第十九話 客間の夜
「こちらになります」
俺はセバスに連れられ、客間へと来ていた。
「なにか御用があればお呼びください」
「ありがとうございます」
セバスは一礼すると、下がっていった。
「はあああああぁぁぁぁぁ、疲れたー。とりあえず風呂に入ろう」
部屋の豪華さには驚いたが、それよりも疲れの方が大きかった。
一刻も早く風呂に浸かりたかった。
俺は、半ば服を脱ぎ捨て、簡易シャワーのような湯を上から流せる仕組みの装置からお湯を出す。
「あぁー、気持ちいい」
頭に温かいお湯が流れ落ちてくる。
置いてあったいい香りのする石鹸のようなもので泡立てる。
「っいた」
傷に染みる。
「この匂い、落ち着くな」
身体を洗って、自分の肌の柔らかさに改めて驚く。
色白で絹のようにきめ細かい。
触れるたび、柔らかさの奥に弾力が返ってくる。
「だいぶ慣れたけど、この感じにはやっぱり違和感が否めないよね」
洗い流して、湯船に浸かる。
「生き返る〜」
石鹸のいい香りに包まれ、お湯の温かさに包まれる。
「最高のひと時だよ、あー、ビール飲みてぇ」
そういえばこの世界ってビールとかあるのか。
そういうのも明日から色々見て回ろう。
あと、金は貰ったものの、その価値がわからない。
通貨の知識が必要になるな。
「明日一度本を読める場所を探してみよう。情報がほしい」
俺はある程度明日からの行動を考え、風呂を出る。
風呂から部屋に戻るといくつかの服が用意されていた。
「これは......着ていいやつなのか?」
俺は入り口近くまで行き、従者の人に声をかけてみることにした。
「すみません、ここに置いてある服は着ていいものですか?」
耳を澄ましていると返答が返ってきた。
「はい、そちらの服はすべてエレノア様からアイリス様への贈り物となります」
エレノア......
ローゼリアの母親。
「ありがとうございます」
「お食事はお持ちしてよろしいですか?」
疲れで腹は減っていなかった。
「いや、食事は大丈夫です。それよりも先に休もうと思います」
「かしこまりました」
風呂に入ったからなのか、一気に眠気が襲ってくる。
そして俺は一番上にある服を手に取る。
「これは......」
下着か?
どうやってつけるんだこれ。
パンツのような物はともかく、ブラジャー?のような物のやり方がわからない。
こ、こうか?
なんか違うな。
あ、こうか!
「なんとかいけたな」
なんとか胸を固定でき、下着は着用できた。
「この世界の服はむずかしいな」
試行錯誤しながら、服もなんとか着ることができた。
そして、鏡を見る。
「まじかよ。可愛すぎるだろ俺」
そこには自分ですらそう感じてしまうほどの圧倒的な美女がいた。
服をきちんとするだけでここまで変わるのか。
自分の可愛さ加減が恐ろしい。
「でもこの服はさすがに高級すぎないか?」
さすが、王家に次ぐ貴族だ。
生地、デザイン、装飾、すべてが申し分ない。
服にはあまり興味がなかった俺が感じるのだから、よっぽどいいものなのだろう。
俺は他の服も試してみることにした。
「うん、これにしておこう」
少し落ち着いた感じの服にして、普段はそれを着ようと思った。
「変に目を引きたくないしな」
この美貌だ、街を歩けば嫌でも視線を引いちまう。
まぁ悪い気はしないが、落ち着かないのも嫌だ。
「よし、少し休もうかな」
俺は寝巻きに着替え、少しベッドに横になった。
疲れていたのか、目を瞑るとすぐに眠ってしまった。
薄れゆく意識の中でローゼリアがエレノアと共に流す涙が脳裏をよぎった。
「よか......った......」




