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転生したら美少女だったオレ  作者: ウルティ
第一章 なにもない場所

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第十一話 窮地の後の窮地

第十一話 窮地の後の窮地

 水が落ちる轟音が崖の壁で反響し、響く。

 耳の奥を直接叩くような重低音が連続し、空気そのものが震えているかのようだった。

 視界の外から押し寄せる音の圧が、体の内側まで入り込んでくる。

 崖の高さはビルでいうと四階くらいの高さだろうか。

 落ちるまでの時間はほんの数秒のはずなのに、その一瞬がやけに長く感じられる。

 空間が引き伸ばされているような、妙な錯覚に陥る。

 足が中に浮いたようなあの嫌な感覚に襲われる。

 内臓がふわりと持ち上がり、体の芯が空っぽになるような感覚。

 地面という支えを完全に失った、逃げ場のない浮遊感だった。

 周りの景色はものすごい速さでで上がっていき、きちんと視認できない。

 木々の影も岩肌も、ただの線となって流れていく。

 風が耳元を裂くように通り抜け、呼吸すら乱される。

 俺はローゼリアを自分の方へ引き寄せ、自分の胸にローゼリアのおでこを当て、頭を抱きかかえる。

 衝撃がどこから来るか分からない以上、守れるところは守るしかない。

 せめて頭だけでも。


「ローゼリア!つま先を伸ばして、背筋を伸ばせ!」


 見れないがローゼリアが姿勢を整えていくのがなんとなくわかる。

 体が密着することで、わずかな動きや力の入り方が伝わってくる。

 震えている。

 それでも、言われた通りに動こうとしている。

 そして


 ドボォォォォォォォン!!


 高校生のころに車に撥ねられた時以上の衝撃が、下半身から頭に抜けていくように襲ってくる。

 水面が硬い壁のようにぶつかり、体の芯まで貫かれる。 衝撃が遅れて全身に広がり、骨格が軋む。

 身体中が一気に悲鳴をあげる。

 肺の中の空気が一瞬で押し出され、呼吸が途切れる。

 思考が一瞬飛び、何が起きたのか分からなくなる。

 骨が軋み。

 関節が悲鳴をあげる。

 衝撃が分散されることなく、まともに受けた感覚だった。

 一瞬意識を持っていかれそうになる。

 ここで手放したら終わると、本能が必死に引き戻してくる。

 足の傷の痛みが一気に大きくなる。

 さっきまでの浅い痛みとは比べものにならないほど鋭く、熱を帯びた痛みが走る。

 水の中で開いた傷口が、さらに広がったのがわかる。

 体が鉛のように重い。

 思うように力が入らない。

 水の抵抗が全身にまとわりつき、動くたびに体力が削られていく。

 俺は力を振り絞り水面へ上がる。

 腕を動かし、足を蹴り、なんとか上へと浮かび上がる。


「ぶはぁ!はぁ、はぁ、ローゼリア!!」


 肺に空気が流れ込み、焼けるように痛む。

 呼吸が乱れ、うまく整わない。

 俺は辺りを見渡しローゼリアを探す。

 水面は波立ち、視界は揺れている。


「ここよ!!」


 後ろから声が聞こえ、振り向く。

 必死な声。

 無事であることを知らせる声。


「無事か?!」


「えぇ、なんとか。はぁ、はぁ、そっちは?」


「だい…じょ…」


 ローゼリアの無事を確認し、安堵したからなのか一気に体から力が抜けていく。

 張り詰めていたものが切れる感覚。

 支えていた何かが崩れる。

 視界がぐらつき、音が変に大きく反響している。

 水音も呼吸音も、すべてが歪んで聞こえる。

 口を大きく開け、叫んでるように見える。

 だが、音が届かない。

 現実との距離が急激に開いていく。

 たぶんローゼリアが俺を呼んでるんだろう。

 返事をしようとするが声が出ない。

 そもそも口が動かない。

 体の自由が、少しずつ奪われていく。

 ゆっくりと視界が水に沈んでいくのがわかる。

 自分の意思とは関係なく、体が沈んでいく。

 陽の光に照らされた水面を下から眺める。

 揺れる光が遠ざかっていく。

 視界の端から赤くなっていき、だんだんと周りが赤く染まってる。

 最初は違和感程度だったものが、確信に変わる。

 音も聞こえない。

 強気なローゼリアが見たことのない表情をして、水に沈んだ俺の手を掴もうとしている。

 必死に。

 その顔は、恐怖とも焦りともつかない、今まで見たことのないものだった。

 俺も手を伸ばそうとする。

 でも、動かない。

 力が入らない。

 指先すら言うことを聞かない。

 視界が狭くなっていく。

 光が細くなり、やがて一点に収束していく。


 ごめん…


 ローゼリア…


 俺はその手を掴めないまま、意識を手放した。



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