浮気は許さない
5日目。
「なんだこれ? ありすぎなんだけど」
ブラッシングをしようと思ったら、ブラシが多すぎて困った。
きっと爪切りのときみたいに、全部買っちゃったんだろうな。
「いつも、どれ使ってるのぉ?」
見比べていると、ネコの毛がついているのを見かけた。
これと、これか?
手袋みたいなのとシャワーヘッドみたいなのに、ほんのりネコの毛がついていた。
シャワーヘッドから試してみるか。
え?
水入れるの?
充電式?
USB?
気がつくと作業部屋には、USBのコンセントも備わっていた。
いたれりつくせりだな。
充電してみると、すぐに緑になったので充電済みのようだ。
水を入れる。
スイッチを入れる。
なんか出た。
箱にはスチームと書いてあった。
恐る恐る触れてみる。
熱くない。常温だ。
ミストじゃん。
さっそく、ネコ部屋に持ち込んだ。
「アズキ~。ちょっと来て~」
「ニャ」
タタっと向かってきて、ポンと膝の上に乗った。
何をするのかわかってるらしい。
まぁ、ブラシ持ってるしな。
さぁ、ブラッシングだ。
わ! 結構とれるな。
ちょっと大きいので、ブラッシングできる範囲が限られそうだ。
でも、乾燥しやすい冬とかに良さそうかな。
せっかくだし、手袋の方も試してみるか。
あ、こっちの方が使いやすいな。
細かいとこまでなでなでできる。
あごとか顔の周りは、こっちの方が使いやすいな。
個人的には、次から、これ一択かなぁ。
こっちも結構とれるな。
ブラッシングでとった毛を球のように丸めた。
それを眺めてニヤニヤしていた。
そしたら、アズキが、その抜け毛玉を奪おうとしてきた。
「ちょっ……」
飲み込まれたら困る。
「わかった、わかったから」
アズキがいるときは、アズキを眺めてニヤニヤしてろってことらしい。
浮気するなということかな。
抜け毛玉は、作業部屋に置いてきた。
アズキも、それで納得してくれたようだ。
毛玉と言えば、この部屋にも、ところどころネコの毛が落ちている。
キャットウォークは、時々奥様が脚立で掃除されているらしい。
ほぼ天井近くにあるので、大変そうだ。
そのうち、その仕事もまわってきそうな気がするが、それまでは、気づかぬふりをしていよう。掃除はあんまり得意ではない。
このネコ部屋には、全自動掃除機が走り回っていて、床に落ちた毛はそいつが回収している。
アズキはその音にも特に抵抗がないらしく、たまにそいつの上に乗っていたりする。
今のところ、ゴミ出しも私の仕事だ。
といっても、紙パックを入れ替えるだけなので、さほど手間ではない。
時々、回転ブラシに絡みついたネコの毛を取るのが大変なくらいだ。
=ニャ~、ニャ~、ニャ~=
掃除機が鳴いている。
ここの家の掃除機は特注品らしく、電子音の代わりにネコの鳴き声が流れる。
紙パックがいっぱいになったから、換えろという合図らしい。
仕事内容はカンタンだ。
紙パックを換えるだけだ。
しかし、アズキが主張してくるのだ。
浮気は許さないと。
「わかった。わかったから、アズキ」
最近は、紙パックの交換の危険度が上昇中だ。
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




