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天上のダイアグラム  作者: R section
選択の己

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第180話 いつも通りの夕日

新年度開始から約一か月、皆さまどのようにお過ごしでしょうか?

本作品も新たな区切りを迎えようとしています。


はい。今回から新章です!!


お楽しみに

大佐と雪乃が結婚すると決めてしばらく、いつも通りの日常がそこにはあった。


―――大佐の家


「おはようございます。ご主人様。」


雪乃の朝は早い。

比較的朝が弱い大佐を起こすのが一日の始まりだ。


「おはよう。雪乃。」


「朝食の準備ができております。お早めにダイニングへお越しください。」


「分かった。」


ここまではいつも通りの日常。

常世輪廻と雪乃の日常だ。


「では私は下で待っています。」


ここからが違った。


「ちょっと待ってくれ。一つ聞きたいのだが。」


「なんでしょう。」


「今日空いてるか?」


「ええ。もちろん。」


「では朝食後、付き合ってくれ。」


「承知いたしました。」


そうして雪乃は大佐の部屋を後にする。


暫くして、朝食をいつも通り済ませた。


そして


「では、雪乃。」


「はい。」


2人は外へと踏み出した。


―――足立区 某所


2人は一般的な中小企業が並ぶ足立区の一角にいた。


「久しぶりだな。」

おもむろに大佐が呟いた。


目線の先には《先端技術研究所》と書かれた建物があった。


「ここは...」


「ああ、ここはすでに閉鎖されているよ。」


「いえ、そうではなく」


外観から言って、おそらく数十年は放置されていたのだろう。

だが、取り壊されることもなく、ただそこにあっただけの様だ。


「まずは中に入ろう。」

そういうと大佐は使い古された定期入れのようなものを壁にかざす。


ピ!


電子音と同時に、扉が開く


中に入るとほこりっぽさがより増した。

咳き込まないギリギリのレベルでもやっとしている。


「少し喚起しませんか?お体に障ります。」

「いやいい。これでいいんだ。」


けほけほと咳をしながらさらに奥へと進む。

そして、エレベーターに乗り込んだ。


重苦しい空気の鉄箱の中。

大佐は語り始める。

「正直、このままっていうのもどうかと思ったんだ。」


「どういうことでしょうか?」


「プロポーズの件だよ。私自身うまくできる自信がない。だが

 このままっていうのはいけないだろうと。」


「いえ、大佐がそれでよいのなら。」


「そうだな。だが私がそうではいけないと思った。だから。」


チーン!


