「あなたの方が嫌にならないか気にしてただけよ」
あれ?
採用を決めるのはネコじゃなく、私自身だったってこと?
「え? あれ?」
「アズキは嫌いな人には、そもそも近寄らないから。
初日で、膝の上に乗っている時点で合格だったわ」
初日にアズキの合格はもらっていたってこと?
「そうなの?」
「えぇ」
そうとなれば、早速引越しだ。
前の家の契約も止めないと。
「あと、これ」
ゴトッ。
奥様は、厚めの封筒を差し出した。
中には、一万円札が紙の帯で束ねられたものが入ってた。
紙の帯には金融機関の名前と、
「1,000,000円」という金額印字されていた。
え?
一、十、……、一万、十万、百万。
100万~!?
「あの、これは?」
「引越しとか、お金かかるでしょ。
今住んでるところも、いきなり解約できないだろうから、あと数か月は払わないといけないだろうし。
そういう諸々の諸経費よ。足りなかったら言ってね」
サラッと言われたけど……。
100万円の札束って、人生で初めて見たんだが。
テレビドラマの中でしか見たことないんだが。
「ありがとう、ございます。すごく助かります」
「ふつうの有休とは別に、有給の引越し休暇を10日用意してるので、それを使って引越してね」
有給の引越し休暇?
ふつうの有休も年20日あるって話だったな。
それと別に10日もいいのか?
すっご……。
前の会社、何年も働いて年10日しかなかったんだが。
まぁ、荷造りで時間かかるので、助かるけど。
いや、100万円もあったら、
荷造りおまかせパックでいいのでは?
「十分です」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
こうして私は、晴れて定職を得た。
今度の仕事は、定年というものがない。
基本給は18万円だけど、住居費、光熱費、食費、インターネット代はかからない。
保険とかの出費はあるけど、使えるお金はかなり多い。
基本給は数年おきに見直すという。
さらにネコが増えると基本給を上げると言っていた。
1匹につき1万円くらい。
ネコが0匹になっても雇用は続けるという契約だ。
悪くない。何よりネコ好きの私には悪くない。
1日8時間。ネコを世話して遊んで。
週休2日で、祝日も休みで、有休も年20日。
さぁ、荷造りに向かうぞ。
今、住んでいるアパートは、ワンルーム12畳。
私に用意されてる部屋は16畳。
適当に入れても全部収まりそうだ。
しかも今度の部屋は冷暖房完備だ。
めちゃくちゃ快適なのだ。
引越は荷造りおまかせパックを使うことにした。
荷造りも、開梱も、段ボールの処分もしてくれるらしい。
いらない家具や家電も引き取ってくれるという。
綾瀬家では、掃除機などの家電もふつうに使わせてもらえる。
だから、何にもいらない。
もう仕分けるのが面倒だ。
なにより、早くアズキのいる空間に戻りたい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「え? もう済ませちゃったの?」
「はい。1週間後に立ち会いのために、2日ほどお休みをもらいますけど」
「その間、休んでても良かったのよ」
「ネコと遊んでる方が落ち着くんで」
こうして、私は戻ってきた。アズキのいる空間に……。
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