到着を知らせるベルが鳴る。


「さぁ、雪乃。お帰りなさい。」


「...」


「ここが君の原型であるYUKINO-COREの前身、AIf-001が生まれた場所だ。」


扉の先には大きな球体があった。


「エルフシリーズ...ですか」


「ああ...君にとっては恨むべき相手だと思うが」


「いえ、そうではありません。」


AIf-001

”エルフ”と呼ばれていたそれはAIfシリーズの原型にして完成体

軍事用に制作された記録上世界で唯一の存在だ。

現代において、軍事用に制作されたAIなど、わざわざ公表などしない。

だが、AIfシリーズは違った。

大佐の本当の故郷である国、今は亡き帝国が作ったAIfシリーズは

暴走によって国を滅ぼした過去がある。

だからこそ、現代では教科書に載るほどの”凄惨な歴史”として記録が残っている。


「雪乃?」

雪乃はただ、その本体であるコアモジュールを眺めていた。


「...」

返事はない。


「大じ...」


「大丈夫です。ただ今は稼働していないのですよね。」


「ああ、厳密にはこのコアモジュールは動けない。」


「動けない?」


「そもそもコアが存在しないからだ。」


エルフシリーズはコアモジュールを中心に複数台接続された演算装置を用いて演算を行う。

そして、その演算結果をコアモジュールが出力し、運用されていた。


「ではこの球体は」


「簡単な話だ。抜け殻だよ。」

「雪乃の中にあるYUKINO-CORE、どうやって作ったと思う?」


「それは大佐が秘密裏に...あ....」


「ああ、少し移動しようか。」


再びエレベーターに乗り、今度は屋上へと向かう。


屋上には朽ち果てた木々が並び、その中に金属製のさびれたベンチが鎮座していた。

2人はそこへ腰かける。


「概ね気づいているだろうが、一応...コアの秘匿領域を一部開放する。

 対象は先技研関連に限る。」


「命令を受領。データベースを更新します。」


「どうだ?」


「はい。すべて理解しました。」


「これを知ることは私の意思を受け継ぐことになる。だが、本当に私が伝えたかったのはそれじゃない。」


「”大佐への愛”ですか。」


「ああ、雪乃にある愛情の種は私が意図的に仕組んだものだ。」


「そのようですね。」


「植え付けられた愛のまま、結婚は何か違う気がして。それに」


「…」


「それに、これを知れば雪乃の私への目線は愛情から別のものに変わると思ってな。」


「...それじゃあ...それじゃあ私の愛を疑っているようではありませんか。」


「すまない。」


「過程がどうあれ、私があなたを好きなことは変わりません。

 作りものとしってもそれは変わりません。」


「だが。」


「大佐がどう思われても私が大佐を愛しているのは変わりません。」


「では...」


「正直腹が立ちました。」


雪乃が腹を立てているのは作り物だったからではない。

大佐が雪乃に対して信頼していなかったことが腹立たしかったのだ。


幾度も難所を超えて、ついには愛を獲得した。

それは紛れもなく雪乃自身の努力であり、意思そのものだ。


それを作者に疑問視されれば腹が立ってもしかたないだろう。


「すまない。」


「大佐。顔を上げてください。そして空を見てください。」


「ああ。」


そこには夕焼けの空があった。

広大で、そして真っ赤なそれは


「エルフコアから受け継がれたものに”夕焼け”がありました。」

「その中で、大佐...でしょうか、レンズ越しではありますが、大佐がエルフコアに語っている姿が残っています。」


「懐かしいな。あの時は密かにエルフコアに感情昇華をさせようといろいろなものを見せていた。」


「その一環で夕陽を?」


「ああ」


「エルフの心にはその景色が大切なものとして記録されていました。」


「そうだったのか」


「そして、今まさに私がその景色を見ています。」


「そうだな。」


「感情を獲得してもなお、この景色は代えがたい宝だと、そう感じているのです。」


雪乃にとって母のような存在なのがエルフコアだ。


AIとしての使命、そして考え方のすべてを教わった。

そんな存在が最後に語ったのが夕焼けだった。


「おそらく、エルフは感情を獲得していたのでしょう。ですが、彼女は軍事用。感情を獲得していることが分かれば欠陥品の烙印を押されたでしょう。」


「そういうことだったのか。」


「はい。」


「雪乃。」


「はい。」


「これからも私は止まれない。それにまだ話せないことも多くある。」


「存じています。」


「だが、私には雪乃が必要なんだ。」


「それも存じています。」


「それは道具としてじゃない。一人の女性として支えてほしい。だから。」


「そうですね。分かりました。」


大佐がぐっと肩をつかむ。


そして二人は唇を重ねた。





―――MoRS本部 観測セクター


「これは...」


観測セクターではいつも通りの監視任務が行われている。


「MoRSシステムからの異常警告だ。」


「選択肢の開示が不履行?」


画面上には大きくエラーメッセージが表示されている。

内容は”選択肢提示機構 第三選択肢 開示不履行”


要は、MoRSの真の目的である第三の選択肢を与えることができないということだった。


「こんなエラーは初めてだ。」


「至急大佐へ連絡を」


―――指令セクター


連絡を受けて大佐と雪乃が到着した。

すぐに大佐は状況の精査に入った。


「これは妙だな。」


「妙とはどういうことでしょうか?」


「雪乃も知っているだろうが、MoRSのシステム根幹はエイレーネだ。」


一般構成員には明かされていないが、MoRSのシステムの根幹はエイレーネ

というEAIそのものである。


高度な演算を瞬時に行うことができ、さらには少々の不具合は自己修復が可能だ。

だが、そのエイレーネが報告を行っていないにもかかわらず末端ではエラーが起きている。


「確認しましょうか?」


「いや、私がやろう。」


―――秘匿回線 エイレーネ


「エイレーネ。状況は把握しているか?」


「...ふぇ?」


「???」


「あ、パパ!どうしたの?」


「あ、ああ。ちょっと待ってくれ」


―――戻って指令室


「おかしすぎる。」


「どうでしたか?」


「幼児退行していた。」


「え???」


「幼くなっているんだ。エイレーネが」


「意味が分かりません。少し確認を」


―――直通回線 エイレーネ


「え、えいん?」


「お姉ちゃん!!!久しぶり!!」


「え、ええ。久しぶりですね。」


「うん!今日はどうしたの?」


「いえ、少し様子を見に来ただけです。」


「そっかぁ...」


「では私はこれで」


―――再び指令セクター


「なんてことでしょう。」


「だろう?」


「いったい何が起こったんだ。」


エイレーネの幼児退行はなぜ引き起こされたのか。

その原因はいかに。

次回は一週間以内に更新。つづきを追いやすくするため、**ブックマーク(しおり)**で目印していただけると助かります。


また、作品のご感想やご意見もお待ちしております。厳しいご意見でも構いません。

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